見出し画像

Broadcom、Appleとカスタムチップ契約を2031年まで延長 ― AIサーバー向け新規開発が判明

2026年7月某日の米国市場は、半導体セクターが主役となった。前週の急落から一転、フィラデルフィア半導体指数は反発し、AMDは一時9%近い上昇を見せた。その中心にいたのが、Appleとの提携拡大を発表したBroadcomである。同時にMicrosoftのXbox部門再編、SK Hynixの米国上場計画、そして防衛テック分野への大型投資と、この日は複数の重要ニュースが重なった。本稿では、ビジネスパーソン・投資家の視点から、これらの動きが持つ意味を整理する。


1. Broadcom、Appleとの提携を2031年まで延長


Broadcomは、Appleとの新たな合意を発表し、パートナーシップを2031年まで延長することが明らかになった。この報道を受けてBroadcom株は上昇し、半導体セクター全体の反発をけん引した。

1-1. 新チップの正体はAIサーバー向けASIC

Bloombergのマーク・ガーマン記者(Apple担当編集長)は、番組内で、契約の具体的な中身について解説した。企業が公表するプレスリリースは意図的に曖昧にされることが多いとした上で、今回の提携は、Appleが開発中の新しいサーバーチップに関するものであり、Broadcomの技術を用いた単一機能特化型のASIC(特定用途向け集積回路)であると説明した。用途はAI処理に限定され、来年中に投入される見通しだという。

このチップは、AppleのM5 Ultraの派生版になるとみられ、ガーマン氏は、「これまでで最も強力なチップになり、GPU・CPUともに性能が4倍になる」という趣旨の見立てを示した。これはApple自身にとって初のサーバー専用チップとなる点も注目に値する。

1-2. Wi-Fi・Bluetoothチップでも関係再構築の兆し

番組では、Broadcomが、かつてAppleのWi-Fi・Bluetoothコンボチップを長年手掛けていた経緯にも触れられた。Appleが独自のN1チップを開発したことで、この分野からBroadcomは一時退いていたが、サーバー向け提携を通じて関係が再び深まる可能性が示唆された。

1-3. Appleの設備投資はどこまで増えるか

Bloomberg Intelligenceのアヌラグ・ラナ氏は、この提携拡大によってAppleが今後数年で設備投資を増やす必要があるとの見方を示した。理由は、AI機能拡充に伴いAppleが独自のプライベートクラウド基盤を構築する必要があるためで、データセンター向けに独自チップを用いる選択肢が浮上しているという。もっとも、ラナ氏はApple売上高の3%程度(約150億ドル規模)にとどまる現状の設備投資水準を踏まえ、たとえ4%前後に引き上げられても「大きな負担にはならない」との見解を述べた。

2. SK Hynix、最大280億ドル規模の米国上場へ


半導体メモリ大手SK Hynixが、米国預託証券(ADR)を通じた正式な米国上場プロセスを開始した。想定される時価総額は最大280億ドル規模とされ、1800万株相当のADR発行が計画されている。

2-1. 需要は70億ドル規模、コーナーストーン投資家も

Bloombergのベイリー・リプシュルツ記者によれば、現時点で70億ドル相当の需要が集まっており、一部はコーナーストーン投資家に配分される見通しだという。市場参加者が注目していたのは、ADRと韓国本国株式との交換可能性(ファンジビリティ)で、ADRから韓国株への転換は可能だが、逆方向は現時点で想定されていないとされる。これは台湾積体電路製造(TSMC)の米国上場株が採用してきた仕組みと同様であり、米国上場株が韓国本国株に対してプレミアムで取引される可能性を示唆する。

2-2. 上場の狙いは資金調達だけではない

リプシュルツ記者は、調達資金(約200億ドル規模)が韓国国内の生産能力拡張に充てられる一方で、米国という世界最大の資本プールへのアクセス確保も重要な狙いだと指摘した。時差を理由に取引を避ける投資家や、新興国市場企業への投資を制限されているファンドにとって、米国上場によってSK Hynixへの投資機会が開かれる。将来的にはナスダック100への組み入れも視野に入るという。

2-3. Micronとの比較、そして、サイクル性への懸念

RBCブルーインドルフィンのジャネット・ムイ氏は、SK Hynixが、「メモリ専業銘柄」としてMicronと同様の投資家人気を集める可能性を指摘した。一方で、メモリ半導体業界特有の循環性(サイクリカリティ)への警戒感も示し、現在の記録的な利益水準を将来にそのまま外挿することへの慎重な見方を述べた。

3. 半導体からハイパースケーラーへ ― ローテーション論争


モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、AIトレードが新たな局面に入り、投資資金が半導体株からハイパースケーラー(クラウド大手)へ回転する可能性を指摘した。同氏は「ハイパースケーラーは安定し、半導体株は調整局面に入る」との見方を示し、半導体株について最大30%の調整もあり得るとした。

