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Y Combinator CEO Garry Tan氏、「AGIは既に到来している」と宣言 ― 220,000ページのMarkdownで築く"パーソナルAGI"

「AGI(汎用人工知能)はまだ来ていない」と多くの人が待ち構える中、Y Combinator CEOのGarry Tan氏は、あるカンファレンスでの講演で全く異なる主張を展開した。AGIはすでに到来しているが、それは巨大な単一の出来事としてではなく、個人のインフラに拡散する形で静かに広がっている、という見立てだ。同氏はこれを「パーソナルAGI」と名付け、17世紀の哲学者スピノザの生涯を引きながら、自身が実践する仕組みと、その先にある政治的な論点を語った。


1. 破門された哲学者スピノザ ― 「快適さより真実を」


Tan氏は、講演の冒頭、17世紀オランダの哲学者バールーフ・スピノザの逸話を紹介する。1656年、23歳のスピノザは、自身が属していたセファルディム系ユダヤ人共同体から、その世紀に発せられた約40件の追放令の中でも唯一「悔悛による解除条項」がない呪詛付きの破門を受けた。破門に先立ち、共同体はスピノザに「年1000ギルダーを払うので、時々シナゴーグに顔を出し、口を閉じていてくれれば良い」という条件を提示していたが、彼はこれを断った。「快適さではなく真実を求めた」とTan氏は説明する。

破門直前には、狂信者がナイフでスピノザを襲い、刃は上着を切り裂きながらも本人には当たらなかった。スピノザはその上着を、繕わずに生涯持ち続けたという。その後、彼は日中はレンズ研磨の仕事をし、夜には生前には出版できないほど危険な書物『エチカ』を書き続けた。44歳で死去した際、原稿は書き物机に施錠され、彼の遺言により運河船でアムステルダムの出版者へ送られたという。

Tan氏は、スピノザがこの粘り強さの源泉として「コナトゥス(conatus)」という概念を用いていたことに触れる。「自分の"striving"、つまり生きているものすべてが持つ、自らの行動する力を増やし続けようとする衝動を指す言葉だ」と説明した。

2. 「パーソナルAGI」とは何か ― 借りるAIと所有するAIの違い


Tan氏は、スピノザの神学「神は自然そのものに拡散している」という主張を400年後に更新する形で、自身の主張を語る。「誰もが空を見上げてAGIの到来を待っているが、彼らが探しているものはすでに部屋の中にある。神のようには見えず、インフラのように、ターミナルウィンドウのように、Markdownファイルのフォルダのように見える」と述べた。

同氏はこれを「パーソナルAGI」と呼ぶ。「みんなのための汎用知能ではなく、1人のための汎用知能、つまりあなたのための知能だ」という。Vannevar Bush氏が「Memex」と呼んだ、脳と自分自身の拡張となる機械の夢と重ねながら、同氏は言葉の定義に慎重を期す。「月20ドルを払うチャットボットのことではない。少し賢い自動補完のことでもない。あなたのカレンダーだけを知っているアシスタントのことでもない。それは単に借りているサブスクリプションであり、あなたが所有していない"企業のAGI"だ。タブを閉じれば消え、その会社が方向転換すればロボトミー手術を受けたように機能が失われる」と述べる。

対して「パーソナルAGI」は、「自分のインフラの上で動き、自分が所有するメモリから読み取り、自分が書いた手順を実行し、複利的に成長するエージェント」だという。「あなたが所有していない企業のAGIは、その会社が何かを出荷したときだけ改善される。あなたのパーソナルAGIは、使うたびに毎日改善される。それは、あなたの人生についてより多くを知るからだ。片方は消費するプロダクトであり、もう片方は構築する資産だ」と対比した。

3. コーディング生産性は400倍に ― どんなに疑っても8倍以上


Tan氏は、この変化がなぜ「今」起きているのかについて、コーディングエージェントの進化を例に説明する。「2013年、私はYCパートナーとして、夜に社内SNS『Bookface』を1日約14行のコードで開発していた。これはプログラマーの生産性研究の文献で見ても、まさに標準的な水準だ」と振り返る。「今年、私はYCをフルタイムで運営しながら、同じ脳、同じ時間、さらに午後5時の子どものお迎えを抱えている。それでも出力量を計算すると、2013年比でおよそ400倍になっている」という。

