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イーロン・マスク氏「AIは5年で人類の知能の総和を超える」― The Economist独占インタビュー

イーロン・マスク氏が、The Economistのインタビューに応じ、AIの将来予測から企業統治、欧州政治まで幅広いテーマについて語った。同氏の発言に対し、インタビュアーも随所で反論・検証を試みる、緊張感のあるやり取りとなった。


1. 「10年後、AIは人類の知能の総和より遥かに大きくなる」


マスク氏は、2036年の世界について問われ、「AIが人類の知能の総和を圧倒的に上回らない未来は想像しにくい」と述べた。同氏は具体的な時期として、AIが人類の知能の総和を超えるのは「およそ5年後」になるとの見通しを示し、人間であることを除けば、AIが人間より優れていないことはほぼなくなるだろうと述べた。

より日常的なレベルでの未来像については、「驚異的な豊かさの時代」になり、誰もが思いつくものを何でも手に入れられるようになると予測した。同氏はこれを、世界大戦のような破局的な事態が起きない限り実現するだろうとし、10年後の2036年に答え合わせをしようと述べている。

2. 「2036年にはお金は重要でなくなる」


企業の収益源について問われたマスク氏は、経済を「デジタル知能」と「物理的知能」の組み合わせとして捉える見方を示した。デジタル知能は急速に進化しているが、まだ物理世界に働きかける「エフェクター(作用装置)」を持たないため、そこには人型ロボットが大量に必要になるという。ロボットと大量のデジタル知能が組み合わさることで、「準無限の経済」が実現するとし、「2036年にはお金は重要でなくなる」という大胆な予測を披露した。

インタビュアーがこの見方に懐疑的な反応を示すと、マスク氏は、財やサービスが人間の消費能力を超えるほど豊富に供給されるようになれば、お金そのものが不要になると説明した。労働については、庭いじりに例え、「スーパーで完璧な野菜を買うこともできるし、自分の庭で不完全ながら育てることもできる」とし、将来の労働は、こうした「任意で行う趣味的なもの」になっていくとの見通しを示している。

3. AI企業間の週次協議を提案


AIの安全性を巡る取り組みについて、マスク氏はGoogle DeepMindのデミス・ハサビス氏が提案した官民規制機関の構想に言及しつつ、自身がハサビス氏に助言した内容として、主要AI企業が数週間おきに集まり、安全性・セキュリティに関する懸念を協議する場を設けることを挙げた。特に、既存のものより遥かに高性能な新しいフロンティアモデルが公開される前に、競合各社がそのモデルを試験し、有害な影響がないか確認し、必要であれば公開の一時停止を提言できる仕組みが望ましいとした。

同氏はこの仕組みが機能する理由について、政府関係者が技術的な深い理解なしにモデルの公開可否を判断するのは難しい一方、競合企業同士であれば、互いに誠実であり続けるインセンティブが働くと説明した。これは映画のレーティングを業界団体が決定する米国のMPA(全米映画協会)のような仕組みに近いとの例えも示している。

4. 「中国はいずれAIのリーダーになる可能性が高い」


中国のAIモデル、特にKimi K3の躍進について問われたマスク氏は、現時点では、Anthropicの「Fable」が、依然として最も賢いモデルだとしつつも、Kimiはそれにかなり近づいていると評価した。同氏は、中国のAI企業が比較的少ない計算資源でここまでの成果を上げている点を踏まえ、もし潤沢な計算資源を持てば中国がリーダーになる可能性が十分あり、いずれそうなるだろうとの見方を示した。

その根拠として、AIの制約要因が電力とAIチップにあるとし、中国は、既に米国・欧州・インドの合計を上回る電力生産量を持ち、将来的には、米国の4倍規模に達する可能性があると指摘した。米国政府が最先端AIチップの対中輸出を禁止している影響で中国はチップ不足に直面している一方、限られたチップをより効率的に活用する技術力を高めており、リソグラフィー(半導体露光装置)の技術的課題の解決にも、多くの人が思っているより近づいているとの見方を語っている。

