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トランプはすべての外国映画に一律100%の関税をかけるとか。いやはや、外国映画は「国家安全保障上の脅威」なんだってさ。

いま映画界はあわてうろたえ、右往左往し、わめき、発狂している。
ハリウッド労働組合が開催する
アカデミー賞のきらめくレッド・カーペットの下は、
怒涛のようにカネが暴れ流れる地獄なのだ。
なぜなら、映画はデジタル化し、AIも導入され、
製作システムも上映方式も激変。
そこには製作費低減のメリットもあるものの、しかし他方、
映画は毎月1000円2000円払って、
Netflix で観るものと決めてかかっている人も増えた。
おまけに、近年のハリウッド映画は、
文化左翼の影響下にあって、ポリコレ化がはなはだしい。
なるほどたしかに人種、民族、ジェンダー、セクシュアリティは
現代社会の重要なイシューではあるにせよ、
しかし、それらばかりがあらゆる映画の主題に踊り出すと
作品の多様性は失われ、観客は逃げ出してしまう。
じっさいポリコレ白雪姫は、製作費2億5000万ドルに対して、
赤字1億15000万ドルを叩き出した。
1ドル145円換算で日本円に換算すると赤字217億5000万円くらいか。


なお、ハリウッド映画の平均製作費は5000万ドル
と見積もられています。日本円で72億5000万円。
そもそもなんでまたあんなにもスタッフが多いのか。
プロデューサー、脚本家、映画監督、演出家、
俳優、美術、コスチューム・デザイナー、キャメラマン、
照明、音響、小道具、メイク、場合によっては振付師、
CG編集・・・ハリウッド映画はたいへんな大所帯である。
過去20年間の成功した作品においては、
なんと平均で脚本家3.5人、プロデューサー7人、
アート部門55人、音響32人、キャメラ~電子55人、
ヴィジュアル・エフェクト156人だそうな。


さて、仮にいまハリウッドが死にかけているとして、
では、すべての外国映画に関税100パーセントかければ、
ハリウッドを救えるの???
トランプ大統領が考えていることは、
なにからなにまでわけがわからない。
トランプは今世紀最大のバカなのか!??
ただし、ここでもまたグローバリスム/ナショナリズムの
衝突が起こっているのである。



トランプはすべての外国映画に一律100%の関税をかけるそうな。情報ソースは、大統領みずからによる5月4日のSNSの投稿。いまやハリウッドは死にかけているので、したがって、(自動車産業と同様)保護措置が必要だということらしい。次に、大統領にとっては、外国映画はプロパガンダによってアメリカ人を洗脳する。したがって、外国映画は「国家安全上の脅威」なんだそうな。トランプはいったいぜんたいなんでまたそんなふうに考える??? しかも100パーセントの関税!?? そんな話は聞いたことがない。中国映画だけでなく、すべての外国映画にこれを課すと言うのだ。果たしてこんな提案が議会を通るの? しかしこの勢いでは通ってしまいかねませんね。実施時期はいつからになるかしらん。はやいはなしがアメリカ人はTOHOシネマズでかかるようなアメリカ映画だけを見せられることになる。いま Netflix は大騒ぎでしょうね。


この件は、政治が文化芸術に介入するということ。おもえば大東亜戦争の戦時下において、日本でも鬼畜米英の映画なんて上映できなかったし、ジャズなんて聴けませんでしたものね。同様に、ナチス・ドイツはアヴァンギャルド芸術運動を退廃芸術と名づけて抑圧・排除した。戦後、米/ソの対立構造のなかでハリウッドでは「赤狩り」が繰り広げられ、夢の工場を悪夢に変えた。すなわち、喩えるならばトランプ大統領はいまたったひとりで内外で大戦争をやっておられるわけですよ、世界中を巻き込みながら。



それにしても、アメリカ人をこれいじょうアホにしてどうすんでしょ? アメリカ人はアメリカだけが世界だとおもってますからね。パスポート所有率も48パーセント。911が起こってもアフガニスタンがどこにあるか知らず、アメリカがイラクと戦争やっていた時期でさえも、半数のアメリカ人はイラクがどこにあるかを知らなかった。また、(アメリカのみならず世界中で)ここ二十年のSNSの浸透が、真理をイイネの数とアクセス数で決定するようになった。はやいはなしが世界中の主権を、バカが握ったことになる。ぼくもバカのひとりとしてうれしい・・・と書くべきかしらん??? まずはこの現実をなんとかしましょうよ、トランプさん? 



