SpaceX、6月12日上場後初の投資適格社債発行へ ― 現金100億ドル超でも200億ドル規模を調達
2026年6月22日、Bloomberg Techが報じたのは「宇宙企業が社債市場に登場する」という異色のニュースだった。記録的な規模のIPOからわずか10日で、SpaceXは、初の投資適格社債発行に動いた。同じ日には、MicronとAnthropicの戦略提携、MicrosoftとChevronによる西テキサスでの大型データセンター電源契約など、AIインフラを巡る動きが相次いだ。本稿では、これらのニュースを投資家・ビジネスパーソンの視点で整理する。
1. SpaceX、初の投資適格社債発行
SpaceXは、2026年6月12日に1株135ドルでIPOを実施した。その後、株価は3営業日続落し、1株170ドルを下回る水準まで下落しているという。そうした中で発表されたのが、既存債務の借り換えや事業資金の確保を目的とした、史上初の社債発行だ。Bloomberg Intelligenceのシニア・クレジット・アナリストRobert Schiffman氏によれば、調達規模は200億ドル程度になる可能性があるという。
1-1. なぜ現金100億ドル超の企業が社債を発行するのか
SpaceXは、100億ドルを超える現金を保有しているとされる。それでも社債発行に踏み切る理由について、Schiffman氏は、「今後数年でSpaceXは、1,000億ドルを超える支出を行い、フリーキャッシュフローも同程度のマイナスになる可能性がある」と説明する。背景には「宇宙における次のハイパースケーラー事業を構築している」という位置づけがあるという。
格付けについては、主要3社すべてから投資適格を取得していることが大きな意味を持つとされる。Schiffman氏は、「債券側からSpaceXを担当していた人はいなかったため、需要は『争奪戦』になる」とし、CEOのElon Musk氏を「現世代における最も偉大な投資家」と評しつつ、200億ドルの供給に対して1,000億ドルを超える需要(ブックサイズ)が見込まれるとの見通しを語った。
1-2. 株式投資家とクレジット投資家の視点の違い
株式市場では、SpaceXの将来性に対する期待が先行する一方、クレジット投資家は現時点のキャッシュフローとレバレッジを重視する。Schiffman氏は、同社が現金水準を一定額(報道によれば250億ドル規模)に維持する方針を示している点を挙げ、低レバレッジへのコミットメントが債券保有者にとっての安心材料になっていると述べた。同社は現在、衛星データ・航空宇宙防衛事業から「空のハイパースケーラー」への転換を進めている段階にあるという。
2. Micron×Anthropicの戦略提携
AI関連では、MicronとAnthropicの提携も大きな話題となった。両社はメモリー・ストレージのAI向けアーキテクチャで協業し、Micronは、Anthropicの資金調達ラウンドにも出資したという。Bloomberg Intelligenceのアナリストは、この提携が「AIデータセンター向け顧客が長期契約で供給を確保する動き」を象徴していると指摘する。
Micron株は提携発表を受けて前日比4.4%上昇し、3月30日の安値から260%超の上昇、年初来では300%を超える上昇となっている。なお同社は今週水曜に決算発表を控えており、市場の関心はそちらにも向いている。
2-1. 直接契約という異例の構図
通常、メモリーメーカーがフロンティアラボ(最先端AI研究企業)と直接契約を結ぶのは一般的ではないとされる。Bloomberg Intelligenceのアナリストは「ハイパースケーラーがこうした保証を求める動きは以前からあったが、メモリー企業側がこうした契約を結ぶのは典型的ではない」とし、需要の可視化と将来の生産能力計画への活用が狙いだと分析している。
3. Microsoft×Chevron、西テキサスに大型データセンター電源
電力面では、Microsoftが、Chevronと20年契約を結び、西テキサス・パーミアン盆地に大規模な天然ガス発電設備を建設する計画(通称「Project Kilby」)が報じられた。出力は最終的に2.6~2.7ギガワット規模に達する見通しで、2028年の稼働開始を目指しているという。
Bloomberg Newsの記者は、パーミアン盆地が原油生産に伴う天然ガスが豊富で、パイプライン容量を超える分は燃焼処分されることもあると説明。「ChevronとMicrosoftは、この安価な天然ガスを活用しようとしている」と述べた。Microsoftは、自社のデータセンター容量を今後2年で倍増させる方針とされ、再生可能エネルギーと天然ガス、将来的には原子力も組み合わせる「多様化戦略」を取っているという。
4. SpaceXとReflection AIのコンピュート契約
同日には、SpaceXが、AI企業Reflection AIと36億ドル規模の契約を結んだとの報道もあった。契約条件として、SpaceX側は、3カ月後に契約を終了できる一方、Reflection AIは、コンピュート利用の対価として月額1.5億ドルを支払うとされている。ただし、この発表自体はSpaceX株の続落を止める材料にはならず、IPO後3営業日連続の下落となったという。
5. AI推論市場の拡大 ― Baseten
AI推論(インファレンス)分野でも資金調達の動きがあった。AI推論スタートアップのBasetenは、15億ドルを調達し、バリュエーションは110億~130億ドル規模になったという。共同創業者でCEOのTuhin Srivastava氏は、オープンソースモデルの性能向上とタスク特化の学習技術の進展により、推論需要が拡大していると説明。調達資金は「コンピュートの確保とインフラ・研究エンジニアの採用」に充てるとした。
共同リード投資家であるAltimeterのApoorv Agrawal氏は、推論市場について「AIの中でも最大級の市場になるだけでなく、世界全体で見ても最大級の市場になる」との見方を示し、フロンティアモデルを使う企業群とは別に、「全推論需要の99%を生み出す35社程度を除く、残りの企業群」がオープンソースモデルの活用先になっていると分析した。
6. その他の注目ニュース
その他にも、Metaがインドのフィンテック企業CREDに出資し、その創業者をWhatsAppの新グローバル統括責任者に起用する人事が報じられた。広告・サブスクリプション・ビジネスメッセージングなど複数の収益源拡大が狙いとされる。
また、中国では、CATLによる大型リチウム鉱山の提訴観測を背景にリチウム先物が2日間で9%近く下落。
Appleでは、工業デザイン部門の改革が報じられ、20年ぶりとなる大幅刷新として折りたたみ式iPhoneの投入が示唆されている。
資金調達面では、Robinhoodが転換社債で20億ドルの調達を計画し、その一部を株式買い戻しに充てる方針であることや、Lime社が1.81億ドル規模のIPOを準備していることも報じられた。