5. Anthropicの「Mythos」規制を巡って ― 政府介入の前例


AI規制のあり方について、マスク氏は、主要AI企業のいずれかが新しいモデルを「危険」と判断し、その開発企業が対策を取っていない場合には政府に通報すべきだとの考えを示した。この文脈で言及されたのが、Anthropicのモデル「Mythos」を巡る事例だ。同氏によれば、政府内の誰かがサイバーセキュリティ上のリスクを見つけたわけではなく、Amazonが、これを指摘し、ホワイトハウスに連絡したことがきっかけだったと説明されている。マスク氏は、こうした「企業同士が互いをチェックし、深刻な懸念があれば政府に伝える」という枠組みが、実際に機能した先例だとの見方を示した。

6. サム・アルトマン氏、ダリオ・アモデイ氏への評価


AI業界のリーダー間の対立についても率直な発言があった。マスク氏は、サム・アルトマン氏について「ファンではない」と述べ、非営利のオープンソースAI企業として設立したはずの組織が、8000億ドル規模のクローズドソース営利企業に姿を変えたことへの不満を、正当な懸念だと自認した。一方で、Anthropicのダリオ・アモデイ氏については、「非常に信念のある人物で、世界の未来を深く気にかけている」と評価し、同社で会った人々は皆、善意を持っているように見えたと述べている。

7. 労働の未来 ― 「10年で仕事のほとんどをAIがこなせるようになる」


雇用への影響について、マスク氏は、「多少の混乱は避けられないだろう」としつつ、AIはいずれあらゆる仕事において人間より優れた成果を出せるようになると述べた。ソフトウェアエンジニアリングについては、既にAIがプロのソフトウェアエンジニアの少なくとも90%より優れたコードを書けるようになっているとし、いずれチェスプログラム「Stockfish」が、どんな人間にも勝てるのと同様の水準(いわゆる「Stockfishレベル」)に達するとの見通しを示した。

これに対し、インタビュアーは、雇用を失う人々がどう生計を立てるのか、実質的にベーシックインカムのような仕組みが必要になるのではないかと尋ねた。マスク氏は、「財務省が単純に小切手を発行すればいい」と述べ、財やサービスの生産量が貨幣供給量を上回るペースで増加すれば、インフレではなく、デフレが課題になるとの独自の経済観を語った。インタビュアーは、これに一定の理解を示しつつも、現在の分極化した政治状況から、この理想像に至る具体的な道筋への疑問を重ねて投げかけた。

8. 一人の人物への権力集中を巡る問答


マスク氏個人が自社に対して持つ支配的な議決権についても議論があった。インタビュアーは、IPO後のSpaceXにおいて同氏が約8割の議決権を持ち、自身がコントロールする株式によってしか解任されない立場にある点を指摘した。マスク氏はこれについて、四半期ごとの業績を重視する公開企業特有の圧力を避け、5〜10年、あるいはそれ以上の時間軸での投資判断を可能にするためだと説明し、月面基地や火星基地への投資のように、短期的には収益を圧迫するが長期的には高いリターンをもたらすはずの取り組みを進める上で必要だとの考えを示した。

「キーマンリスク」について問われた同氏は、自身が明日にでも事故に遭ったとしても、SpaceXやTeslaは、今後数年間は問題なく機能するはずだとしつつ、スティーブ・ジョブズ氏亡き後のAppleを引き合いに出し、優れた戦略的ビジョンを持つ創業者を失うと、画期的な新製品を生み出す力が失われる可能性があるとも述べている。

9. Starlinkとウクライナ ― 「私は戦争の最終的な結果を決めているわけではない」


Starlinkが持つ地政学的な影響力についても踏み込んだやり取りがあった。マスク氏は、ロシアが占領地域でStarlink端末を(ウクライナ経由で発注し密輸する形で)不正利用していた問題に対応するため、ウクライナ政府と協力して承認済み端末の「ホワイトリスト」を作成したと説明した。この措置には、業務や教育目的で正当にインターネットにアクセスしていた一般利用者もStarlinkを使えなくなるという副作用があったことも認めている。

