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$1,190億のチップ工場とAnthropicへのデータセンター売却——SpaceX×xAIが描く「マスク版ネオクラウド」の全貌

マスクのSpaceX/xAIが同じ週に2つの重大な動きを見せた。一つは、テキサス州に最大$1,190億を投じる自社チップ製造工場「Terafab」の計画が明らかになったこと。もう一つは、xAIのコロッサス1データセンター(300MW)の全コンピュート容量をAnthropicに売却するという「サプライズ提携」だ。

この2つを組み合わせると、xAIが単なるAIモデル会社ではなく、「コンピュートを生産・販売するネオクラウド」へと方向転換しつつあるという仮説が浮かび上がる。SpaceX IPOが6月に予定される中、この構造変化をどう読むかが投資家にとっての核心だ。


1. Terafab——$1,190億の自社チップ製造工場


1-1. 計画の概要

テキサス州グライムズ郡の郡ウェブサイトに掲載された提案書によると、SpaceXは、同地に「多フェーズ・次世代・垂直統合型の半導体製造および先端コンピューティング製造施設」を建設する計画を示した。初期フェーズで$550億、最終的には$1,190億に達する可能性があるという規模だ。

「Terafab」と命名されたこの施設は、AIサーバー・衛星・SpaceXが構想する宇宙データセンター・自律型Teslaビークル・ロボット向けのチップを製造することを目指している。

1-2. なぜ自分でチップを作るのか

マスクは、「我々はTerafabを建設するか、チップを持たないかのどちらかだ。チップが必要だから、Terafabを作る」と述べた。この言葉の背景にあるのは、NVIDIAをはじめとする外部チップサプライヤーへの依存からの脱却だ。

AIと自律型ロボティクスの両方を追求するマスクの会社群にとって、NVIDIAの生産能力では「間に合わない」という計算がある。Teslaがバッテリーをパナソニックに頼らず自社製造する「ギガファクトリー戦略」と同じ発想をチップに適用しようとしている。

1-3. Intel・Tesla・SpaceXの三角形

TerafabにはIntelが参画することも既報だ。IntelはIDM 2.0(ファウンドリービジネス)戦略の一環として、TSMCとは異なる顧客層の開拓を急いでいる。マスクのエコシステムという巨大な需要をIntelが製造側で担う構図は、両者にとって意味がある。

ただしマスクは「グライムズ郡はいくつかの候補地の一つに過ぎない」とも述べており、最終決定にはまだ時間がかかる可能性がある。

2. Anthropicへのコロッサス1売却——xAIはネオクラウドか


2-1. 何が起きたのか

xAIとAnthropicが、「サプライズ提携」を発表した。AnthropicがxAIのコロッサス1データセンター(300MW相当)のコンピュート容量を全て買い取るという内容だ。この取引により、Anthropicは即座に利用制限を引き上げることが可能になった。

xAI側の説明はシンプルだ。「コロッサス2という新しいデータセンターにトレーニングを移行済みで、コロッサス1を使い切る必要がなくなった」というものだ。未使用のコンピュートを競合他社に売るという、大手テック企業としては異例の判断だ。

2-2. 「選ばなかった道」を選んだという意味

この判断が際立つのは、他の大手テック企業との対比だ。

Googleのサンダー・ピチャイは、決算コールで「Googleクラウドの収益はキャパシティ制約のため本来より低かった」と認めた。そして、GPUをレンタルするか自社AI開発に使うかを選ぶ状況で、Googleは「自社AI開発」を選んだ。

Metaは、より極端な対応を取り、GPU不足を解消するためにまったく新しいクラウドインフラ(Meta Compute)を構築した。「このインフラの構築に向けた設計・投資・パートナーシップが戦略的優位になる」とZuckerbergは述べた。

「戦略的」という言葉が示すのは、コンピュートパワーは今日のAI需要を満たすだけでなく、明日のプロダクトを作るための資源でもあるという考え方だ。 GoogleもMetaも、そのコンピュートをライバルに売ることはしない。

xAIはその選択を逆に行った。

2-3. ネオクラウドとしての位置づけ

コンピュートを自社プロダクト開発に温存するのではなく、Anthropicに売ることで収益化する——この動きは、xAIを「ネオクラウド(NVIDIAからGPUを買って顧客に貸し出すビジネス)」として位置づけることを意味する。

現在活発なネオクラウドのバリュエーションを見ると、類似規模のコンピュートパワーを持つCoreWeaveの時価総額は$700億未満だ。xAIの1月時点の評価額は$2,300億——CoreWeaveの3倍以上だ。ネオクラウドとしての経済性は「チップ供給側(NVIDIA)と需要の変動サイクルに挟まれた難しいビジネス」であり、現在のxAIの評価にはまだその厳しさが完全に織り込まれていない可能性がある。

2-4. GrokとAnthropicの関係という皮肉

もう一つの文脈がある。Grokの利用者数は、2026年に入ってから低迷しているという報道がある。コロッサス1を動かし続けるためのGrok利用が不足している状態で、AnthropicというAIモデルの競合相手がそのコンピュートを使って利用者を獲得するという皮肉な構図だ。

短期的にはxAIのバランスシートに多大なプラスをもたらすが、長期的には「コンピュートをライバルに提供しながら自社モデルを成長させる」という二律背反を抱える。

3. 宇宙データセンターという「第三の軸」


SpaceXとxAIの合算エンティティが構想する宇宙データセンターは、TerafabやAnthropicへのコンピュート売却と同じ文脈で理解できる。

宇宙データセンターは、2035年頃の実現を目標とするとされるが、地上データセンターと「上空のデータセンター」を組み合わせることで、エネルギー・冷却・物理インフラのコスト構造を変えようとする野心的な計画だ。Anthropicへのコロッサス売却が「宇宙データセンターが実際に機能するかもしれない」という投資家の信頼を高める材料になるという分析もある——地上でのコンピュート販売実績が宇宙版の先例になるからだ。

4. SpaceX IPOという変数——バリュエーションにどう影響するか


4-1. $1.75兆というIPO評価額の根拠

SpaceXのIPO評価額は最大$1.75兆と報じられている。この数字にはxAIとの合併後の価値が含まれる。

Terafab($1,190億規模の投資計画)・コロッサス(地上データセンター)・軌道上データセンター計画・Anthropicとのパートナーシップというコンポーネントをどのように評価するかが、IPO時の最大の議論になる。

4-2. ネオクラウドとモデル会社のどちらで評価するか

市場がxAIを「AIモデル会社(OpenAI類似)」として評価するなら、高いマルチプルが正当化されうる。しかしAnthropicへのコンピュート売却が「ネオクラウドへの転換」として読まれるなら、CoreWeaveのような評価軸が適用されることになる。

この二つの評価フレームのどちらが採用されるかで、最終的なIPO評価は大きく変わる可能性がある。

4-3. 失われつつある「ソフトウェアの野心」

2月の全社集会でxAIはコーディング(Cursorとのパートナーシップも示唆)やデジタルツイン(「Macrohard」プロジェクト)など、長期的なソフトウェア野心を示していた。しかし、大量のコンピュートを競合他社に売り続ける限り、これらの長期プロジェクトのための資源が確保できるかという問いが残る。

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