物語のような日常エッセイ#3 [もしも、冷蔵庫がしゃべったら]── 我が家の守り神は、いちばん静かにすべてを知っている
この家の中で、いちばん静かで、いちばん頼れる存在。
我が家の頼もしい守り神──それが、この冷蔵庫だ。
彼女はいつも、私の大切なデザートたちを特等席で守ってくれている。
「ここは私に任せなさい」
重厚な白い扉の向こうから、そんな威厳のある声が聞こえる気がするのだ。常に私の「ご褒美」のことを最優先で考えてくれている、我が家の神様である。
私は日々、その神の包容力をフル活用している。
スーパーで両手いっぱいに買い出しをしてきては、買ってきた食材をどさどさと庫内へ詰め込んでいく。
「おいおい、またこんなに増やしたのか」
冷蔵庫は少し呆れながらも、大きな身体でちゃんとすべてを受け止めてくれる。
「まあいい、大丈夫だ。全部まとめて、私が完璧に冷やしてやろう」
食材が傷まないように、静かに、確実に、冷気で満たしていくプロフェッショナル。
そんな彼女の中には、あらかじめ「特別扱い」と決められている聖域がある。
──そう、私のデザート専用スペースだ。
「これは、君の一番大事なやつだろう?」
冷蔵庫はちゃんと言葉にせずとも分かっている。
チョコも、プリンも、週末用のちょっといいケーキも。彼女が最高のコンディションを保ってくれるおかげで、いつでも美味しくそこに鎮座している。
けれど私は、時々やらかしてしまう。持ち前の「がさつさ」が顔を出すのだ。
「あ、これも入れちゃえ」
まだ出来立ての、熱い残り物をそのまま神の中へ。
「おい、ちょっと待ちなさい! それはまだ熱すぎるだろう!」
冷蔵庫は一瞬慌てたように、けれどすぐに「ブーン」と少し高めの音を立てて全力の仕事を始める。
「まったく、手がかかるな。……いや、いいから任せておきなさい」
内心でブツブツ文句を言いながらも、結局は庫内の温度を完璧に整えてくれるのだ。なんて過保護な神様だろう。
静まり返った夜、ふとキッチンの暗闇から声が聞こえる気がする。
「今日も一日、よく頑張って食べたな」
「牛乳の補充を忘れるなよ」
「それから……デザートは絶対に切らすんじゃないぞ」
扉を開けて冷たいお茶を取り出しながら、私は思わず一人でクスッと笑ってしまう。
「私の守り神、今日もよろしくね。いつもありがとう」
「礼などいらん。その代わり、明日のプリンを買い忘れるなよ」
そんな風に、ちょっと呆れたような、でも優しい返事が返ってくる気がしてならない。
結局、この家の日々の営みは、この神様がどっしりと支えてくれないと回らないのだ。
心地よくて、ちょっとうるさい我が家。
今夜も守り神の静かな寝息(駆動音)を聴きながら、私は安心して眠りにつく。
この家の中で、静かに、でも愛おしくおしゃべりをしているモノたちの物語を、ひとつのマガジンに全部まとめてあります。
家事の合間に、あるいは夜眠る前のひとときに。
いつでもこの扉を叩いて、彼らに会いにきてくださいね。
物語のような日常エッセイ#1[もしも、ソファがしゃべったら]シリーズになっています↓ぜひお楽しみくださいませ😊
物語のような日常エッセイ#2[もしも、電子レンジがしゃべったら]シリーズになっています↓ぜひお楽しみくださいませ😊
