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【すずたく思考実験】投票③ 低投票率は本当に有権者だけの問題なのか -投票の仕組みを人体に例えてわかったこと

前回の振り返り

すずたくです。

「投票」という概念について考える思考実験シリーズの3回目です。
いったん最終回とする予定です。

前回は、投票率という概念はあくまでも指標に過ぎず、それに一喜一憂したり、数字を追い求めるのは、目的と手段の混同だよね、ということを考えてきました。

今回は、今まで考えてきたことを踏まえて、もう一度「選挙」という制度の全体感を整理して、今の僕たちの置かれている状況を明らかにしたいと思います。


僕たちは一個の細胞である

ここで、選挙というシステムをより分かりやすくするため、僕たちが暮らしている国という単位を、一匹の生物に例えてみたいと思います。

国が生物なら、政権は脳、国境は皮膚、行政は神経系、国民は細胞、国民のまとまりが各器官、課題は病気、みたいな感じで例えられそうじゃないですか?

この生物(国)が生きている世界は、かなりハードな環境です。
外敵も多いですし、環境自体もコロコロ変わる、厄介なところです。

生き抜いていくためには、身体は強くたくましくなければならないですし、環境に合わせて進化していく必要もある、

つまり、そのような生存戦略が、国における「国政」なんです。

身体の各所で起こっていることは、それぞれの当事者でなければ分かりません。最適な進化をするには、それらの声をきちんと聞く必要があります。

投票とは、それぞれの当事者(器官や細胞)が身体全体の生存戦略を評価し、それぞれの状況に応じたフィードバックするための仕組みであると言えるのではないでしょうか。

こう考えると、僕たち一人ひとりの行動が、国という生命体の健康状態に直結するような仕組みになっていることがわかります。


熾烈なフィードバック競争

さらにたとえ話で考えてみましょう。

ある人間のような生物がいるとします。
人間との違いは、状況に応じて迅速に身体を作り変えられる。圧倒的な進化スピードの速さです。

脳は、各器官や細胞からの声(フィードバック)を集めて、生存戦略の方針を決めて、身体を作り変えます。

口からのフィードバックが多かったとします。
口はしゃべるのが仕事ですからね。

「もっと空気をたくさん吸い込めないと困る」「出せられる声が小さすぎて話にならない」「一個じゃ足りない、壊されたらどうする」…などなど。

脳のところに毎日やってきて、次から次へと要望を伝え続けます。

目も口ほどに物を言うので、負けじと要望を伝えます。

ただ唯一、沈黙の臓器といわれる肝臓が、文字通り沈黙を貫いているとしましょう。

資源は有限なので、脳は、肝臓の資源を減らすことにしました。

なぜなら、肝臓が何も言ってこないからです。脳にとって、知らせがないのは良い知らせなのです。

そして、口を四つに増やし、目の数も十個くらいにして機能強化を図った結果、

顔の大半が目と口だけで、目に見えないくらい小さい肝臓を持つ、奇妙な生物になり果てました。

後日、この生物は肝機能障害で緊急入院することになります。

肝臓は、ただフィードバックをしないだけで、とても重要な役割を担っていたわけですね。

いかがでしょうか。

こう考えると、現代の社会の状況って、割とよく理解できないでしょうか。

器官や臓器は、国民のグループであり、年齢や思想、性別や職業などの、さまざまなまとまりです。

この仕組みを利用している以上、国民のさまざまな層が、まんべんなく政権にフィードバックをしないと、バランスが崩れ、国は緩やかな死に向かい始めるのです。

投票は、そのためのインフラなんですね。

だけど、肝臓にも事情がありました。
次はそれを、短編小説風にまとめています。どうぞ。


沈黙の理由

脳は、肝臓を会議室に呼び出した。

彼にこの話をするのは何度目だろうか。もう覚えてすらいない。
肝臓も、うんざりといった表情だ。

しかし、管理職として放置するわけにもいかない。
糠に釘とは、このことを言うのだろう。

「お前さ、もっと体のことを考えて、積極的にフィードバックしろよ、みんなはきちんとできてるんだぞ」

「……」

埒があかない。さすが、沈黙の臓器と言われるだけはある。筋金入りだ。
これはもはや、変えることのできない、確固たる個性なのだろう。

しかし、永遠とも思える沈黙の後、ついに肝臓がその口を開く。

「…では、率直に言わせてもらいますが、僕は仕事を完璧にこなしています。ただでさえきつい業務にもかかわらず、ミスもありません」

「僕にしてみれば、フィードバックに足しげく通うなんて、暇人のやることです。他にやるべきことはいくらでもあります」

「そもそも、フィードバックがないと何もわからないなんて、経営の怠慢なのではないですか?」

正論だ。ぐうの音も出ない。

「時間がもったいないので、これで失礼します」

毅然とした態度で、会議室を出ていく肝臓に対し、脳は何も言うことができなかった。

どれほどの時間が経ったろうか。

パイプ椅子にもたれ、呆然としていた脳は、ようやく重い腰を上げる。

会議室を出てコンビニに向かう。そこで、医者に言われてずっとやめていたタバコを買い、定時後の灯りの消えた会社に戻る。

脳は、誰もいない喫煙所で、その一本をしみじみと味わった。

「あいつは、ただの無能だと思っていた。それすら、俺の奢りに過ぎなかったわけだ」

「進化していないのは俺の方かもしれないな」

一筋の紫煙が、ガラス張りの閉鎖空間を、静かに白く染めていった。


投票に行こう、は響かない

投票に行く人もいれば、行かない人もいます。
義務ではないのですから、行動の選択は自由なのです。

もちろん、国民すべてがきちんと考え、思いを込めた一票を必ず投じるという状態が理想であることは間違いありません。

だけど、投票という行動にそこまでのエネルギーを捧げる価値が感じられないというのも、一つの真理なのです。

ここには、ざっくり二つの理由があると思っていて、

一つ目は、自分の一票の価値が、とてつもなく軽く、かつ大切に扱われていないという実感があること、つまり無力感を感じているということですね。

二つ目は、投票よりも、エネルギーを注ぐに値するアクティビティが他に存在する、ということです。

コスパ、タイパ重視の風潮だけでなく、

現代においては、投票以外の方法で、世の中に影響力を与えることさえも不可能ではないのですから。

またこれらは、時代が進むにつれ、強化され続けています。

にもかかわらず、世の中は、低調な投票率の問題を、個人だけに求めてしまっているきらいがあります。

問題は、細胞自体なのか。それとも、フィードバックを受け取る仕組みなのか。この問いに、すぐに答えは出ないでしょう。

ただ一つ言えるのは、この違和感をこのまま放置すべきではないし、打ち手を誤れば、その先にあるのは、

いつの間にか、顔の大半が目と口だけで、極小の肝臓を持つ、

奇妙な生物に変わり果てた、僕たち自身の姿なのです。


民主主義の限界をテーマに、ショートショート風寓話を書いてみました。
短くてさっと読めて、心に何かが残る話です。よろしければ、ぜひどうぞ。

少しでも面白かった、考えてみたくなったと思ってもらえたら、ぜひ「スキ」で教えてください。励みになります。

ではまた。

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