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トレーラーハウスマガジン④ 防災備蓄の社会実装化を提案します

2026年1月。

令和6年能登半島地震の被災者の方々へ心よりお見舞い申し上げますと共に 一日も早い復興をお祈り申し上げます。

こんにちは。
スタジオスケッチです。
トレーラーハウスの新たな提案を発信する【トレーラーハウスマガジン】。

今回はトレーラーハウスを使った「防災備蓄の社会実装化」を提案します。

本記事は長文になりますが、お付き合いいただければ幸いです。

公共施設への備蓄 Created by Studio Sketch

防災備蓄としてのトレーラーハウスの役割

近年、日本は自然災害による被害が顕著になってきていると思います。被災後の暮らしを支える住宅事情にも、災害がある度に考えさせられてしまいます。

災害が起こってから住まいを準備をするのではどうしても時間がかかります。住まいの備蓄が必要です。そこで今、社会にストックされているトレーラーハウスの災害時利用が推進されています。

大きな動きとして令和7年6月1日から災害対応車両登録制度(D-TRACE)が始まりました。画期的な制度であると思います。この制度により災害時のトレーラーハウスの供給がより迅速になることでしょう。

災害対応車両登録制度(D-TRACE)

内閣府 災害対応車両登録制度HPより

この制度をより実用的なものにするために、次のステップとしては社会的インフラとして、実際にトレーラーハウスをどのように備蓄してゆくかの指針を打ち立ててゆくことが必要かと思います。

平時にどのような有効利用をしながら有事に被災地のインフラとして役立つ仕組みを有しておくか。平時にはどのような場所にトレーラーハウスをストックして置くことが有事に対して有効なのか。これらの課題に対しての実務的なアプローチが必要です。

そこで、この課題に対して私なりに5つの提案をしてゆきたいと思います。


以下、順に5つの提案について解説をしてゆきます。


5つの提案:①備蓄トレーラーハウスの種類と棲み分け

トレーラーハウスは2つの種類に分けられます。車検無し大型サイズのトレーラーハウスと、車検付き中型サイズのトレーラーハウスです。

車検無し大型サイズのトレーラーハウスはその面積の大きさゆえ、仮設住宅として家族で暮らすことも可能です。ただし備蓄となるとその大きいサイズがために、平時での活用シーンが限られてしまう可能性があります。サイズが大きい分、価格も高くなる傾向もあります。又、有事での急な輸送については車検付き中型サイズのトレーラーハウスの方が迅速に出荷をすることができます。

一方、車検付き中型サイズのトレーラーハウスはトイレ・シャワー・キッチン等の水回り設備を設置すると、残りの空間にはダイニングテーブルとベッド2つまでしか置けず、仮設住宅として中長期的に暮らすには適していないサイズであると言えます。しかし長所として1ナンバーの場合はハウス部分が積載物扱いとなるので、様々な用途変更が可能です。有事の際に間取りや設備を変えることも可能ですので用途に応じた対応ができるでしょう。平時においても様々な用途に対する使い方ができるので、備蓄時の活用範囲も広がります。輸送についても車検付きなので迅速な出荷移動が可能です。

このように車検無し大型サイズのトレーラーハウスと車検付き中型サイズのトレーラーハウスには一長一短があるのです。

大型と中型の比較 Created by Studio Sketch

その上で両者の災害時での使い分けを考えると、車検なし大型サイズのトレーラーハウスは4人家族の世帯でも暮らして行ける空間と設備を備えていますので、主に仮設住宅として役割を担ってもらう。

一方、車検付き中型サイズのトレーラーハウスはサイズ感、価格感、出荷移動の迅速性から、仮設住宅建設までの仮住まいとしての役割を担ってもらう。その他にも、災害基地・職員の方々の休憩室・トイレやシャワーブース・医療処置室等、いち早く現場に求められるインフラに対応できる機能的な備蓄トレーラーハウスとしての役割を担ってもらうのが良いと思います。

次に具体的なトレーラーハウスの備蓄仕様について、宿泊住居用途と多目的用途の2つに分けて考察をしてゆきます。今回は、車検付き中型サイズのトレーラーハウスに絞って解説をしてゆきたいと思います。


5つの提案:②宿泊住居用途の備蓄トレーラーハウス

車検付き中型サイズのトレーラーハウスは平時の利用で定員2人の宿泊施設であるなら使い勝手の良いプランとなりますが、有事に住居使用として家族3人以上で住まう場合には手狭なプランとなります。かといってベッドを4台設置する代わりにトイレとダイニングが無いプランでは、平時での宿泊営業に影響が出ます。