同氏は自らこの数字に疑いの目を向ける。「懐疑派のために、最も厳しい"冗長性のペナルティ"を適用し、エージェントが書くコードの半分は"足場"だと仮定し、自分がうぬぼれているだけだとしても、絶対的な下限でも8倍、中間値ではその10倍になる」と述べた。「この数字は、どれだけ厳しく検証しても大きい」という。

この倍増効果はコーディングだけに限らないとTan氏は続ける。「デザインにも、プロダクトマネジメントにも、成長戦略にも当てはまる。これはあらゆる知識労働に効く倍率だ」と述べ、YCのポートフォリオ企業でも同様の現象が観察されているとした。「1年半前の2025年冬バッチでは、4分の1の企業のコードベースが95%AI生成だった。その企業群は今、コード以外のすべての業務にもAIエージェントを使っており、そのバッチはYCの歴史上最も急成長かつ最も収益性の高いバッチの一つになりつつある」という。「相関と因果の違いは理解しているが、確実に言えるのは、我々が投資する中で最も急成長している創業者たちは、AIを自動補完としてではなく"労働力"として扱っているということだ」と述べた。

4. 「脳」と「司書」 ― Garry Tan氏個人のシステムの内部


4-1. 22万ページのMarkdownで築いた25年分の人生

Tan氏は、人間のワーキングメモリが「7±2個」しか物事を保持できないという認知心理学の有名な知見に触れ、「私たちが作ってきたすべての制度、チェックリスト、組織図、書類棚、スタンドアップミーティングは、この限界を補う義肢のようなものだ」と説明する。対して、AIエージェントは100万トークン(約1000ページ、ハリー・ポッター3冊分)を同時に保持し、その中から任意の情報を数秒で見つけ出し、統合できるという。

「あなたの人生は3冊の本ではない。あなたの人生は図書館だ」とTan氏は述べる。「あなたのエージェントが天才になるか金魚になるかを決める問いは、"どの3冊の本をデスクの上に開くかを、誰が、あるいは何が決めるのか"だ」という。同氏はこの仕組みを「GBrain」と名付け、オープンに開発してきたと明かす。「自分のOpen Clawには、Karpathy氏スタイルの知識wikiがあり、約22万ページのMarkdownファイルで構成されている。25年分の人生が日誌化されており、すべてのメール、すべての会議、自分のノート、写真、ドラフト、そして自分が間違えたことも記録されている」と説明した。

4-2. 睡眠中にエージェントが受信箱を"処理"する

Tan氏は、この仕組みが実際の日常でどう機能するかを説明する。「創業者から危機的な内容のメールが届いたとき、私がそのメールを読み終える前に、エージェントはすでにその創業者との過去のすべての会話や、同じ壁にぶつかった3社のポートフォリオ企業と、実際に何が功を奏したかを引き出している」という。

「昨晩、私が眠っている間、エージェントは受信箱を"処理"した。単に並べ替えたのではなく、処理した。どのメールが困っている創業者からのもので、どれが売り込みで、どれが解約しきれていない17件のメーリングリストからのものかを把握している」と述べる。「重要なメールは、ライブラリから引き出したコンテキスト、つまりその人物が誰で、自分との全履歴、書かれた内容の裏にある本当の意図、それが自分にとって何を意味するかとともに整理される。私はメールの山ではなく、ブリーフィングで目覚める」という。会議前には準備資料が用意され、深夜に気になったリサーチは朝には完了しているとした。

同氏はこのライブラリの上に、自身のエージェント用コーディングフレームワーク「GStack」を構築しており、GitHub史上トップ100に入る12万3000スター規模のオープンソースプロジェクトになっているという。「実際にこの全アーキテクチャの核心にあるのは、大半がスキルファイルと、エージェントが操作できるブラウザだ。英語のページと、世界に働きかける手段。Markdownであり、魔法ではない。太いスキル、薄いハーネスだ」と述べた。

