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FINRAマージンデット、前年比54%増 ― 1997年以降で4回目の急伸、過去3回は2000・2007・2021年

米国株市場は、歴史的な高値圏にある一方、その裏側では負債(レバレッジ)の急拡大が進んでいる。投資系ポッドキャスト「Animal Spirits」に出演したMichaelとBenの両氏は、今回のエピソードで「このレバレッジ拡大は、バブルの兆候なのか、それとも健全な強気相場の一部なのか」というテーマを軸に、マージンデット、AI関連の資本支出、市場集中度など複数の指標を検証した。

本記事では、ビジネスマン・投資家の視点から、両氏が取り上げた具体的な数字とその解釈を整理する。


1. マージンデットの急増 ― 過去3回はいずれも市場の転換点


1-1. 前年比54%増という数字

Michael氏は、FINRAが公表するマージンデット(証券担保融資)のデータを取り上げ、「前年比で54%増加している」と指摘した。これは、同時期のS&P500の上昇率(前年比42%)を上回るペースであり、方向性としては市場と連動して動くのは自然だとしつつも、注視すべき水準だとの見方を示した。

さらに重要な指摘は、「1997年以降、マージンデットが前年比50%以上増加したのは今回が4回目」という事実だ。過去3回の該当年は、2000年、2007年、2021年であり、いずれも市場の転換点に近い時期だった。Michael氏は、「これが即座に『天井』を意味するわけではない」としながらも、「レバレッジが積み重なった結果、市場に『エアポケット』(急落の空白地帯)が生まれやすくなっている」と懸念を述べている。

1-2. 見えないレバレッジ ― スワップや合成レンディング

両氏は、FINRAのデータに反映されないレバレッジの存在にも言及した。スワップやオプション、ボックススプレッドといった仕組みを通じた資金調達は、従来のマージンデットの統計には現れない。Michael氏は、Citadel Securitiesがまとめたデータを引用し、「1カ月物のエクイティ・ファイナンシング・スプレッドが最大138ベーシスポイントまで上昇している」と紹介し、資金調達市場そのものがタイト化している可能性を指摘した。

こうした「見えないレバレッジ」の存在は、個別銘柄の急激な変動にもつながっているという。実際、半導体大手のMicronは直近7営業日連続で株価が5%以上変動しており、Ben氏は、「これは完全にレバレッジによって振り回されている状態」だと述べた。

2. AI関連資本支出の転換点 ― メモリ株とハイパースケーラーの綱引き


2-1. Appleの値上げ発表と株価の逆転劇

AI需要に伴うメモリ価格の上昇は、大手テック企業の収益構造にも影響を及ぼしている。ある日、Appleがメモリコストの上昇を理由にMac・iPad・iPhoneの価格を引き上げると報じられた当日、Apple株は6%下落した。

Luke Kawa氏が作成したチャートによれば、同じ日にSanDisk、Western Digital、SK Hynix、Samsungといったメモリ生産各社の株式時価総額が合計で約5000億ドル増加し、一方で、Apple、Microsoft、Meta、Amazon、Googleの時価総額は、合計で約5000億ドル減少したという。Michael氏はこれを「非常にきれいな資金の移転」と表現している。

同日は、Micronの決算発表日でもあり、同社の株価は16%上昇した。Ben氏は、「メモリ生産各社に価格決定力が集中している状況は、まさにポーターの5フォース分析の典型例だ」と述べている。

2-2. ハイパースケーラーのフリーキャッシュフローが「ゼロ」に近づく懸念

Ben氏が紹介したTracy Alloway氏(Nomura関連)のチャートによれば、Amazon、Microsoft、Google、Meta、Oracleの5社を合計したフリーキャッシュフロー予測は、今後12カ月で約7000億ドルからほぼゼロへ縮小する見通しだという。AIインフラへの投資が先行する一方、その原資となるキャッシュフローが急速に細っている構図だ。

Michael氏は、Micronの業績について、「2025年1月以降の増益率は1400%に達している」と指摘し、この動きが「合理的」であるとの見方を示した。ハイパースケーラー各社が巨額の投資を続ける中、その資金の受け皿となっているメモリ企業側の株価評価が急速に見直されている状況だ。

3. これはバブルなのか ― 両氏の判断基準


3-1. 「NASDAQ100が50%以上下落したらバブル」という定義

番組の中で両氏は、Derek Thompson氏のポッドキャストに出演した際に問われた「これはバブルか」という質問への回答を振り返った。両氏の答えはいずれも「ノー」だった。

Michael氏は、自身の判断基準を次のように説明している。「NASDAQ100が50%以上下落することがあれば、それはバブルだったと証明されるだろう」とし、現時点でそこまでの下落を市場が許容するとは考えていないと述べた。一方で、メモリ関連株が今後50%下落する可能性自体は否定していない。

3-2. 市場の「幅」は健全というもう一つの見方

一方で、両氏は市場の内部データからは楽観的な材料も見出している。Russell2000指数は、直近月曜終値時点で年初来22.3%上昇し、S&P500の7.5%を大きく上回った。Michael氏が、AIツール(Claude)を用いてRussell2000構成銘柄を分析した結果、「構成銘柄の67%が年初来上昇、中央値のリターンは15%超、900銘柄が20%以上上昇している」という。Michael氏は、これを「特定のテーマへの集中ではなく、市場全体の幅の広がり」と評価し、健全なブル相場の特徴だと述べた。

4. まとめ ― レバレッジと幅広い上昇が同時進行する異例の局面


今回のエピソードで示されたのは、マージンデットの急増や個別銘柄の急変動といった「警戒すべき兆候」と、市場全体の幅広い上昇という「健全な兆候」が同時に存在する、やや矛盾をはらんだ市場環境である。

ビジネスマン・投資家にとって重要なのは、こうした指標のどちらか一方だけを見て判断するのではなく、レバレッジの蓄積状況とファンダメンタルズの両面を継続的に観察することだろう。Michael氏が述べたように、「投機があるかどうかは自明だが、バブルかどうかを決めるのはバリュエーションの妥当性」という視点は、今後の市場を見る上での一つの軸になりそうだ。

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