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【あすか編】第2話:それぞれの動機

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作戦初日。

私と睦月は、
容疑者たちの身辺を探り始めた。

朝、誰よりも早く登校してきたのは、
学級委員長の一ノ瀬一華(いちのせ いちか)だ。

彼女は毎朝7時半には下駄箱を通り、
誰もいない教室へと向かう。

「神代さん、おはよう。今日の連絡事項だけど……」

挨拶を交わす一華のノートは、
あの手紙のように美しく、
几帳面な文字が並んでいた。

昼休み、
私は美術部の二階堂美月(にかいどう みつき)の様子を伺う。

彼女はキャンバスに向かい、
激しい色彩で絵を描いていた。

「あ、乙羽くん。今日、動画の背景イラストの相談、乗ってくれるよね?」

美月は私を無視して、
睦月に甘い声を出す。

彼女は睦月に好意を寄せていた。

私を脅かして睦月に頼らせるための狂言。

彼女なら、やりかねない。

図書室へ向かうと、
図書委員の三波詩織(みなみ しおり)がそこにいた。

彼女はいつも本に隠れて男子を遠ざけているが、
私が近づくと、
長い前髪の隙間から熱を帯びた瞳でじっと見つめてくる。

「神代さん……何か、お探し、ですか……?」

彼女の机の上には、
あの手紙に使われていたものによく似た文房具の箱があった。

廊下に出ると、
1年の後輩ギャル、
四葉(よつば)ひなたに突撃された。

「あすか先輩! 今日も超絶可愛いですね!」

ひなたの鞄にはサクラ色の小物が揺れている。

「先輩の靴箱、うちが毎日見守ってますから!」という言葉が妙に耳に残った。

放課後、
人目を避けるようにして、
私は誰もいない旧校舎の図書準備室へと向かった。

鍵をかけると、
本棚の影から睦月が現れる。

「お疲れ様、あすか。怪しまれなかった?」

「うん……でも、みんな何か隠してるみたいで、頭がパンクしそう」

溜息をつく私に、
睦月は優しく微笑み、
すっと距離を詰めてきた。

私を安心させるように、
背中に回された彼の腕。

私たちが学校で「ただのクラスメイト」を演じれば演じるほど、
二人きりになった瞬間の甘い熱量が身体に染みわたっていく。

「怖がらなくていいよ。僕がずっとそばにいるから」

そっと顔を上げると、
眼鏡の奥にある優しい瞳と視線が交わる。

睦月は私の頬に手を添え、
愛おしそうに親指で撫でてきた。

静かな準備室に、
ほんの少しだけ浅い吐息が漏れる。

学校という日常のすぐ隣で、
二人だけの秘密を共有している背徳感。

睦月の指先が私の髪を優しくすくい上げられると、
私は思わず彼の制服の胸元をキュッと掴み返した。

恋人としての甘い温度が、
事件の不安で冷え切っていた私の心をじわじわと温めていく。

睦月は、私の額に自分の額をこてんと押し当てた。

「あすかのプロデューサーとしても、彼氏としても、この謎は僕が絶対に解いてみせる」

少し赤くなったお互いの顔を見合わせて、
私たちは小さく笑い合った。

睦月の部屋に戻り、
私たちはノートを囲んで容疑者整理を始めた。

文字が完璧に一致する一華。

睦月を狙い、私を邪魔に思う美月。

男子を嫌い、私に異常な執着を見せる詩織。

私の行動を監視しているひなた。

「4人とも、それぞれに動機があるね」

睦月が眉をひそめる。

その時、
睦月のスマホに1通の通知が届いた。

画面を見た睦月の顔が強張る。

『これ以上探らないで。さもないと、貴方たちの秘密を全部バラす』

匿名からの脅迫メッセージ。

甘い余韻は一瞬で吹き飛び、
私たちはすでに犯人の手のひらの上で踊らされているのだと突きつけられた。

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