概ね、以下のプランが一般的な宿泊住居用途のトレーラーハウスでしょう。

Created by Studio Sketch
Created by Studio Sketch

平時に特化すると有事では使いにくくなる。有事に特化すると平時での採算性が合わなくなる。どちらかに触れるのではなくバランスの良い提案が必要です。以下、決して画期的な解決策ではありませんが、平時と有事を両立させるいくつかの仕組みを提案してゆきます。

【仕組み①:ロフト】

有事の際に4人世帯が就寝できるよう、平時においてもロフトをつけておくことの提案です。ロフトがあれば有事の際はロフトで子ども2人が寝られるようにできます。もちろんこれは子どもの年齢によりますので、全ての世帯に対しての解決策ではありません。

このロフトは平時では、就寝目的だけでなく大きめの収納使いやワーケーションにおけるワークスペースとして活用することで、宿泊客に対しての付加価値を提供することができます。

ロフトのデスク使いイメージ Created by Studio Sketch
ロフトのベッド使いイメージ Created by Studio Sketch

ロフトをつけることで、平時では宿泊時の付加価値提案となり、有事では2人以上で寝泊まりできる機能を有しておくことができます。

【仕組み②:バリアフリー(床段差無し)】

避難される方は年齢も含めて様々です。そこで床段差無し設計は可能な範囲で対応しておくべきでしょう。とはいえトレーラーハウスの多くはワンフロア設計ですので、段差が気になるところは一般住宅と比べて少ないです。しかしトレーラーハウスだから発生してしまう段差もあります。

それはシャワーブース(浴室)です。トレーラーハウスは基礎が無くシャーシに床を載せるので、配管を横引きにする際に必要なスペースや高さ調整のアジャスターを住宅のように基礎下に配置することができません。そのため床に段差をつけてその中に配管を配置することになってしまうのです。

段差は有りとしつつ、シャワーブース(浴室)の前に手すりつけるなどの対策までが現実的であると思います。手すり取り付けまでは標準化した方が良いと思います。

次に地面からトレーラーハウスの入り口までの高さの問題です。段差を緩和させる方法として低床シャーシがありますが、全ての備蓄トレーラーハウスを低床シャーシにするには、サプライチェーンに問題があります。かといってデッキをスロープにすると、準拠する法律によっては10m以上のスロープが必要になり、配置計画に影響が出てしまいます。現地で施工するので設置までの時間もかかります。

そこで、スロープではなく電動の昇降機の設置が適切であると考えます。昇降機はリースができますので必要な時に適時配置することできるでしょう。

【仕組み③:換気】

トレーラーハウスは建築物ではありませんので、建築基準法に定める換気量計算はされないケースもあるようです。しかし、避難住宅として使用される場合は使用する人数も平時の想定より多い場合もあり、避難生活ゆえに室内で過ごす時間が多くなることも考えられます。トレーラーハウスといえども建築同等の換気性能は備えておきたいものです。更に予算が合えば熱交換型の換気扇にして、平時でも有事でも省エネルギー化を推進できればと思います。

以上、宿泊住居用途の備蓄トレーラーハウスの設計仕様の提案でした。

次に多目的用用途に使用する備蓄トレーラーハウスの設計仕様について提案をしてゆきます。


5つの提案:③多目的用途の備蓄トレーラーハウス

災害時に必要な機能空間は多岐にわたります。職員の方々への事務所や宿泊所、病気や怪我の処置室、トイレ、シャワー、倉庫等。これらの空間に対しては取り回しの良い車検付き中型サイズのトレーラーハウスが、その価値を発揮してくれることでしょう。

実際にこれらの使用用途を前提としたトレーラーハウスは各社から販売されています。今後はそれらのトレーラーハウスを最適に備蓄してゆくアプローチが必要になるかと思います。

同時に技術的に高めてゆかなくてはならない課題もあります。それはトイレと電源です。以下、この2つの課題について解説をしてゆきます。

【課題①:トイレ】

トイレは大変難しい課題です。例えば避難所にトイレ付きのトレーラーハウスを納車しても、上下水道が完備されていないと使用することはできません。そこでいくつかの会社様からは上下水道の不要なバイオマストイレのトレーラーハウスも発売されています。とても画期的な提案であると思いますので普及されてゆくことを願っておりますが、使用回数に限度があることとコストが高くなることの課題が残されています。それゆえ、平時利用でバイオマストイレのトレーラーハウスを備蓄してゆくことは、ハードルが高そうに思えます。

トイレトレーラーハウス Drawing by Gemini

そこで発想を変えてみます。トイレについては避難所に指定している公園や学校などにあらかじめトレーラーハウスや仮設住宅と接続できる上下水道インフラを構築しておく等、トレーラーハウス側ではない土地側でのインフラを整備しておくことが、一つの解決策になるのではないでしょうか。

