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ヴィント・サーフ氏、Google退任へ ― TCP/IP開発から52年、「インターネットの父」83歳が来週勇退

インターネットの基盤となる通信規約「TCP/IP」を生み出した人物として知られるヴィント・サーフ氏が、来週、Googleの「チーフ・インターネット・エヴァンジェリスト」を退任する。20年以上にわたり同社に在籍してきた同氏の退任は、テクノロジー史における一つの時代の終わりを象徴する出来事といえる。米メディアTechCrunchの報道をもとに、その経緯と、退任会見で語られたAIエージェント時代への提言を整理する。


1. 20年余りの在籍に幕 ― カンファレンスでの功績称賛


サーフ氏は、Laude Instituteが主催する「Open Frontier」カンファレンスにビデオ出演し、UCバークレー校教授でRISCプロセッサ・アーキテクチャの共同開発者として知られるデイブ・パターソン氏から功績を称えられた。パターソン氏は会場に向けて次のように述べている。

「ヴィントは、Googleに20年以上在籍しており、今日からちょうど1週間後に退任する。彼のまずまず良いキャリアに、拍手を送ろうではないか」

この発言に会場からは歓声が上がったという。なお、TechCrunchの取材時点でGoogleからのコメントは得られていない。

1-1. TCP/IPが生んだ功績

サーフ氏は83歳。共同研究者のロバート・カーン氏とともに、今日のインターネットの基盤となるネットワーキング・プロトコルの設計者として知られている。1970年代から開発・普及に取り組んだTCP/IP(異なるコンピュータネットワーク同士が通信するための基本規約)は、複数の名誉学位、大統領自由勲章、そして、チューリング賞など数々の賞によって評価されてきた。同氏は、2005年からGoogleの副社長兼チーフ・インターネット・エヴァンジェリストを務めている。

2. AIエージェント時代への提言 ― 「標準化」への回帰


カンファレンスでは、サーフ氏のほかにも、Kerasディープラーニングライブラリの開発者でNdea共同創業者のフランソワ・ショレ氏、Tcl言語の開発者であるスタンフォード大学のジョン・オウステルハウト氏、DatabricksのCTOであるマテイ・ザハリア氏など、長く使われ続けるオープンソース・プロジェクトに関わった研究者たちが登壇した。

議論の中心となったのは、AIモデルの開発が少数の大手研究機関に集中している現状と、サーフ氏らが手がけたインターネットの分散的な設計思想との対比だった。この点について、サーフ氏は次のように予測を語っている。

「複数のソースから来る複数のエージェントが互いにやり取りするエージェント型AIのモデルは、コンポーザビリティ(組み合わせ可能性)、そして、相互運用性と標準化への要請を強く促すことになるだろう」

この見立てが正しければ、初期の段階で相互運用性の標準を定めた企業が、エージェント経済の実際の動き方に対して大きな影響力を持つことになる可能性がある。これは、インターネット初期に起きた「プロトコル戦争」に似た構図とも言えるだろう。

2-1. 「自然言語では不十分」という指摘

他の登壇者からは、LLMエージェント同士のやり取りは自然言語で十分だとの見方も出た。しかし、サーフ氏はこれに異を唱え、次のように述べている。

「英語が最適な選択だとは思わない。柔らかさはあるが曖昧さもある。エージェント間のやり取りには精度が非常に重要になる。あるエージェントは、もう一方のエージェントが何に合意したのかを確実に理解している必要がある」

さらに、伝言ゲームを引きながらリスクを説明した。

「昔の電話ゲームを覚えているだろうか。10人を経由するころには、メッセージが全く違うものになっていた。複数のエージェントが自然言語で会話し合う様子を想像してほしい ― それはなかなか恐ろしいことだ」

3. エピソード ― 「一番おしゃれな科学者」


会見では和やかな一幕もあった。パターソン氏は、1970年代に大学院生としてサーフ氏に初めて会った際の思い出を語っている。

「彼は、私がこれまで会った中で一番おしゃれなコンピュータ科学者だ。私の記憶では、1970年代に彼はシャツとネクタイ姿の大学院生として現れた」

これに対し、サーフ氏は、当時ベストまで着用していたことを認めつつ、次のように振り返った。

「なぜか私はいつも人と違うことをしたかった。長髪にするとか、鼻にピアスをするといった方法ではなく、服装を変えることがその一つの手段だと思っていた」

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