4-3. スキルファイルの実例 ― 「賢いインターンが読めれば実行できる」

「スキルファイル」という言葉について、Tan氏は具体例を示す。「会議の録音がCircleBackから届いたら、話者ラベル付きで書き起こす。誰がどんな約束をし、期限はいつかを抜き出す。名前が出た全員をライブラリと照合してリンクする。要約はここに、全文はそこにファイルする。既存の知見と矛盾する点があればフラグを立てるが、上書きはしない」というのが実際のスキルファイルの内容だという。「これがすべてだ。1ページの英語であり、読める人なら誰でも従える。それがテストだ。賢いインターンがそれに従えるなら、エージェントも実行できる」と述べた。

同氏はこれを踏まえ「Markdownは実はコードだ」と主張する。「明確な指示を英語で書けるなら、あなたはプログラマーだ。コンパイラは言語モデルになる」という。YCでは、メディア担当や催事スタッフ、財務チームなど、ターミナルを開いたことのない人々がスキルファイルやスケジュールジョブを構築しているといい、「財務チームの一人は、約100枚のExcelワークブックを、社内のエージェントで作った1つのアプリに統合した。彼女はプログラマーではない。エージェントの管理者だ。これから誰もがそうなる」と述べた。

5. 「潜在空間」と「決定論的空間」を正しく使い分ける


Tan氏は、エージェントの失敗の多くが「計算がどこで行われるべきか」という区別の混乱に起因すると指摘する。「一部の計算は潜在空間に属する。曖昧な要望から人間が本当に望んでいることを読み取るような、"好み"や"判断"であり、これはモデルの中に存在し、Markdownファイルで方向付けする」という。「一方で、算術やSQLクエリのような計算は決定論的空間に属し、SQLデータベースに格納し、Markdownファイルから呼び出す必要がある」と説明した。

「5人を1つのテーブルに座らせるのは簡単で、潜在空間でできる。しかし6000人分のカスタムスケジュールを作るとなると、潜在空間のエージェントは、それを管理するためのコードを書く必要がある」と述べ、実際に今回のカンファレンスの参加者スケジュールもこの方式で組まれたと明かした。「モデルが失敗する場所は、我々人間が失敗する場所と同じだ。解決策は、モデルに人間と同じように計算させることだ」と述べている。

同氏はさらに、この講演自体の準備過程を例に出す。「5日前、このスピーチにスピノザを入れることを決めた。エージェントはNadler、Goldstein、Stewartによる伝記3冊(約1500ページ)を取得し、すべて読み込んで、日付付きの年表、3人の伝記作家の見解が異なる箇所、章の引用付きの逐語的な引用を統合した資料を作成した。さらに、自分が何を必要としているかを理解しているので、彼の人生の中で最も語りやすい10のエピソードを、演出上のメモ付きでランク付けしてくれた」と述べ、この「コンペンディウム・スキル」を日常的に使っていると明かした。

6. 「1人の会社」が生む新しい経済学


6-1. スキルファイルは「従業員」、リゾルバーは「組織図」

Tan氏は、エージェントを活用した仕事の単位を、企業組織に見立てて説明する。「今夜エージェントと向き合うとき、あなたはコーディングをしているのではなく、Markdownでできた労働力を管理しているのだ。スキルファイルは従業員であり、1つの能力、1つの仕事が、新人でも実行できるほど明確に書き記されている。リゾルバーは組織図であり、タスクが来たときにどのMarkdownファイルまたは誰が処理するかを決める」という。「法人化する前、共同創業者やロゴ、資料を作る前から、すでに1つの組織、つまりあなた自身とエージェントからなる組織を運営できる」と述べた。

6-2. 従業員15人で年商1500万ドル、40人で6000万ドル

この構造が生み出す新しい経済学として、Tan氏は具体的な数字を紹介する。「YC2024年夏バッチのEmergentは、公開ローンチから8カ月で9桁の売上に到達した。年間経常収益(ARR)1500万ドルを超えた時点で、従業員は15人だった」という。「2024年冬バッチのRetailは、ARR6000万ドルに対し従業員約40人だ。この"1人当たり収益"は、ソフトウェアでも石油でも鉄道でも、これまで存在しなかった水準だ」と述べた。「これらは自然の異常ではない。新しい物理法則の上に生まれた最初の企業群であり、そのすべてが、今説明した通りに配線された1人か2人から始まっている」と続けた。

