【饂飩美味紀行】#48 だいまるうどん (福岡市早良区)【隠れた名店】
" 野 菜 天 の 粋、自 家 製 キ ム チ の 剛 毅、こ こ に 極 ま る "
❖ 福岡市早良区の位置
福岡市早良区は、博多湾に面し、自然と都市が調和した風情ある地でござる。
春の訪れとともに、シロウオの踊り食いが名物となり、室見川の川面に網を張りて、獲れたてを楽しむ風流が今も残る。儚き命の舞を口に運び、その鮮烈な味わいを堪能するのは、まさに春の風物詩と申せよう。
また、この地ゆかりの漫画家長谷川町子殿が生み出した『サザエさん』にちなみ、区内にはサザエさん通りなる道が設けられ、作品の世界観を偲ばせる銅像などが点在する。昭和の息吹を今に伝え、老若男女が足を止めては、その愛らしき姿に微笑みを浮かべるもまた一興。
学問の場としては、福岡歯科大学が鎮座し、歯科医を志す若者たちが日々研鑽を積む姿が見られる。されば、甘味を楽しみすぎ、歯に災いが及ぶ前に、ここで診てもらうのも一考かもしれぬ。
また、早良区は食の宝庫としても名高く、数々の名店が軒を連ねる。
ふくちゃんラーメンは、1975年創業の老舗ラーメン店にして、福岡の豚骨文化を支える一角。丼から溢れんばかりの濃厚スープは、新鮮なものと熟成されたものを巧みにブレンドし、深きコクとまろやかさを兼ね備えておる。臭みなき豚骨の旨味が、訪れる者の舌を魅了すること必定。麺は中細のストレートにして、スープとの絡みも良く、もちもちとした食感が心地よい。卓上に並ぶ生ニンニクや紅ショウガ、ニラ辛味和えを加えれば、味わいの変化も楽しめる。特に、クラッシャーで潰した生ニンニクを加えるスタイルは、この店が先駆けとされておる。
鍋を囲みし宴の場としては、もつ鍋の名店、万十屋がござる。昭和十八年創業にして、すき焼き風もつ鍋の発祥の地として知られる。秘伝の甘辛いタレで味付けされたもつ鍋は、新鮮な国産牛の小腸、大腸、心臓、センマイの四種を贅沢に使用し、野菜とともに石鍋で煮込むもの。柔らかきもつの旨味が染み出し、最後の一滴まで堪能するに値する逸品なり。また、建物は世界的建築家・隈研吾氏の設計によるもので、その外観も見どころの一つでござる。
このように、早良区は歴史と文化、美食の粋が交差する地。訪れた折には、ぜひその魅力を存分に味わわれよ。
❖ 店舗外観
❖ 饂飩絵図

❖ 饂飩膳の記録
空腹の狼煙
拙者、旅の途上にて空腹を覚え、かねてより評判高き「だいまるうどん」へと足を向けた。日曜の午後、昼の喧騒を避けたつもりなれど、店外には待ちの列。待つことおよそ二十刻、これほどの人気を誇るとは、只者ならぬ名店と見たり。
「拙者、空腹にて候」
「しばしお待ちを」
待ち時間は武士にとり苦ではない。忍耐こそ、武士道の根幹。しかし、腹の虫は正直なもので、「ぐぅ……」と己の意志に反して鳴き声を上げる。拙者は咳払いをし、気を引き締める。
暖簾をくぐると、そこには温かみある空間が広がっておった。華美な装飾はなくとも、居心地の良さが漂う。そして何より、店の奥には夫婦が立ち働いておる。店主は朗らかに客を迎え、女将は手際よく湯気立つうどんを仕上げている。
「いらっしゃいませ、寒い中ようこそ」
この夫婦の温かき人柄が、店全体を包み込むかのようである。
辛味の戦場
「さて、何を所望すべきか……」
拙者が選びしは、野菜天饂飩わかめ乗せ、ごぼう天饂飩、そしてかしわおにぎり。注文を告げると、店の一角にある壺が目に入った。そこには「激辛自家製キムチ」と書かれており、どうやら自由に取ってよいようである。
「ほう、これは……!」
木の器に適量を盛り、一口食せば、烈しき辛味が舌を打つも、その奥には深き旨味が潜む。まさに辛味と旨味が交わる、剛毅なる一品なり。その刺激に思わず身震いするも、これはまさしく武士の如き心意気を試されるもの。
「お客さん、それは覚悟して食べんといかんですばい」
店主の笑みを含んだ言葉に、拙者もまた背筋を伸ばし、再び箸を進める。
至福の饗宴
しばしキムチを堪能しておれば、いよいよ饂飩が目の前に。
「お待たせ仕った」
「ふむ……誠に美しき佇まい」

うどんは、やや細めながらも、柔らかき弾力を備え、出汁の芳醇なる香りと相まって、口にすれば、まさに博多饂飩の神髄ここにあり。揚げ物は揚げたてにして、衣は見事なるサクサク感。殊に野菜天の大きさは圧巻、かき揚げにも劣らぬ風味と食べ応え。ごぼう天もまた香ばしく、出汁を吸うことで一層の旨味を放つ。

「うむ、これぞ絶品……!」
かしわおにぎりもまた、申し分なし。ふっくらと炊き上げられし飯に、味わい深きかしわが見事に絡み、どこを食せど至福の極み。

饂飩を啜りながら、拙者はふと考える。
「この喉越し、滑らかなること風の如し……。されど、拙者の腕が鈍ったゆえに感じるものか……?」
食の奥深さと自身の未熟を省みるひとときであった。
未練の誓い
気付けば、出汁の一滴すら残さず飲み干し、満足感に浸るばかり。されど、先ほどのキムチがあまりに美味にて、土産として持ち帰らんと試みる。
「すみませぬ、拙者、このキムチを持ち帰りたく……」
すると、店主が申し訳なさそうに首を横に振る。
「申し訳なかとです。今日の分はもう無くなってしもうた」
「むむ、ここまでとは……!」
しかし、店主は続ける。
「次、来るときは、朝のうちに取っときますけん。いつでも待っとるばい」
「うむ、拙者、また参ると決めたり!」
己の未熟さを嘆くも、しかしながら、これしきで挫ける拙者にあらず。次なる折には、看板メニューたる「肉みそ釜たまうどん」を試すと決めたり。そして、今度こそキムチを手に入れん。これ即ち、武士の誓い也。
「待っておれ、キムチ殿……次こそ拙者が手に入れてみせようぞ!」
そう誓い、拙者は再び旅路へと歩を進めるのであった。
❖ 店の評判帳
❖ 詳細な絵図
❖ 自宅にて饂飩を楽しみたき御仁へ(宣伝)


❖ 過去の饂飩絵巻
美味を求む饂飩侍、風の如く歩みし味巡礼の記録なり
❖ 諏訪たけしの饂飩美味紀行全集
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