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2026.07.14 注目の海外スタートアップの資金調達4選

2026年7月14日、AIを軸にした4つのスタートアップがそれぞれ大型の資金調達や新規事業の発表を行った。分野は創薬、建設ロボティクス、防空システム、そして、企業向け銀行サービスと多岐にわたるが、共通するのは、「AIモデルの実用化フェーズへの移行」という潮流である。本稿では、Chai Discovery、TerraFirma、Singularity、Flexの4社について、それぞれの調達内容と背景を整理し、投資家やビジネスパーソンが押さえておくべきポイントを解説する。


1. Chai Discovery:創薬AIで評価額3,800億円規模に


創薬向けAIモデルを開発するChai Discoveryは、Index Venturesが主導し、Kleiner Perkins、Sequoia Capital、Dimensionなどが参加する400億円規模のSeries C調達を発表した。この結果、同社の評価額は約3,800億円(38億ドル)に達している。

1-1. Eli LillyやPfizerとの実用化事例

同社は分子同士の相互作用を予測・再設計するAIモデルを構築し、Eli LillyやPfizerといった大手製薬会社に実装している。CEOのJoshua Meier氏は、「AI創薬は約束の段階から実装の段階へ移行した」とコメントしており、既に「創薬が困難」とされてきたターゲットへの応用が進んでいることを強調した。

最新モデル「Chai-3」は、前モデル比でターゲット成功率と結合親和性を改善しているという。前モデル「Chai-2」は、2025年に、ゼロショットでの完全新規抗体設計として初めて二桁台の実験的成功率を達成したモデルとされている。

1-2. 投資家の評価

Sequoia CapitalのパートナーPat Grady氏は、「創薬は科学における最も困難な課題の一つで、長年AIが解決するという夢があった」とした上で、同社の実際の提携実績がその夢を現実に近づけつつあると評価した。Dimensionの創業者Zavain Dar氏も、同社にとって過去最大の投資額であると明かしており、投資家側の期待の高さがうかがえる。

2. TerraFirma:建設現場のロボット化を目指す元SpaceXエンジニアの挑戦


建設テック企業のTerraFirmaは、Kleiner Perkins主導の約115億円(1億1,500万ドル)の資金調達を発表した。このうち1億ドルはSeries Aで、Bain Capital Ventures、Glade Brook Capital Partnersなどが参加している。

2-1. 半自律型の建機とXboxコントローラー

TerraFirmaは、2024年、元SpaceXエンジニアのNoah Schochet氏とNoah McGuinness氏によって設立された。同社のプラットフォームは、AIによる事前設計ソフトウェア、遠隔操作の管制センター、そして、半自律化した重機(掘削機、ブルドーザーなど)を組み合わせたものだ。オペレーターは、現場のキャブではなく画面上から機体を操作する仕組みで、Xboxコントローラーのようなインターフェースを用いる例も報じられている。

同社によれば、この仕組みにより1人のオペレーターの生産性は最大300%向上するとされる。背景には、「1965年以降、米国の建設業の労働生産性は年平均0.6%低下している一方、経済全体では年1.6%程度成長してきた」という同社が引用するデータがあり、建設業の生産性の遅れをAIとロボティクスで補う狙いがある。

2-2. 「月・火星への展開」という長期ビジョン

同社は、米政府と国際インフラ・物流プロジェクトでも協業しているとされ、将来的には、月や火星での建設への応用も視野に入れているという。CEOのSchochet氏は、「インフラは今後数十年、あらゆる産業がイノベーションを進める上でのボトルネックになっている」と述べている。

3. Singularity:低コスト防空システムに挑む新興防衛テック


防衛テック分野では、Singularityが、ステルスから始動し、Khosla VenturesとFelicisが主導する80億円(8,000万ドル)規模のSeries Aを発表した。評価額は約400億円(4億ドル)とされる。

3-1. ドローン脅威への対応という切迫した課題

同社は、SpaceX、Tesla、Anduril出身のエンジニアに加え、実際に防空システムを運用してきたオペレーターによって設立された。CEOのJack Oswald氏は、「低コスト兵器による回避可能な犠牲者の規模は胸が締め付けられるものだ」と述べ、ウクライナでの経験がプロジェクトの原動力になっていると説明する。

同社は、低コストの脅威に対して迎撃コストが上回るという非対称性を課題視しており、量産体制の構築にTeslaやToyota出身の製造チームを起用している点が特徴だ。

4. Flex:半年で評価額2倍、中堅企業向けAI銀行の急成長


AIネイティブな銀行サービスを展開するFlexは、Halo Fund(Ryan Smith氏・Ryan Sweeney氏が共同設立)が主導する70億円(7,000万ドル)規模のSeries B1を発表した。関係者によれば評価額は約1,200億円(12億ドル)で、半年前の水準から倍増したという。

4-1. 「見過ごされてきた中堅企業層」という戦略

CEOのZaid Rahman氏は、年間数千万〜数億円規模の売上を持ちながら伝統的なフィンテックからは見過ごされがちな中堅企業オーナー層をターゲットに据えていると説明する。同氏は、「米国だけで35万〜40万人の事業主が国内給与の40%を管理している」と述べ、この層に向けた金融サービスの空白を埋める狙いを示した。

同社は与信、事業金融、個人金融、決済ツールを一つのプラットフォームに統合しており、AIエージェント「Beacon AI」が週次で財務状況を分析する機能も提供する。年間換算の決済取扱高(TPV)は100億ドルを突破し、前年比で約4倍の成長を遂げているという。

4-2. ステーブルコインを活用した国際送金

同日、Flexは「Flex Global」という新サービスも発表した。ステーブルコインを用いることで100カ国以上への送金を数分で完了させ、32通貨での資金保有を可能にするというものだ。フィンテック業界では近年、BrexがCapital Oneに買収されるなど評価額の調整局面も見られる中、Flexの急成長は業界内でも注目されている。

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