これは宿泊用途トレーラーハウスに関しても当てはまることだと思います。

【課題②:電源】

次に電源です。有事での電力確保としては蓄電池、発電機、太陽光発電などの機能をトレーラーハウスに組み込むことが考えられます。実際、いくつかの会社様で実証実験が行われているようです。こちらも社会インフラとして開発が進み広く普及することを望んでおります。今後はこれらのインフラを平時ではどのように活用してゆくかが、ポイントになると思います。

蓄電池、発電機、太陽光発電などを搭載したトレーラーハウスを平時で有効活用できるケースとしては、工事現場やイベント会場などでは可能性がありそうです。ただし有事に必要な台数を備蓄できるまでにはゆかないでしょう。

となりますと、上下水道と同じくトレーラーハウスだけでインフラを構築するのではなく、設置する土地とセットでインフラを作り上げて行く方が良いのかもしれません。

例えば太陽光についてはトレーラーハウスの屋根に乗せるのではなく、避難所の土地で別途太陽光パネルを設置して発電を行い、トレーラーハウスにその電力をプラグインする仕組みを作っておくという方法も選択肢の一つではないかと思います。

太陽光パネルからプラグイン Drawing by Gemini

以上、多目的使用に対する備蓄トレーラーハウスの課題とアプローチ案を提案してきました。

次に「今後普及していってほしい未来の仕組み」に対して提案をしてゆきたいと思います。


5つの提案:④有事と平時に価値ある「未来の仕組み」

【未来の仕組み①:ジャッキアップ脱着技術の普及】

車検付き中型サイズのトレーラーハウスの場合、定められた年数毎に車検の更新を受ける必要があります。別の避難所へ移動するために公道を走行する場合も、車検期間内であることが必要です。そこで有事でも平時でも車検が容易に更新できるような仕組みが必要です。

それはシャーシとハウスが現地で脱着できる仕組みです。一部のトレーラーハウス会社様ではすでに展開されています。現地でハウスを油圧ジャッキ等で持ち上げてシャーシを外して、シャーシだけを車検場へ牽引して車検の更新を受けるというものです。

ジャッキの仕組み、持ち上げた時のハウスの剛性、シャーシを外した後のハウスの仮置き方法、等の技術的法的課題はありますが、この技術が広く普及してゆくと有事だけではなく平時においても、車検更新時の手間とコストを削減することができます。

ジャッキアップイメージ Created by Studio Sketch
ジャッキアップイメージ Created by Studio Sketch


【未来の仕組み②:2棟接合技術の普及】

車検付き中型サイズのトレーラーハウスはその機動力と引き換えに、広さの制限があります。それゆえ4人以上での世帯での暮らしは手狭であることは先にお伝えしたとおりです。ただし1台使いではなく2台使いとし現地で接続できれば、複数人の世帯でも暮らすことができます。例えば1台はダイニングと水回りとし、もう一台は寝室やリビングなどの使い方です。

しかし2台を接続する技術は難易度が高いです。それはトレーラーハウスが随時且つ任意に移動できることが条件でありますので、普通に接合してしまうと随時且つ任意に移動することができなくなってしまうからです。

その問題を解決するには接続部が工具使わず簡易に脱着できることが必要です。そして接続部品自体は電車の車両をつなぐ幌のようなものが望ましいです。接続する2台のトレーラーハウスをミリ単位で接続開口部分を合わせることは極めて困難なので、幌のような可動性のある接合部品が必要になるのです。

この技術が業界として共通の仕組みとなり、別のメーカーのトレーラーハウスでも接続できるようになると、有事だけでなく平時においてもトレーラーハウスの可能性がさらに広がると思います。

【未来の仕組み③:脱着式確認申請対応型トレーラーハウス】

トレーラーハウスはシャーシとハウスがセットであることが前提です。しかし有事においてトレーラハウスが備蓄の台数では足りなくなり、新たに追加で作り供給する状況になると、シャーシの供給が間に合わない可能性があります。

そのような時にシャーシとハウスが現場で離脱でき、ハウスを現地に設置して、シャーシを引き返して新しいハウスを載せて再び現地へ向かえたら、有事での貢献度は更に増すことになるでしょう。

同時にシャーシを外したハウスが建築確認申請も取れるようであれば、平時においても多様な使い方が期待できます。

以上、未来の仕組みとして普及していって欲しい技術を提案してみました。

いよいよ最後の提案になります。

最後は備蓄トレーラーハウスを平時にどのような場所にストックしておくべきか、どのような用途で平時に活用すべきか、についての提案をしてゆきます。


5つの提案:⑤平時のストック要件についての提案

備蓄トレーラーハウスを被災地へ展開する場合、最大の強みは可動性とスピードです。その最大の強みを活かすためには、常時適切にストックされていることが必要になります。

平時において、誰がどの場所でストックするのか、どのような使い方をするのか、が問題になると思います。平時では活用されず、トレーラーハウスが負債になってしまうようでは、元も子もありません。