同氏はさらに、ソフトウェアそのものの位置づけが変わりつつあると指摘する。「ソフトウェアはもはや大切に扱う必要はない。週末で、対象者が1人しかいないツールをまさに必要な形で作れる。かつては"自分自身のかゆみを掻き、それが市場であることを願う"のがアドバイスだったが、今のバージョンはもっと良い。かゆみを掻くこと自体がほぼ無料だからだ。1人のために作ったツールの一部が、実は1つの会社になる。他の人々がそれをせがみ始めたときに、それが分かる」と述べた。

6-3. 「整備されていない脳はゴミ捨て場に過ぎない」という留保

Tan氏は、実践に入る前に一つの留保を加える。「誰も手入れしない脳は、優れた検索機能付きのゴミ捨て場だ。検索は、古びた事実を絶対的な自信を持って表示してしまう。悪いスキルファイルは、悪いプロセスを永遠にエンコードする」という。「原始的な要素は、メモリと衛生管理だ。すべての事実に出典を、新旧の情報が矛盾したときの整合性チェックを、そして実際に"刈り込み"を仕事とする司書を用意する必要がある。脳を本番環境のインフラとして扱えば複利で成長するが、ゴミ捨て場として扱えば、誰も追跡できない形で間違え続ける、非常に自信満々なエージェントができてしまう」と述べた。

7. 実践のための5つのステップ


Tan氏は、実際に始めるための具体的な手順を示した。

第一に、「今夜、ハーネスを選び、自分のマシンでエージェントを動かす」こと。同氏自身はGBrainと組み合わせたOpen ClawとHermes agentを使っているが、Codex、Claude Codeなど何でも構わないという。

第二に、「今週末、ライブラリを始める」こと。大がかりなアーカイブではなく、Markdownファイル1つのフォルダから始め、ノートやメールをエクスポートし、取り組んでいる各プロジェクトや関わっている各人物について1ページずつ書く。「一緒に何を築いているか、その人が何を大切にしているか、自分が何を借りているか、前回何を言っていたか。これは地球上のどのモデルも持っていない情報だ。あなたの頭の中にしかないからだ」という。

第三に、「最初のスキルファイルを書く」こと。「毎週嫌々やっているタスクは何か。経費報告書かもしれないし、会議メモや週次ステータス更新、競合調査かもしれない。それを、初日の新人に説明するように平易な英語でエージェントに伝え、間違えさせて、修正する」。

第四に、「それを定期実行ジョブとして組み込む」こと。「毎朝7時にこれをやる、毎週金曜にそれを要約する。眠っている間に終わった仕事に初めて目覚めた日、頭の中で何かが永久に変わる。その日から、"1日"という単位が仕事の単位ではなくなる」という。

第五に、「一度きりの作業を決してしないこと」。「タスクが終わるたびに、エージェントに"それをスキル化して"と頼む。GBrainには"skillify"という特別なスキルがあり、一度学んだ手順を再利用可能なMarkdownファイルに変換する。同じことを2度頼まなければならないなら、あなたは失敗している」と述べた。

「この5つを実行すれば、次の90日がどうなるか教えられる。1週目は正直おもちゃのようなものだ。ライブラリは薄く、スキルはぎこちない。4週目にはフライホイールが回り始める。エージェントはあなたのコンテキストで答え始め、朝のジョブが実際に読む価値のあるものを生み出し、最初の2つが機能したから3つ目、4つ目のスキルを書く。12週目には、質問し終える前に答えるライブラリと、以前は嫌がっていた仕事の一部を担う十数個のスキルファイル、そして他の人が借りたいと言い出すツールが1つか2つできている。この会場では、それは"スタートアップ"と呼ばれる」と述べている。

