サムスン電子、営業利益19倍でも株価下落 ― 150%高騰後の警戒感が浮き彫りに
AI関連投資への期待が続く一方で、半導体セクターには「行き過ぎた楽観への調整」ともいえる動きが出ています。サムスン電子の好決算にもかかわらず株価が急落したことをきっかけに、韓国市場から米国市場まで値動きが波及しました。本稿では、Bloomberg Techの報道内容をもとに、サムスン電子の決算、アマゾンの資金調達、スペースXのナスダック100指数採用、そして、マグニフィセント・セブンの構図変化までを整理し、投資家が押さえておくべきポイントを解説します。
1. サムスン電子の好決算と株価急落の背景
サムスン電子は、今回、売上高が前年から倍増し、営業利益は19倍に拡大したと報告されました。四半期の利益は約580億ドルに達し、世界でも有数の高収益企業になる見通しです。アナリスト予想を6%上回る結果であったにもかかわらず、株価には強い売り圧力がかかりました。
Bloombergのピーター・エルストロム記者は、この現象について「事業のファンダメンタルズが変化したわけではない」と説明しています。DRAMの供給はなお逼迫しており、価格も上昇基調にあるといいます。つまり、今回の下落は、業績の悪化ではなく、期待値の高さと持ち高の偏りが主因とみられます。サムスン株は年初来150%超、SK Hynixもそれを上回る上昇を見せており、レバレッジ型ETFによる値動きの増幅も相場の振れ幅を大きくしている要因の一つです。
2. 半導体株のボラティリティと投資家心理
エドワード・ジョーンズのアンジェロ・コウルカファス氏は、半導体株のボラティリティ上昇について「テーマが成熟段階に入りつつあるサイン」と位置付けています。同氏によれば、AI投資という長期的な追い風自体への確信は投資家の間で根強い一方、投資の初期段階に過ぎないという見方と、行き過ぎではないかという懸念が同時に存在しているとのことです。
また、フィラデルフィア半導体指数は、一時7%超の下落を記録しましたが、これは直近1カ月で珍しくない値動きの範囲だといいます。半導体セクターは11業種の中でも60%超の増益が見込まれる分野であり、ハードルは高いものの、ファンダメンタルズ面での支えは残っているとの見方が示されました。
3. 韓国政府主導のソブリンAI投資
Bloomberg Intelligenceのクンジャン・ソブハニ氏は、韓国政府がメモリ工場やデータセンターに約8800億ドル規模を投じる計画を掲げていることを紹介し、これが「ハイパースケーラー(大手クラウド事業者)以外からの設備投資サイクルの延伸」につながると分析しています。今回追加で発表された計画は約3070億ドル規模とされ、これまで追跡してきたソブリンAI関連投資は合計で約30ギガワット相当に達する見込みだといいます。
政府主導の投資は一度予算配分が決まると長期にわたって継続されやすく、四半期ごとの需要変動に左右されにくいという特徴があります。ソブハニ氏は、韓国のこうした動きが欧州などほかの地域にも支出拡大の圧力を及ぼしていると指摘しました。
4. アマゾンの大型社債発行とAI設備投資
番組内では、アマゾンが、最低250億ドル規模の米国債を発行し、AIインフラへの投資資金に充てる方針であることも取り上げられました。Bloomberg Intelligenceの試算では、同社の年間設備投資は現行の2000億ドルという会社側ガイダンスを上回り、来年には3000億ドル近くに達する可能性があるとされています。
Bloomberg Intelligenceのロバート・シフマン氏は、設備投資の増加要因として、建設コストやメモリ価格の上昇に加え、OpenAIやAnthropicのような企業への出資拡大も挙げています。同氏は「今後もこの種の数字は大きくなり続けるだろう」との見方を示しつつ、社債市場が安定して利回りが急騰しないことや、AI・クラウド事業の高い成長率を継続的に示せるかどうかが今後の焦点になると述べました。
5. スペースXのナスダック100指数採用と証券会社の新規カバレッジ
スペースXは、この日、ナスダック100指数への採用が発表されました。ただし株式が完全に流通しているわけではないため、指数内での構成比率は比較的小さく、Palo Alto Networksに近い水準になるとの解説がありました。指数連動型資金の一部は既に事前に組み入れを進めていたとみられ、当日は株価が5%超下落する場面も見られました。
同時に、IPO後の静観期間(クワイエットピリオド)が終了したことを受け、複数の証券会社がスペースXのカバレッジを開始しました。中でもRaymond Jamesは業界最高水準となる目標株価800ドルを設定し、売上高が今後20倍に拡大するとの見方を示しています。番組内のアナリストは、投資家がスペースXを単なるロケット・衛星事業としてではなく、イーロン・マスク氏が描く広範なAI・未来ビジョンの一部として評価している傾向があると分析しました。
6. マグニフィセント・セブンからメモリ・ストレージ株への主役交代
Bloombergのライアン・ヴラステリカ記者は、AI関連投資のテーマが進化し、マイクロソフトやアマゾン、メタといった従来の主役から、メモリ・ストレージ関連企業へと市場の関心が移っていると指摘しました。マイクロンやサンディスク、ウエスタンデジタルといった銘柄が大きく上昇する一方、マイクロソフト株は、年初来20%超下落し、2000年12月以来最悪の月間パフォーマンスとなったといいます。
マグニフィセント・セブンの中でも、アルファベットは、Gemini、チップ事業、YouTube、Waymoなど複数の事業が相互に効果を発揮しているとの評価から、比較的堅調に推移しているとのことです。一方でマイクロソフトについては、積極的な設備投資に対するリターンへの懐疑的な見方が強まっているとされています。