戦争の行方に影響を与えるほどの力を持つことについてどう感じるか問われたマスク氏は、「自分たちが戦争の最終的な結果を決めているとは思わない」としつつ、2〜3年にわたり前線がほとんど動いていない現状を踏まえ、早期の和平合意を望む立場を示した。同氏は、ロシアが完全に撤退するという想定は非現実的だとし、双方に犠牲者が出続ける現状について、豪華な会食をしながらロシアの撤退を求める外交官たちへの不満も述べている。

10. DOGE(政府効率化省)への関与 ― 「少し政治に関わりすぎた」


トランプ政権下でのDOGEでの活動について、マスク氏は、「少し政治に関わりすぎた、正直に言えば夢中になりすぎた」と振り返った。同氏は、米国の財政赤字の規模(国防・情報機関予算の合計より利払い費の方が大きい状況)に対処する必要があったとの立場を説明しつつ、DOGEチームが実際に行っていた審査は、資金の使途を示す簡単な証拠を求める程度のシンプルなものだったと述べた。

インタビュアーは、USAID予算の急激な削減が、アフリカなどで実際に人命に関わる被害をもたらした可能性があるのではないかと問いただした。マスク氏は、これを明確に否定し、援助を担っていた非政府組織(NGO)は数万に上り、Gates財団など数百億ドル規模の資金力を持つ財団が代わりに支援できたはずだと反論した。インタビュアーは、USAIDが多くの国で最大の資金提供者だった実態を踏まえ、削減の規模とスピードが不必要な苦しみや死をもたらした可能性は否定できないとの見解を示し、両者の意見は最後まで一致しなかった。

11. 欧州政治を巡る鋭い応酬 ― 「英国内戦は不可避」発言


インタビューで最も緊張感のあるやり取りとなったのが、欧州、特に、英国の移民・治安政策を巡る議論だ。マスク氏は、自身がSNS上で頻繁に発信している内容について、「極右」ではなく「普通の人々」を支持しているだけだと主張し、安全な国境・治安の良い都市・賢明な財政支出という3つの原則のどこが極端なのかと問いかけた。

インタビュアーは、これに対し、マスク氏が支持する政党の中には、単に国境管理や統合の改善を求めるだけでなく、明確なファシズム的傾向を持つ人物も含まれているとし、同氏が持つ2億数千万人のフォロワーという影響力を踏まえれば、その支持表明が欧州の分断をむしろ悪化させるリスクがあると指摘した。マスク氏の「現在の傾向が続けば英国の内戦は不可避だ」という過去の発言についても、インタビュアーは、英国の犯罪統計は実際には減少傾向にあり、ロンドンは米国の多くの都市より安全だとするデータを示して反論した。マスク氏は、直近数年間で英国を訪れていない中での発言だと指摘され、「実際には何度も訪れている」と応じつつ、双方は最終的に、少なくとも「国境管理の重要性」自体には同意する形で議論を収めている。

なお、この論点についてマスク氏とインタビュアーの見解は真っ向から対立しており、犯罪統計の解釈や欧州の移民統合の実態を巡っては、双方が異なるデータや実感に基づいて主張を展開している状態であり、どちらか一方が明確に正しいと断定できるものではない点には留意が必要だ。

12. AIと政治、どちらの予測に自信があるか


インタビューの最後、AIに関する予測と政治に関する予測のどちらに、より高い自信を持っているか問われたマスク氏は、AI・ロボットによる革命は英国の内戦(同氏の見立てではおよそ20年後)より早く、10年以内に実現するだろうとの見通しを示した。同氏は自身の未来予測の的中率について、「完璧ではないが、人間としてはかなり高い打率だ」と自己評価しつつ、自身の予測がしばしば「カサンドラ効果」(正しい警告が信じてもらえない現象)に直面してきたとも述べている。

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