Strategy社、ビットコイン3,588枚を売却 ― マイケル・セイラー氏「絶対売らない」から方針転換
暗号資産市場では、同じ「デジタル資産トレジャリー企業」という枠組みの中でも、正反対の戦略を取る2社の動きが注目を集めています。ビットコインを主軸とするStrategy社と、イーサリアムを買い増すBitmineです。本稿では、Yahoo Financeの番組「The Daily Wolf」でホストを務めるScott Melker氏の解説をもとに、両社の動向と、暗号資産市場をめぐるその他の注目トピックを整理します。
1. Strategy社、ビットコイン売却という方針転換
Strategy社は、先週、保有するビットコインのうち3,588枚を売却し、デジタル信用配当の原資に充てたと報じられました。売却後も、同社は84万3,775枚のビットコインを保有しており、現金にして約25.5億ドルの水準に積み増したことになります。
Melker氏によれば、この25.5億ドルという水準が重要な意味を持つといいます。同社は、年間で約17億ドルの費用がかかるとされており、「今後2年分近くの費用をカバーできる水準まで積み増した」と説明しています。
1-1. なぜセイラー氏は売却したのか
Strategy社の創業者マイケル・セイラー氏は、かつて「自分のビットコインを絶対に売るな」と繰り返し述べてきた人物として知られています。しかし、今回、平均売却価格は、1枚あたり約6万ドルとされ、Melker氏は、「高値で買って安値で売る典型的な例だ」と指摘しつつも、「税務上の損失計上に活用できる」とも述べています。
同氏は、Strategy社が単純に現金を調達してビットコインを買い続けるという従来の手法から、資本構成全体を活用する、より複雑な財務戦略へと移行しつつあると分析しています。今後の焦点は、優先株式「STRC」が額面である100ドル近辺まで回復するかどうかにあり、それが実現すれば市場の信頼が高まり、再びビットコイン買い増しの動きが戻る可能性があるとの見方を示しました。
2. Bitmine、イーサリアム買い増しを継続
一方、Bitmineは、新たに4万2,197ETH(約7,400万ドル相当)を買い増し、保有量を574万ETHに引き上げました。これは、全イーサリアム供給量の約4.8%に相当し、同社が目標として掲げる「供給の5%」に近づいている状況です。
同社を率いるトム・リー氏は、こうした買い増しについて一貫した戦略を維持しているとされ、Melker氏は、「Strategy社が、ビットコイン供給の5%保有に近づいていたのと同様、Bitmineもイーサリアムでそれに迫っている」と両社の共通点を指摘しています。
3. イーサリアムの大規模プロトコル刷新計画
イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterin氏は、プロトコルのほぼすべての中核部分を3〜4年かけて再構築する計画を発表しました。量子耐性やプライバシー保護を前面に据えた内容とされ、Melker氏は、この動きの背景に、イーサリアム財団をめぐる「過去1年以上にわたる存在意義の危機」があると説明しています。
同財団では、幹部の離脱が相次いでおり、職員数も20%削減されたとされています。Buterin氏自身も、財団は、今後「ネットワークの一つのノードに過ぎない存在になる」と述べ、より分散化された体制への移行を示唆しました。Melker氏は、こうした計画の期間について「3〜4年は長すぎるという声も業界内にある」としつつ、「市場がイーサリアムに不満を持っていることをButerin氏も理解しており、それに応えようとしている」と評価しています。
4. Trump Coinをめぐる損益の実態
先週報じられた分析の続報として、Trump関連の暗号資産トークンをめぐる新たなデータが紹介されました。約98万8,950のウォレットが合計38.1億ドルの含み損を抱える一方、早期purchaser(価格が1ドルを下回る段階で購入した約49万2,000のウォレット)は、合計40億ドルの含み益を得ているとされています。同トークンは、高値の73ドルから現在1.79ドル程度まで、約97%下落した状態です。
5. Polymarketをめぐる規制の実態
米国では、政治予測市場サービス「Polymarket」へのアクセスが認められていない一方、米国の利用者が、VPNなどを経由して合計5.71億ドルを政治的な賭けに投じていたことが報じられました。Melker氏は、この状況について「米国民に何かをするなと言っても、それを止めるのは、潜水艦の網戸のようなものだ」と述べ、規制の実効性が限定的である現状を指摘しています。
6. まとめ
今回取り上げた事例は、暗号資産市場における戦略の違いが、同じ「トレジャリー企業」という枠組みの中でも大きく異なる結果につながり得ることを示しています。ビットコインとイーサリアムという二つの主要資産をめぐる機関投資家の動き、プロトコル自体の大規模な刷新計画、そして規制と実態の乖離など、暗号資産市場は依然として多くの変数を抱えています。投資家としては、個別の値動きだけでなく、こうした構造的な変化にも目を配る必要がありそうです。
