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2026.02.24 注目の海外スタートアップの資金調達4選

2026年2月24日、AIインフラ関連の資金調達が一日に集中した。元Googleエンジニアが設立した半導体スタートアップへの5億ドル、推論チップ企業とIntelの異例の提携、会計AIの評価額10億ドル超、そしてAIエージェント向けデータ基盤への資金流入——いずれも異なる層のインフラを担うが、投資家が向かう方向性は一貫している。「AIが動くための基盤」への賭けだ。4件の資金調達を通じ、その全体像を整理する。


1. MatX——LLM専用チップを「白紙設計」で挑む5億ドルの賭け


1-1. Googleを出てゼロから設計する理由

MatXは、元Googleのハードウェアエンジニア2名が設立したチップスタートアップで、シリーズBで5億ドルを調達した。ラウンドはJane StreetとSituational Awareness(元OpenAI研究者Leopold AschenbrennerのファンドLP)が主導した。

創業者でCEOのReiner Pope氏がGoogleを離れた理由は、現行の大手チップの根本的な制約にある。既存プレイヤー——Nvidia、Google、Amazon——は旧世代との後方互換性を維持しなければならない。「前世代のチップで書かれたプログラムが次世代でも動く保証」を維持するため、設計に多くの制約が生じる。「LLMワークロードだけを徹底的に最適化したいなら、過去との互換性を捨てた白紙設計が必要だ」というのがMatXの出発点だ。

1-2. 技術的な差別化——SRAMとHBMの「両取り」

MatXが開発する「MatX One」は、SRAM優先設計の低レイテンシとHBMの長コンテキスト対応を組み合わせたハイブリッドアーキテクチャを採用する。SRAMは高速だが容量が小さく、HBMは大容量だがレイテンシが高い——MatXはこの二律背反を「モデルウェイトはSRAMに、KVキャッシュはHBMに割り当てる」という設計で解こうとしている。同社はこの構造により「シリコン1平方ミリメートルあたりのFLOPS」でNvidiaの次期製品Rubin Ultraを上回ると主張している。

今回の資金調達によって、チップの最終設計を今年中に完了し、2027年に製造・出荷を開始する計画だ。製造はTSMCを通じて行う予定。

1-3. 評価額と競合環境

MarvellテクノロジーやSpark Capital、Stripe共同創業者のPatrick・John Collison兄弟も投資家に名を連ねる。正確な評価額は非公開だが、最も近い競合であるEtchedが先月の5億ドル調達で評価額50億ドルだったことを踏まえれば、MatXも同水準かそれ以上の評価が見込まれる。

2. SambaNova——Intelと「対GPU連合」を形成する3.5億ドル


2-1. 買収失敗から戦略的提携へ

SambaNova Systemsは、3.5億ドルの新規調達を発表し、同時にIntelとの提携を締結した。ラウンドはVista Equity PartnersとCambium Capitalが主導し、IntelのCVC部門であるIntel Capitalも参加した。

この提携には背景がある。IntelはSambaNova買収を約16億ドルで検討していたが、交渉が決裂した経緯がある。Intel CEOのLip-Bu Tan氏はSambaNova会長も兼務しており、両社の関係は深い。今回は買収ではなく多年契約という形で、「Nvidiaに依存しないAI推論ソリューション」の共同開発・販売に踏み出した。SambaNova CEO Rodrigo Liang氏は「Nvidiaが市場を広く押さえているのは事実だが、特定ワークロードに最適化された代替技術が求められている。異種混合環境で適切にトラフィックを振り分ければ、インフラコスト効率は大幅に改善する」と語る。

2-2. 新チップSN50の性能と顧客

SambaNovaが発表した新チップSN50は、最大10兆パラメータのLLMと1,000万トークンのコンテキスト長に対応する3層メモリアーキテクチャを採用する。同社はNvidiaのB200比で最大5倍の推論速度を主張している。

SoftBankが今年後半に日本のデータセンターでSN50を初期導入する顧客となることも発表された。SambaNova CEOは実際の推論ベンチマークでも優位性があると主張する根拠として、Artificial Analysisのデータを引用する。同社のSN40L(現行世代)はMiniMax M2(2,300億パラメータ)を毎秒378トークンで処理しており、2番手のGPUベースプロバイダーを100トークン以上上回るという。

3. Basis——会計AIが1.5億ドル評価で示す「ドメイン特化」の価値


3-1. 汎用AIの限界を埋める専門性

会計業務に特化したAIスタートアップBasisが1億ドルのシリーズBを調達した。評価額は11.5億ドルを超えた。

CEOのMatthew氏は汎用AIとの差別化をこう整理する。「ドメイン特化型であることは5つの要件を同時に満たすことを意味する。ドメイン固有の能力、ドメイン固有の精度保証、専門家にとって自然なUX、監査証跡を含むエンタープライズ機能、そして採用促進のためのドメイン固有アプローチだ。ChatGPTやAnthropicのツールは素晴らしいが、複数の要件を同時に満たす専門的な仕事には限界がある」。

具体的な成果として、AIが法人税申告書ワークブック全体を一貫して完成させる「長時間稼働エージェント」の実用化を発表した。同社は現在、会計業務全般——税務・監査・アドバイザリー——にAIを拡張しており、需要が供給能力を上回る状態が続いているという。

3-2. AI導入は職を奪うか、広げるか

Basis社内では今やエンジニアが大量のコードを直接書く必要はないが、機械学習チームの採用はこれまで以上に積極的に続いている。「AIが時間を解放することで、より高度な課題に取り組める。会計でも同様だ。米国防総省は8期連続で監査未達成、多くの病院は手術一件あたりのコストすら把握できていない。これらはAIが会計分野で新たに解決できる課題であり、仕事が減るのではなく、やるべき仕事の範囲が拡張する」。

4. Nimble——AIエージェントの「目と耳」になるリアルタイムデータ基盤


4-1. エージェントAIが直面する「データの鮮度問題」

ウェブデータ・スタートアップNimbleが、4,700万ドルのシリーズBを調達した。ラウンドはNorwestが主導し、Databricks Venturesも参加した。累計調達額は7,500万ドルに達した。

LLMやAIエージェントはウェブ上の情報を検索・統合・分析することは得意だが、結果がプレーンテキストで返ってくるため、エンタープライズレベルでの活用には扱いにくい。Nimbleが解こうとしている問題はここにある。CEOのUri Knorovich氏は「ビジネスにとっての最大の知識源はウェブだが、データはダイナミックで検証が難しい。だからNimbleを作った」と語る。

4-2. 「ウェブをデータベースのようにクエリする」プラットフォーム

Nimbleのプラットフォームは、AIエージェントがリアルタイムでウェブを検索し、結果を検証・構造化して「クエリ可能なデータベース」の形式に変換する。これにより企業は競合価格調査、KYC(顧客確認)プロセス、金融デューデリジェンスなどをリアルタイムで自動化できる。

Nimbleは現在100社超の顧客を持ち、Fortune 500企業やFortune 10企業も含む。大手小売、ヘッジファンド、銀行、CPG企業のほかAIネイティブスタートアップにも広がっている。Lululemon元CIOのJulie Averill氏は「競合価格の変化への対応がかつては数週間かかっていたが、Nimbleにより数分で対応できるようになった」と語る。Databricks・Snowflake・AWS・Microsoftとの連携を通じ、企業の既存データ環境にリアルタイムのウェブデータを統合できる点も、採用拡大の背景にある。

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