そこで提案したいのは全国の道の駅、全国のサービスエリアとパーキングエリア、そして自治体への設置です。

2024年のデータですが全国の道の駅は1230駅、サービスエリアとパーキングエリアは887箇所、全国の市の数は794箇所、合計すると2911箇所です。この場所へ仮に1台備蓄をして有事での稼働率を50%とすると1455.5台です。これだけの台数が災害時に全国から被災地へ向かうことができれば、被災地支援の仕組みが大きく変わるのではないでしょうか。

しかし、これらの拠点にトレーラーハウスを備蓄できたとしても、平時に有効に使われないようでは、備蓄インフラにはなり得ません。これらの地にストックしたトレーラーハウスをどのように稼働させていくかの方策が、必要になります。

以下、その提案をしてゆきます。

はじめに道の駅とサービスエリア・パーキングエリアでの使い方です。

道の駅のトレーラーハウス Drawing by Gemini
サービスエリアのトレーラーハウス Drawing by Gemini

ここには宿泊施設を主に設置します。ただし観光目的ではありません。長距離ドライバーへの就労環境改善としての宿泊施設を道の駅やサービスエリア・パーキングエリアに設置してみてはいかがでしょうか。運送業界の就労時間問題への解決の手助けになると同時に、職場環境改善により運送業界への雇用促進にもつながります。

高速警備隊員のための休憩室も設置できると良いでしょう。その際は、過酷な環境の中での熱中症対策として簡易な医療(AED等)を常設した熱中症対策トレーラーハウスも用意してみてはいかがでしょう。

同時にこの施設は高速道路で事故が発生した際の緊急救護としての役割も果たしてくれるかもしれません。

この宿泊という機能と休憩室(救護室)という機能は、災害対策においても使用できる機能でありますので、平時と有事の利用が可能になります。

次に自治体での使い方です。

市役所の備蓄トレーラーハウス Drawing by Gemini

自治体においては平時も有事も防災基地が必要でしょう。緊急時の電力や通信網などの潜在的な遮断リスクは高いと思います。それらのインフラを積み込んで稼働できる防災基地トレーラーハウスは、各自治体にあるべきだと思います。平時においては、出張行政サービスや防災体験イベント等にも使用できるでしょう。

簡易な医療行為ができるトレーラーもあると良いと思います。平時においてはイベントなどでの緊急医療用車両として使用できます。熱中症対策含めてこのようなインフラトレーラーを平時に備蓄しておくことは、健康で安全な市民生活への支援としても有効です。尚、熱中症対策トレーラーについては以前の記事「熱中症対策トレーラーハウスで次の夏を乗り切ろう」をご覧ください。

もちろん宿泊施設の活用もあります。市や県が運営に関係している観光施設などへの設置です。ホテル型の宿泊施設とは違うお客様のニーズ、例えばペットと旅行したい、焚き火をしながら過ごしたい等のニーズは、トレーラーハウスが満たしてくれることでしょう。その結果、自治体の新たな収益源として稼働してくれることが期待できます。

その他、Iターン移住促進としての使い方もあります。こちらについては以前の記事「Iターン地方移住&トレーラーハウスでまちづくり戦略を」をご覧ください。

日常的な使用では、イベント等での活用が考えられます。祭り、市民イベント等での休憩室や待機室はもちろんのこと、大きな開口部のトレーラーハウスであればライブ演奏などにも使用できます。

市民団体へのレンタルも良いのではないでしょうか。様々な文化活動、例えばヨガや学び直しのセミナー、学校への特別教育、ポップアップショップ等、の使い方があります。

事業面での活用としては、スタートアップ支援としてシェアオフィスやシェアキッチンをトレーラーハウスで提供することで、地元の起業家を支援してゆくこともできるでしょう。設置場所は鉄道会社と共創を行い、高架下のスペースを使うことも良いと思います。

以上のように「平時に有効に活用できるインフラ」としてトレーラーハウスを備蓄しておくことが大切です。そして有事には全国の道の駅・サービスエリア・パーキングエリア・各地の自治体が保有しているトレーラーハウスを適切な用途に沿って搬入支援を行うことができれば、日本の災害支援対策は大きく変わるのではないでしょうか。


備蓄トレーラーハウスを推進してゆくために

以上、長きにわたり防災備蓄としてのトレーラーハウスの活用方法について提案をしてきました。

災害は起きないことに越したことはありません。

しかし起こってしまった場合、これからの日本のことを考えると大工不足は否めません。以前よりも災害仮設住宅や災害基地を現地で用意することは困難になり時間もかかることは、目に見えて明らかです。

被災者の方々へ少しでも早く安心できる生活空間を届けるために、備蓄トレーラーハウスの可能性を、業界全体で高めてゆくことが必要であると思います。

私も微力ながら力になれればと思います。