パロアルトネットワークスCEO Nikesh Arora氏、トークン価格は「現在の10分の1」になると予測
セキュリティ大手パロアルトネットワークスのCEO、Nikesh Arora氏(同社時価総額2,250億ドル)が、ポッドキャストでフロンティアAIモデルの経済学について語った。トークン価格の将来予測から、Anthropicの「Claude Mythos」がもたらした衝撃、自社の市場シェア戦略まで、投資家にとって示唆の多い内容を整理する。
1. フロンティアモデルの「広さ対深さ」問題
Arora氏が提示した中心的な枠組みは、「フロンティアモデルの問題は、広さ対深さの問題だ」というものだ。
1-1. コンシューマー向けは「広さ」が勝負
同氏は、消費者向けの利用では、「誤検知(false positive)」への許容度が高いと指摘する。Geminiに投資メモを作成させた経験を例に挙げ、本来であればバンカーやアナリストを雇って数日かかる作業を4分で済ませられたとしつつ、内容は「だいたい正確」という程度だったと振り返った。それでも消費者は気にせず使い続けるため、フロンティアモデル各社は「広さ」、つまり消費者からの支持と利用頻度を競っているという。
1-2. エンタープライズ向けは「深さ」と精度がすべて
一方、エンタープライズ領域では、誤検知への許容度はゼロに近いと同氏は語る。例として、自動運転のWaymoを挙げ、運転手という人間のエージェントを置き換えるために「数百億ドル規模」のエッジケース学習が必要だったと説明した。「次世代のAnthropicモデルを自分のメルセデスに搭載して『家まで運転して』と言っても、それはできない」というのが、深さの欠如を表す比喩だ。エンタープライズ向けの収益は、こうした文脈理解の「深さ」を持つ用途から生まれるとの見立てだ。
2. トークン価格は「今の10分の1」になる
2-1. Salesforce Benioff氏の3億ドル発言とトークン経済
番組内では、Salesforceのマーク・ベニオフ氏が2026年にAnthropicのトークンに約3億ドルを投じる見通しを示し、その大部分がコーディング関連だと述べたことが話題になった。Arora氏は、これを開発者の人件費支出の約3.8%に相当すると試算し、「この比率が20%まで上がるなら、AnthropicやOpenAIの評価額はむしろ過小評価だ」と述べた。
2-2. コンピュート不足とコンシューマーの「無料」コスト
Arora氏は、現在のコンピュートコストは、2年前の2〜4倍に達しており、需要に対して供給が追いついていないと指摘する。さらに、コンピュートの半分以上が無料で提供される消費者向け利用に費やされており、これは構造的に収益を生まないため、残り半分のエンタープライズ向け用途にコスト負担が集中していると分析した。その上で同氏は、「長期的なトークン価格は、今日の水準の10分の1になるべきだと思う」と述べ、3〜5年の時間軸で価格が大きく下がる可能性を示した。
3. Claude Mythosがもたらした「6週間で6年分」の発見
サイバーセキュリティの観点からは、Anthropicの「Claude Mythos」が話題の中心になった。Arora氏は、同モデルが登場した際にパロアルト自社のコードに対して実行したところ、「6週間で、人間であれば5〜6年かかっていたであろう不具合を見つけた」と振り返った。
一方で、同氏は、このような能力は防御側だけでなく攻撃側にも武器になり得ると警告する。モデルは誤検知(false positive)を一定割合含むため、パッチを自動生成させてそのまま適用するのは危険であり、人間によるテストや本番環境での検証を経て初めて安全に運用できるという。同氏は、こうした技術の登場が結果的に企業のセキュリティ対応を促す「サイバーセキュリティへの追い風(accelerant)」になっていると位置づけた。同社は世界に1億5000万のセンサーを展開し、ゲートウェイでの防御を担っているという。
4. パロアルトの市場シェア戦略 ― 2%から9%、そして、20〜40%へ
Arora氏は、自身がパロアルトに参画した当初、サイバーセキュリティ市場全体における同社のシェアは2%未満だったが、現在は8〜9%に達していると述べた。さらに、市場全体の20〜30〜40%まで拡大する余地があり、これはパロアルト一社だけでなく業界全体に当てはまる成長機会だとの見方を示した。
同社は約半年前、AIエージェントのトラフィックを一元的に監視・制御する「ゲートウェイ」企業を買収したことも明かしている。Arora氏は、「エージェントがどれだけ存在し、どう振る舞っているかを追跡するには、トラフィックを集約する仕組みが必要だ」と述べ、エージェント時代のセキュリティ基盤としての重要性を強調した。

