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12. ひのきのぼうとやくそう【すっとんきょうな出来事 〜精神科に入院した私の記録〜】


※この記録は実体験をもとに書いています。登場人物はすべて仮名とし、個人が特定されないよう、一部の設定や時系列などの細部を変更しています。

おはようございます。
スットンキョウと申します。

私は無課金ユーザー状態で入院したため、最初は私物らしい私物がほとんどありませんでした。

そんな初日の夜。

「メイクを落としたいです。」

そうお願いすると、看護師さんが少し申し訳なさそうな顔で戻ってきました。

「メイク落としはお渡しできないんですけど……。」

そう言って差し出されたのは、

・ニベアのボディミルク
・ニベアの乳液
・ニベアのハンドクリーム

の3点セット。しかも新品です。

「乳液なら……なんとか落とせますかね。」

看護師さんも半信半疑。

私も、

「まあ、なんとかなるか。」

と思い、

「ありがとうございます。」

と受け取りました。

「これはいくらですか?」

と聞くと、看護師さんは少し声をひそめて、

「こちらは大丈夫です。服装とか見た目で、どういう患者さんかは分かるので……。」

と意味深なひと言。

何?

みんな同じ入院患者コスチュームに見えるけど、何か目印でもあるの?

私は瞬時に理論を組み立てます。

「頭はまともなのに、誰かの陰謀によって入院させられた私だから、VIP待遇なんだ。」

(注:入院直後の精神病患者です。)

こうして私は、無課金ユーザーだったにもかかわらず、入院初日にニベア3本セットをゲット。

人生初の支給アイテムです。

さっそく乳液でメイク落としに挑戦。

全然落ちませんでした。



入院してすぐに気付いたのは、

折り紙の重要性。

病棟をよく観察すると、女性はみんな折り紙を持っています。

以前、「通貨はマスクかもしれない」という記事を書きましたが、

あきらかに通貨は折り紙です。

しかも折り紙にはヒエラルキーがあります。

【カースト Level 1】
通常サイズの折り紙

【カースト Level 2】
千羽鶴用の小さい折り紙

【カースト Level 100】
柄付きの折り紙

レベル1と2は院内の売店で買えます。

しかし柄付きは、外出許可をもらうか家族の差し入れでしか手に入りません。

病棟で持っているのは、るるかちゃんとまゆみさんくらい。

いつも同じ席で折り紙を折っている加藤さんは、

「外出許可がまだ出ないから柄付きは買えない。家族の差し入れも無理。柄付きがあれば作品の幅が広がるんだけど……。今持っている2枚はるるかちゃんにもらったものだから、もったいなくて折れない。」

と話していました。

なるほど。

私のミッションのひとつは、外出許可をもらって100円ショップで可愛い柄付き折り紙を買い、加藤さんに届けることなのね。

そう理解しました。



私が入院したのは土曜日。

日曜日は病棟がほぼお休みなので、売店で買い物ができることを知ったのは月曜日でした。

家族がお金を入金してくれていたのです。

(スマホが制限されていて、家族も看護師さんから連絡があるだろうと思っていたらしく、お互い伝わっていませんでした。)

その金額。

15万ペリカ。(1万5000円)

大富豪です。

この世のすべてが買えます。

入金されていれば、看護助手さんが売店で買い物を代行してくれます。

さっそくカタログを開き、購入品を選びました。

・折り紙(大)
・折り紙(小)
・メイク落とし洗顔料
・小さめのリングメモ帳
・鉛筆3本セット

吟味に吟味を重ね、初回はこのラインナップ。

合計1000円弱です。

特に上の3つは必需品。

メイク落としより、折り紙のほうが優先順位は上でした。

メモ帳と鉛筆は、院内で起こるすっとんきょうな出来事を記録し、頭の中を整理するために購入。
これは大正解でした。

こうして私は、

折り紙

という、冒険者に必須の装備を手に入れます。

さっそく加藤さんに報告。

「折り紙、手に入りました!」

ちなみに加藤さんは、病棟でおそらく唯一、

ひまわり

を何も見ずに折れるスキル保有者です。

「良かったら折り紙をお渡しするので、ひまわりを折ってもらえませんか?」

私は、加藤さんが毎日せっせと折っているひまわりがうらやましくなっていました。

でも、自分で折る気はありません。

ところが加藤さんは実直でした。

「いや、それは無理。物をあげたりもらったりは御法度だから。」

「ひまわりの折り方を教えることならできますよ。」

断られてしまいました。

入院3日目にして、私はルール違反をしかけた自分にショックを受けます。

初日にマスクをくれようとしたまゆみさんに、あんなに驚いていたのに。

もう自分も同じ。

順応性が高すぎます。

「そうですよね。物のやり取りは良くないですよね。ありがとうございます。今度、ひまわりを教えてください。」

そうお願いして、私はひまわりを教わることになりました。

こうして私は無課金ユーザーからレベルアップし、

ひのきのぼう(折り紙)とやくそう(ニベア)を装備して、

はじまりの村を旅立つ準備が整ったのでした。

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スットンキョウ わぉ、こんなスットンキョウな私にチップを贈りたいと思ってくれたんですね。その気持ちだけで十分です。すみませんカッコつけました、チップぜひお願いします(土下座)