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「コンピュートはGDPだ」——Jensen HuangがMorgan Stanley TMTで語った、AIの次の10年

1998年、NVIDIAは、$4800万のIPOで上場した。時価総額は$3億。Morgan Stanleyのロードショーで投資家から最も多く受けた質問は「いつ倒産するのか」だったという。

27年後、NVIDIAは、直近四半期の純利益だけで$460億を記録した。Jensen HuangはMorgan Stanley TMTカンファレンスの壇上でその軌跡を振り返りながら、AIの現在と今後10年を語った。本稿はその要点を整理する。


1. NVIDIAが「フルスタック」である理由——33年間の蓄積


1-1. ビデオゲームからAIへ、変わらない思想

Huangは、NVIDIAの強みを「フルスタック」という一語で表現する。チップ設計からライブラリ・ソフトウェア統合・顧客への展開支援まで、すべてを自社で完結させる構造だ。

その起点はコンピューターグラフィックスとビデオゲーム産業だ。「NVIDIAがなければ今日のゲームエンジンは存在しない。33年前から私たちはアルゴリズムの会社だった」とHuangは述べた。数億人のGeForceゲーマーがいるが、その一部がCUDAを発見してAI研究者になった——Ilya SutskeverとAlex Krizhevskyが、GeForce GTX 580でCUDAを使い始めたことが、深層学習ブレークスルーの一端を担ったという話は有名だ。

1-2. フルスタックが生む「年次イノベーション」

「スタック全体を所有していなければ、毎年イノベーションすることは不可能だ。CPU・GPU・NVLink・Spectrum Xまでスタック全体を持つから、毎年すべてを変えられる」

競合他社が「猫と犬をつなぎ合わせている」のに対し、NVIDIAは統合された設計で年次更新を実現できるという。

2. AIの3つの変曲点——生成・推論・エージェント


2-1. 第1変曲点:生成AI(ChatGPT)

GPT-3は、数ヶ月間「見えていたのに見えていなかった」状態だった。誰かがAPIラッパーを書いてChatGPTに変えた瞬間、世界が気づいた。しかし、生成AIは「幻覚」という問題を抱えていた——文脈や根拠に基づかない生成をするためだ。

2-2. 第2変曲点:推論AI(O1)

O1の登場で「根拠に基づく生成」が可能になった。自己反省・自己修正の能力が加わり、情報の信頼性が上がった。その結果、トークン生成量は初代の約100倍、モデルサイズは10倍——計算量はおよそ1,000倍に増加した。さらに利用者数の爆増が加わり、需要は数百万倍に達した。

2-3. 第3変曲点:エージェントAI(Open Claw)

「OpenClawは、おそらくこれまでで最も重要なソフトウェアリリースだ」とHuangは述べた。LinuxはこのレベルのDL数に達するのに30年かかったが、OpenClawは、3週間で超えた。史上最多ダウンロードのオープンソースソフトウェアになったという。

プロンプトの性質が変わった。以前は「〜は何か?」「〜はいつか?」という質問型だった。今は「作れ」「やれ」「書け」という行動型だ。「前のプロンプトはクエリだった。今のプロンプトはタスクだ」

NVIDIAの社内では複数のエージェント(Huangは「claws」と呼んだ)がバックグラウンドで常時稼働し、コードを書き・ツールを開発しているという。その結果、社内で必要なコンピュート量は急増した。

3. 「AIファクトリー」という概念——データセンターとの違い


3-1. ファクトリーはトークンを生産する

Huangは、数年前から「データセンター」という呼称に異を唱えてきた。「データを保存するのではなく、トークンを生産する施設はファクトリーだ。工場は儲かる。だからみんな工場を建てたがる」

そして今、コンピュートとトークン生産量・収益の相関は証明された。「今や確実に言える——企業の収益は、コンピュートに直結している。OpenAIが今すぐコンピュートを増やせれば、収益は増える」

3-2. トークン/ワットが競合を10倍上回る

Semi Analysisによる徹底的なベンチマークで、NVIDIAは、「インファレンスキング」と認定された。トークン/秒・トークン/ワット・トークン/ドルのすべてで競合を1オーダー(10倍)上回るという。

「あなたの工場が1ギガワットを持っているとして、トークン/ワットが競合の10倍なら、収益も10倍になる。初めて、ファクトリー内のコンピュータアーキテクチャの選択がCEOレビューを通らなければならない時代になった」

3-3. 制約は追い風

電力・許認可・電気工事士不足といったインフラ制約について、Huangは、「大好きだ」と述べた。「制約がある世界では、最善を選ぶしかない。試しにやってみるために$500億は使えない。収益が翌年に直結するとわかっているから、正しい選択をするしかない」

NVIDIAの強固なバランスシートはサプライチェーン確保のための戦略的資産だという。メモリ・ウェハー・パッケージング・ケーブル——すべてを事前に確保しているため、SatyaからギガワットスケールのAIファクトリー構築を依頼されても「問題ない」と答えられる。

4. OpenAI投資・MSL・フィジカルAI——次の需要の波


4-1. OpenAIへの$300億投資確定

Huangは「$1,000億の投資機会はない」と明言した上で、「$300億でOpenAIへの投資を確定した。彼らはIPOに向かっている。これが上場前に投資できる最後の機会かもしれない」と述べた。

あわせて、OpenAIの計算容量をAzureからOCI・AWSへ拡張していることも明かした。容量不足が収益の制約になっており、供給拡大を急いでいるという。

4-2. MSL——Metaの新たなAIラボ

Metaとは長年の関係があるが、MSL(Meta Superintelligence Lab)は、「ネット新規」の需要だという。「数百万GPUが必要で、それはMetaの従来の需要に上乗せだ」

4-3. フィジカルAIが次の10年を定義する

「2年後、エージェントAIについてはもう普通に使っているから話題にならなくなる。その頃には、物理AIの話をしている」

NVIDIAは、Cosmosを世界最多ダウンロードの物理AIモデルに育てた。自律走行向けAlpamayo・ヒューマノイドロボティクス向けGr00t N2も世界首位のDL数を持つ。デジタルバイオロジー向けLa-Proteinaも展開中だ。

「物理AIの最前線はNVIDIAが定義している。完全オープンで公開しているのは、すべての産業がこの能力を活用できるようにするためだ」

製薬大手Eli Lillyとの共同イノベーションラボ設立も発表した。

まとめ——「コンピュート=収益=GDP」という命題


Huangのメッセージを一言にまとめるとすれば「コンピュートはGDPだ」に尽きる。これは比喩ではなく、すでに検証可能な形で現れている事実だとHuangは述べた。

ソフトウェア産業(現在$2兆規模)のすべてがトークン消費者になり、インターネット企業のCapExはすべてAIに転換可能で、すべての国がAIを必要とする——この構造が成立するなら、需要の天井はまだ遠い。

「どの国も将来、『インテリジェンスはいらない』とは言わない。インテリジェンスが必要なら、コンピュートが必要だ。そしてコンピュートがGDPになる——これは確実だ」

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