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Hugging Face、フォーチュン500企業の半数が利用 ── ユーザー数は数十万人から1700万人へ急増

TechCrunchのポッドキャスト「Equity」に、Hugging Faceの共同創業者兼CEOであるクレマン・デランゲ氏が出演した。同社は、AIモデル・データセット共有のプラットフォームとして知られ、累計調達額は約4億ドルに達する。本稿では、オープンソースAIが再び注目を集める背景、中国製モデルの台頭、そして、AI業界における権力集中のリスクについて、デランゲ氏の発言をもとに整理する。


1. オープンソースAI急成長の実態


デランゲ氏は、まず、プラットフォーム上の成長データを紹介した。「現在、7秒に1つの新しいリポジトリが作成されている」と述べ、公開モデルは、約300万件、公開データセットは100万件に達しているという。さらに、フォーチュン500企業の半数が、すでにHugging Faceを利用しているとし、自社独自モデルまたはオープンソースモデルを活用する企業が着実に増えていることを明らかにした。

1-1. 企業がAPIから自社運用へ移行する理由

デランゲ氏によれば、典型的な導入パターンは、「まず、Frontier API(大手が提供する高性能AIサービス)で実験的に機能を試し、本格的な運用規模に達するとコストが大きくなりすぎるため、オープンソースモデルに切り替える」という流れだという。同氏は、この傾向が今後も続き、将来的には、「Frontierモデルは、実験や一部の高付加価値タスク向け、大半の実運用は、自社モデルまたはオープンソースモデルが担う」世界になると予測している。

2. オープンソース復権を後押しする要因


2-1. トークンコストとコントロールへの欲求

デランゲ氏は、Palantir CEOのアレックス・カープ氏がトークン基盤への依存を批判し、オープンモデルを推進している動きに言及した上で、「企業は、自社のAIをブラックボックスのAPIに外部委託したくない、より高いコントロールと透明性を求めている」という点が最も共感できる指摘だと述べた。

2-2. 政府による規制の影響

トランプ政権がサイバーセキュリティ上の懸念から、Anthropicの「Mythos」「Fable」やOpenAIの「GPT-5.6」といったモデルの提供を一時制限した経緯にも触れ、政府の規制リスクを避ける観点からも、企業が自社所有のモデルを求める傾向が強まっていると指摘した。

3. 中国製オープンモデルが米国を逆転


Hugging Faceが発表した2026年春のレポートによれば、中国製モデルがダウンロード数の41%を占め、米国を上回ったという。デランゲ氏は、この状況について「理想を言えば、米国内で使われるオープンソースモデルの多くは米国企業が提供するものであってほしい」と述べつつ、Nvidiaが、Nemotronなどのモデルやデータセットを公開し「米国オープンソースAIの王者」になりつつあると評価した。

同氏は、中国が、研究成果を積極的に公開する姿勢について、「2016年から2022〜2023年にかけて、米国もオープンな研究と共有を重視していたからこそAIで先行できた」との見方を示し、「中国がオープンソースでの主導権を維持すれば、来年か再来年にはAI全体で主導権を握る可能性がある」との見解を述べた。また、中国モデルの躍進を「蒸留(既存モデルの模倣)」によるものとする批判に対しては、「蒸留は、誰もが行っている手法であり、それだけで説明できるものではない。中国には非常に優れた研究者がいる」と反論している。

4. 安全性とAI権力集中のリスク


4-1. オープンソースは本当に危険なのか

デランゲ氏は、オープンモデルがサイバー攻撃のリスクを高めるとの懸念に対し、「歴史的にオープンソースは、閉じたシステムより危険性が低かった」との立場を示した。理由は透明性にあり、防御側が脆弱性を把握し対策を講じやすいためだという。同氏は、「クローズドなAPIのガードレールは表面的で、実際には簡単に迂回(ジェイルブレイク)できる」とも指摘している。

4-2. 一部企業への権力集中への警鐘

デランゲ氏が特に強調したのは、AI業界における権力集中のリスクだ。「少数の企業がAIを完全に支配し、これまでにない規模の権力と富を得る世界に陥ることが、最大のリスクだ」と述べ、AI企業が米国防総省との関係において強い影響力を持つようになっている現状を「数か月前なら信じられなかったが、実際に起きている」と評した。

5. 独自の資金調達方針


デランゲ氏は、Hugging Faceが過去3年間、資金調達ラウンドを実施しておらず、Nvidiaからの大型出資提案も断ったことを明かした。「短期的な収益最大化よりも長期的な持続可能性を重視する、保守的なアプローチを取ってきた」と説明し、他のAIスタートアップと異なり、巨額の計算資源を必要としない事業構造のため資本効率が高いと述べている。

6. 投資が不足している分野:ローカルAI・生物学・ロボティクス


デランゲ氏は「LLM APIバブルの中にいるとは思うが、AI全体がバブルとは思わない」との見解を示し、投資が不足している領域として、スマートフォンや自社データセンターでAIを動かすローカルAI、生物学・化学分野、そしてロボティクスを挙げた。特に、ロボティクスについては、映像・画像データセットが巨大でテキストデータより扱いが難しいこと、また、家庭内で稼働するロボットに対するプライバシー面の信頼性の観点から、「一部企業に支配された不透明なシステムより、透明性の高いオープンソースがより重要になる」と述べている。

7. まとめ


デランゲ氏の発言からは、コスト増を背景にAPI依存から自社モデル運用へ移行する企業の動きと、中国製オープンモデルの台頭という二つの潮流が、今後のAI業界の構図を左右する可能性が浮かび上がる。同時に、少数企業への権力集中というリスクは、投資家にとっても業界構造を注視すべき論点となりそうだ。

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