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「EPS600%増でも株価が下がる」——FRBのAIインフレ警告・Alibabaの利益67%減

2026年3月第3週のBloomberg Techは、AIインフラ投資の光と影が交差する週となった。Micronは、四半期EPS600%増という驚異的な決算を発表したにもかかわらず株価は下落し、FRBのパウエル議長はAIがインフレを押し上げていると発言した。Alibabaは、5年で1,000億ドルのAIクラウド収益を目標に掲げながら利益は急減し、Samsungは、capexを22%増やして対応を急ぐ。イランとの紛争が地政学リスクを高める中、投資家が今週見るべき論点を整理する。


1. Micron決算——「良すぎる数字」が逆に重荷になった理由


1-1. 収益4倍・EPS600%増でも株価は下落

Micronは、直近四半期で収益が前年同期比約4倍、EPSが600%増という圧倒的な数字を発表した。その主因はHBM(高帯域幅メモリ)の需要急増だ。NvidiaのAIチップに不可欠なHBMの供給が逼迫する中、Micron・Samsung・SK Hynixの三社がこの製品に生産リソースを集中させた結果、PC・映画・自動車向けの通常DRAMも品不足となり価格が急騰した。

しかし、株価が下落した理由は明確だ。この需要に応えるためMicronはさらなる大規模な設備投資を余儀なくされており、利益の多くがcapexとして消えていく構造への懸念が投資家に広がった。また、Nvidiaの次世代チップ向けHBM4でMicronの採用比率が変わる可能性も、引き続き株価の重荷となっている。MicronはHBM4の量産出荷開始を発表したが、最終的な採用規模はまだ不透明だ。

1-2. Samsungもcapexを22%増——メモリ三社が揃って投資拡大

Micronだけではなく、Samsungもまた2026年のcapexを22%引き上げることを発表した。AI向けメモリの注文急増に対応するためで、HBMと一般DRAMの両方で生産能力を拡張する方針だ。メモリ三社が揃って大規模投資に踏み込む構図は、需要の強さを示す一方で、数年後に過剰供給に転じるサイクル的なリスクを内包している。メモリ産業が歴史的に繰り返してきた「ブーム→供給過剰→価格崩壊」のパターンが再現されるかどうかは、AI需要の持続性にかかっている。

1-3. FRBパウエル議長:「AIがインフレを押し上げている」

週の重要発言の一つは、FRBパウエル議長によるものだ。「データセンターをあらゆる場所で建設しており、そこに投入される物資やサービスに圧力がかかっている。これが短期的にインフレをわずかに押し上げている」と明言した。

このタイミングは投資家にとって不都合だ。イランとの紛争による原油価格上昇がすでにインフレの押し上げ要因となっているところに、AI投資がさらに追い打ちをかける形になっている。FRBは「近い将来に一段落する短期的なショック」として判断しているようだが、エネルギーインフラへの破壊が続けば、より深刻なシナリオも否定できない。

2. Alibaba——「5年で1,000億ドル」という野心と利益急減の矛盾


2-1. 四半期利益67%超の急減

Alibabaは、AIクラウド収益を今後5年以内に1,000億ドルに引き上げるという目標を発表した。しかし、同時に、直近四半期の純利益が67%超急減したことも明らかになった。AIへの投資拡大とEコマースの競争激化がコストを押し上げた結果で、投資家の反応は厳しく、発表当日は株価が一時10%近く下落した。

「収益化の道筋が見えない成長投資は、現在のマクロ環境では評価されにくい」——これは今のAI企業全般に通じる問いでもある。Alibabaの通義(Qwen)シリーズは技術力が評価されているが、TencentがWeChatのAI統合を進める中、Alibabaの相対的なポジションへの懸念も広がっている。

2-2. 中国でのローカルAI普及——Mac Miniが売り切れる理由

中国市場では、オープンソースのAIモデルが旧型MacハードウェアやローカルPCで動作するようになり、「AI on-premise(自社環境で動かすAI)」の動きが一般層にまで広がっている。Mac Miniが中国の量販店から品薄になるという現象もその一例だ。DeepSeekのような少人数チームが新モデルを次々とリリースし、参入障壁が下がり続けている。「シリコンバレーと似た、まったく新しいイノベーションのエコシステムが生まれつつある」という現地の声も聞かれた。