これに対し、RBCのムイ氏は、直近の半導体株の下落は「健全な調整」であり、需給ファンダメンタルズは変わっていないとの立場を取った。設備投資(capex)についても、AI関連投資の裾野が半導体・メモリからハイパースケーラー、さらにセキュリティ関連企業へと広がりつつあると分析した。

Founders 100 ETFのローレン・キャシディ氏も、推論(インファレンス)フェーズの長期化により、旧世代チップであっても長期間にわたり価値を生み続けると強調。2020年に製造されたNVIDIAのA100サーバーが今も稼働している事例を挙げ、AIインフラ投資の「息の長さ」を指摘した。

4. Microsoft、Xbox部門で大規模リストラ


Microsoftは、Xbox部門の大規模再編を発表し、株価は一時2%程度下落した。Bloombergのジェイソン・シュライアー記者によると、削減人数は3200人に上り、この中にはスタジオ4社の売却・独立化に伴う人員も含まれる。うち2社は非公開の買い手に売却され、2社は独立会社となる予定で、さらに5社目の売却も計画されているという。

4-1. ハードウェアとソフトウェアの「連動不全」

シュライアー記者は、Xboxの苦戦はソフトウェアとハードウェアの両面にまたがると分析した。優れた独占タイトルによってハードウェアを売るというモデルがここ10年うまく機能せず、680億ドル規模のActivision Blizzard買収を含む巨額投資も、Xbox Game Passの成長という形では十分に結実していないとの見方を示した。

4-2. ディスクレス化の流れ

PlayStationが2028年からデジタル専用販売に移行する計画についても言及があり、業界全体でデジタル購入が主流となっている実態が背景にあるとされた。

5. Runway、東京・ロンドン・パリに新拠点 ― 3億ドル規模の投資


生成AI動画企業Runwayの共同創業者兼CEO、クリストバル・バレンズエラ氏が出演し、ロンドン・東京・パリへの新拠点開設と、今後数年で総額3億ドル規模の投資計画について語った。

5-1. アジア展開の背景

バレンズエラ氏は、米国が最大市場である一方、アジアでの成長も「一貫して」続いていると述べた。日本は同社にとって第3の市場で、欧州が第2位という位置づけだという。同氏は、投資の大部分が研究人材の獲得に充てられると説明し、「人材こそがこの会社を特別にしている」と述べた。

5-2. Lionsgateとの資本提携モデル

映画会社Lionsgateとの提携についても触れられ、同社がRunwayに出資した経緯や、他のスタジオとも同様のモデルでの協業を進めている状況が語られた。バレンズエラ氏は、ハリウッドにおけるAI活用はすでに「当たり前」の状況になっていると述べ、BBCなどメディア企業がストーリーボード作成や編集にAIを活用している事例を挙げた。

6. 「2兆ドル」の防衛テック競争 ― Ondasによるドローン企業買収


Bloombergのグローバル防衛担当エディター、ジェリー・ドイル氏が解説した特集記事によれば、新たな戦場技術の開発をめぐり総額2兆ドル規模の投資競争が起きているという。冷戦期の核兵器備蓄競争とは異なり、今回の焦点はドローン、AI、極超音速兵器といった技術群にある。ドイル氏は、これらの技術の一部はすでにウクライナやイランを巡る軍事作戦で実戦投入されていると指摘した。

6-1. 米中の投資アプローチの違い

ドイル氏は、中国は政府と民間セクターの結びつきが強く、民間で開発された技術が迅速に軍事転用される一方、米国では官民の分離が比較的大きく、企業の技術開発が必ずしもすぐには政府側に還元されない構造的な違いがあると説明した。

6-2. Ondas、Dzyneを8.75億ドルで買収

こうした流れの中、ドローン・無線通信技術を手掛けるOndasは、自律航空機メーカーDzyneの買収を発表した。買収総額は8.75億ドルで、現金2億ドルと株式約6.75億ドル(6カ月のロックアップ付き)で構成される。

Ondasの会長兼CEO、エリック・ブロック氏は、この買収により常続的なISR(情報・監視・偵察)分野を含む幅広い無人システムのポートフォリオを構築できると説明した。顧客は米国防省や同盟国軍にとどまらず、中東・欧州を含むグローバルな展開を視野に入れているという。ブロック氏はまた、「メイド・イン・アメリカ」政策など各国のローカライゼーション要請の高まりに対応するため、現地の防衛産業パートナーとの協業を重視する方針を示した。

オススメ記事


Next Big Wave——成長株・アイデアの種・トレンド深掘り



いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー