【あすか編】第3話:開かない心の鍵
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犯人からの脅迫メッセージを受け取り、
私たちの捜索は一気に緊迫した。
私と睦月の本当の関係……
二人きりの秘密の恋、
そしてVtuberとしてのプロデュース関係。
それが誰かに暴かれたら、
私の「完璧な優等生」としての日常も、
彼の「プロデューサー」としての立場も崩壊してしまう。
「みんなを集めて、揺さぶりをかけよう」
睦月の提案で、
放課後、私たちは誰もいない補習室に容疑者4人を呼び出した。
♢
夕暮れの赤い光が差し込む教室に、
奇妙な沈黙が流れる。
「急に集めてどうしたの? 委員会があるんだけど」
一華が不機嫌そうに手元の上質なシャープペンシルを弄る。
「私は乙羽くんに呼ばれたから来ただけー」
美月は爪を弄りながら、
睦月に熱い視線を送る。
「あの、私……早く帰りたいです……」
詩織は本を胸に抱え、
怯えたように視線を落とす。
「まあまあ先輩方! あすか先輩が呼んでくれたんだから話聞きましょ!」
ひなただけが、
場違いな笑顔を浮かべていた。
睦月が一歩前に出る。
「あすかの下駄箱に入っていた『匿名の手紙』について聞きたいんだ。サクラ色の封筒に、銀色の星型シールが貼られた手紙のことだよ」
その瞬間、
四人の空気が一変した。
一華の眉が跳ね上がり、
美月の指が止まる。
詩織が息を呑み、
ひなたの笑顔がピキリと固まった。
「私には関係ないわ」
「自業自得じゃない?」
「何も知りません」
「うちが許さないし!」
全員が否定した。
だが、
睦月が「手紙」と言っただけで全員が「ラブレター」だと理解していた。
誰かが……あるいは全員が、
最初から手紙の存在を知っていたのだ。
♢
不気味な空気のまま解散となり、
私たちはそのまま補習室に残り、
カギをかけた。
緊張と恐怖で私の脚はガクガクと震えていた。
「あすか、大丈夫?」
睦月が優しく抱き寄せてくれる。
その途端、
溢れ出そうだった涙がポロポロと零れ落ちた。
「怖いよ、睦月……。誰かに見られてるみたいで、頭がおかしくなりそう……」
睦月は、優しく私の体を引き寄せた。
恐怖で冷え切っていた身体に、
彼のぬくもりがじわじわと染み込んでいく。
私の腕は自然と彼の首に巻きついていた。
夕闇が迫る誰もいない教室。
彼にぎゅっと強く抱きしめられるたびに、
不安で張り詰めていた心がゆっくりと解けていく。
私の耳元で、
睦月が愛おしそうに囁く。
彼の温かい鼓動が胸に伝わってきて、
私は小さく頷きながら彼の背中にしがみついた。
二人の影が夕日に溶け合う。
彼と私を繋ぐこの甘い絆だけは、
誰にも壊させない。
そう強く心に誓った。
♢
息を整え、
乱れた制服を整えながら、
睦月が机の引き出しから何かを取り出した。
「あすか、これを見て」
彼の手にあったのは、
動画編集で使うマーカーシール――あの手紙と同じ「銀色の星型シール」だった。
「どうして睦月がこれを持ってるの……?」
「さあね。誰かが僕の部屋から盗んだのか。それとも――」
睦月は静かに微笑むだけだった。
窓の外では雨が静かに降り始めている。
一華の嘘か、美月の嫉嫉か、詩織の執着か、ひなたの監視か。
あるいは、
私のすぐ隣にいる、
この愛しいプロデューサーの……。
本当の犯人は、今もサクラ色の闇の中に隠れていた。

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