エンタープライズ向けには、AIトークンへの支出意欲が高まっており、生産性向上のためにAIに費用をかける経営者が増えているという。Alibaba・Tencent・DeepSeek・Kimi(Moonshot AI)など複数の有力モデルが競合する中、勝者はまだ定まっていない。

3. Googleのエネルギー契約——「AIのための電力」問題が本格化


3-1. ミシガンで1GW・20年契約という異例の取引

Googleは、ミシガンでのAIデータセンター建設において、最大1ギガワットの電力を確保するための20年間の電力購入契約を締結した。通常とは異なり、Googleが新たなクリーンエネルギー設備の建設コストを全額負担するという異例の条件だ。

これはAIデータセンターが必要とする膨大な電力を安定的に確保するための、新しいモデルとして注目されている。送電網に余裕がない地域でも自らインフラを整備することで電力を確保するという手法は、今後他社の「電力調達のプレイブック」になりうるとも言われている。AIブームが単なるソフトウェアの問題ではなく、エネルギーインフラ全体を巻き込む問題であることを改めて示した事例だ。

4. 子どものソーシャルメディア利用規制——カリフォルニア参戦が意味すること


4-1. 全米で加速する「未成年のSNS禁止」の動き

ソーシャルメディア企業への圧力も今週の主要トピックの一つだ。複数の州が未成年者のSNS利用を禁じる法案を提案する中、カリフォルニア州もこの動きに参加した。カリフォルニアは多くのテック企業の本拠地であり、象徴的な意味を持つ。

ロサンゼルスでは現在、MetaとAlphabet(YouTube)が「プラットフォームを意図的に依存性の高いものに設計した」という訴えで裁判が進行中で、陪審員が審議を続けている。この裁判の結果は、同様の訴訟数千件の行方に影響するとされており、判決が出れば立法を求める声がさらに強まる可能性がある。

4-2. 「ルールができるまでに数十年かかってきた」という現実

一方で、これまで米国では実効性のあるSNS規制法が成立してこなかった経緯もある。提案から法律になるまでには多くのステップが必要で、憲法上の言論の自由との兼ね合いも複雑だ。MetaやGoogleは独自の保護者向けツールを充実させると主張しているが、裁判所や立法府がそれで十分と判断するかどうかは不透明だ。

5. AIブームは「まだ1回表にも達していない」——VCの視点


Coastal VenturesのEthan Choiは「AIの最大の制約は現時点ではデータセンターとコンピュートだが、需要は本質的に無限だ」と語る。ロボティクス・エンタープライズエージェント・科学研究のいずれを見ても「ほぼ手つかず」の領域が残っており、「私たちはまだ1回表にも達していない」という見方を示した。

一方で別のVCからは「OpenAI・Anthropic・Google・xAIに対抗しようとするコンテンダー企業の評価額にはバブルがある」という声も出ている。新しいモデルアーキテクチャ(ステートスペースモデル・ニューロシンボリックモデル・数学ベースモデルなど)に賭けるベンチャー投資は「一定の合理性がある」としつつも、「やや過熱している」という評価が共存している状況だ。

まとめ——「AIインフラ投資の熱狂」と「現実のコスト」の間にある視点


今週のBloomberg Techが映し出したのは、AIブームが確かな需要に支えられている一方で、そのコスト——インフレ・設備投資・エネルギー・地政学リスク——が同時に積み上がっている現実だ。Micronのような「良い決算でも株価が下がる」構造は、投資家がcapexの回収可能性を問い始めていることを示す。

Samsungの22%増資・GoogleのGW規模の電力契約・Alibabaの利益急減——これらはいずれも「AIへの投資は本物だが、その果実をいつ・誰が享受するか」という問いに対する答えがまだ出ていないことを示している。地政学の不確実性が高まる中で、インフラ層の競争力と収益化の道筋を見極めることが、現在の市場での重要な投資判断軸となる。

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