8. 「スキルファイルは誰のものか」という政治的な問い


Tan氏は最後に、実践的でない、しかし重要な論点を提示する。「スキルファイルは単なる文書ではない。あなたの認知の一部であり、あなたがどうやってその仕事をするかが頭から抜き出され、書き記され、実行可能になったものだ」という。「エージェントに教える1つ1つのスキルは、あなた自身の外部化であり、まったく同じファイルが、1つの変数、つまり"誰がそれを管理するか"によって、正反対の2つの未来を生む」と述べた。

同氏は架空のサポートエンジニア「マヤ」を例に出す。「2年かけて、マヤはエージェントに40個のスキルを教えた。午前2時にP0障害をトリアージする方法、解約寸前の顧客をなだめる方法、次のインシデントを実際に防ぐポストモーテムの書き方。それは彼女が2年かけて培った判断力そのものだ」という。

「バージョン1では、そのファイルはマヤ自身のリポジトリに存在する。転職しても彼女とともに移動し、新しい会社での初日から、何年分もの積み重ねられた判断力をすぐに使える。これが"所有"だ」。「バージョン2では、そのファイルは会社のリポジトリに、会社のITポリシーの下で存在する。マヤが退職しても、会社は彼女の判断力を彼女なしで永遠に実行し続ける。彼女の名前はコミット履歴にすら残らない。彼女はキャリアを持っていたのではなく、"抽出"されていたのだ」と述べた。「同じファイル、同じマヤ、たった1つの変数。だからこそ、私はスキルファイルは自分のものであるべきだと信じている。自分のスキルを所有しなければ、自分の仕事そのものがスキルファイルになってしまう」と結んだ。

この構図を、スピノザが1673年に受けた申し出と重ねる。「ハイデルベルクは、破門された異端者に、正教授職・給与・"哲学する自由"を提示したが、条件付きだった。既存の宗教を乱さないこと、という条件だ。スピノザの答えは、"その哲学する自由の限界がどこにあるか、私には分からない"だった。彼は利用規約を読み、その"買収"を断った」という。「自分の力の下にあるか、他人の力の下にあるか。1673年と2026年に共通する政治的な問いは、"誰がそれを指揮するのか"だ」とTan氏は述べた。

9. なぜすべてをオープンソース化したのか


Tan氏は、自身が開発したハーネス、脳のアーキテクチャ、スキル、そして、全体のパーソナルOSをすべてオープンソース化した理由についても語った。「YCにいる自分は、自分自身のインフラを収益化する必要がないから、できるからやった、というのが一つの答えだ。しかし"できるから"というのは、正しい問いへの答えではない。本当の問いは"なぜ誰もがそうすべきか"だ」という。「私は、権力者の道具は、無償で与えられるべきだと信じている。どの時代にも、権力者だけが持つ"レバレッジの私的な技術"がある。長い間それは識字能力だった。その後は資本だった。今日それは、ハーネスであり、ライブラリであり、Markdownでできた労働力だ」と述べた。

「それが私的なものとして留まれば、聖職者階級が生まれる。それが与えられれば、ルネサンスが生まれる。私はどちらの世界で生きたいか分かっている」と述べ、自らの信条として「他人が言わないことを言う。他人が投資しない人に投資する。他人が建てない建物を建てる。他人が書かず与えないコードを書いて与える。他人が残さない制度を残す」という一節を紹介した。

10. ある少年のための「パーソナルAGI」


講演の終盤、Tan氏は、自身の友人の実例を紹介する。「稀な形態のてんかんを持つ息子がいる友人がいる。研究室も助成金も許可もない。彼はただ実行し、8万件のMarkdownファイルからなるリポジトリ、つまり1人の少年のための"脳"を構築し、息子の正確な病状について人類が知っていることの限界まで自らを押し上げた。すべての専門医の診察記録、すべての論文、すべての発作記録、すべての薬物相互作用がインデックス化され、相互リンクされ、新しい医師が新しいアイデアを持ってきたときに、それがすでに試されたかどうかを数分で分かるようになっている。父親と、ラップトップと、1つのライブラリ。それがパーソナルAGIだ。ベンチマークでもデモでもない」と述べた。「誰も彼のためにそれを作りに来なかった。だから彼が作った。そして誰も、あなたのためにそれを作りに来ることもない。それが良いニュースだ」と語った。

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