ところがトランプさんの思考はそうは動かない。それどころかトランプさんはアメリカの大学に超莫大な補助金を出していたことを廃止して、結果、いまアメリカの学者~研究者たちは、鵜の目鷹の目で外国の大学への就職を狙っているのだ。すなわち、トランプは文化左翼が嫌いであるのみならず、知識人そのものが嫌いなんですね。こうしてアメリカから学者~研究者がいなくなり、アメリカにはバカだけが残る。



トランプさんには政治家・実業家の顔以外に、タレントや映画俳優としての顔もあって。テレビのリアリティ・ショウの司会者をはじめ、カネ持ちキャラとして『ホーム・アローン2』をはじめ15本の出演作品がある。したがって、トランプさんがハリウッドの現在にたいへん憂慮しておられます。



しかしながら狭義のハリウッドはたった5社による事実上の寡占である。『白雪姫』で大コケのDisney。『Wicked』のUniversal。『スパイダーマン』のSony Pictures。ヒット大作多数のParamount。『スーパーマン』や『バットマン』から『ハリー・ポッター』まで送り出してきたWarner Bros。なるほど、それらの会社は近年冴えない。20世紀FOXもマーベル・スタジオなどとともにディズニー傘下に収まった。『スーパー・マリオ・ブラザース』や『MINECRAFT』の映画版など、批評家たちからはブーイングとともにパイを投げつけられながらも、しかしゲーマーのコドモたちには大人気、興行収入も抜群という映画も登場してきた。シネフィルは嘆く、いつから映画館はゲームセンターになっちゃったんだ!?? なるほどおれだってハンバーガーもたまには喰いたくなるにせよ、しかしおいしい料理は他にたくさんある。ハリウッドは終わってる! じっさいいま話題の映画"Anora"は、製作費600万ドル、クルー40人でニューヨーク・ロケで作られた「インディー映画」を、ユニヴァーサルが配給して1600万ドルを稼ぎ出した。なお、"Anora"を手掛けた映画製作会社ネオンは映画『パラサイト―半地下の家族』を成功させた会社でもあります。この一例だけでなにかを論じるわけにもゆかないにせよ、しかしこれがほんとうの映画の力ではないか、とぼくはおもわずにはいられない。もっとも、製作費600万ドルとてそうとうな巨額だとはおもうけれど。なお、1978年の映画ながら『天国の日々 DAYS OF HEAVEN』の製作費は300万ドルである。この半世紀の製作費高騰がよくわかる。



日本のネットでは今回のトランプさんの決断に野次が飛ぶ、「おまえらの国の映画が文化左翼によってポリコレ汚染でつまんなくなったせいだろ! 観るか、ポリコレ白雪姫なんて! 赤字1億15000万ドル、ざまあ」、「トランプによってアメリカが中国みたいな思想統制国家になったってこと。」


おもえばオバマ大統領にはもっと教養があったもの。ぼくはオバマさんの映画や音楽の趣味が好きだ。


日本の映画界もまた盛衰の歴史を持ち、ここ半世紀は衰退からの立ち直りを闘っています。日本映画の歴史を振り返ってみましょう。1912年(明治45年)日活はハリウッドに倣って撮影所システムを打ち立て、向島を夢の工場にして、サイレントの時代劇とメロドラマで大衆の人気をかっさらった。1920年、歌舞伎興行を続けて来た松竹が映画界に参入、蒲田に撮影所を作り、小津安二郎をスター監督にし、かつまた他方でチャンバラ映画で人気を博しもした。松竹はトーキー映画への乗り換えにも成功した。東宝は大東亜戦争戦時下に国策映画に積極的だった。戦後は松竹育ちの映画監督たちが日活に流れた。東宝は黒沢明を映画界の天皇にした。しかし、1970年代を境に、(角川映画の参入とヒット連発を経つつもしかし)けっきょくテレビの時代に負けていった。こうして映画はもっぱら都市文化として延命し、近年の日本映画界はいったん失われてしまった撮影所システムの廃墟のなかからの立ち直りとしてある。なお、以上は映画研究科の藤井仁子(ふじい じんし)さんによる論考を参照させていただきました。




本題のトランプ問題に戻りましょう。ぼく自身は国家による文化・芸術への介入は、ちいさいにこしたことはない、と考える。もっともこれは一律に扱えることではなく、たとえばぼくが贔屓にしている映画大国インドもまた、もっぱらインド映画しかかけてないのではないかしらん? くわしいデータがないのでこまかく論じることができないのが残念だ。次に、インド政府は自国の映画製作にきびしく倫理的条件をつけていて、これがインド人に、恋愛の神聖さを信じる純朴さや善良な精神を育てているのではないかしらん。しかしながら、今回のアメリカ政府による映画流通への介入を、インドと同列に論じることはできない。



次に、アメリカ人の映画受容の特徴もまた考慮すべきではあって。むかしからアメリカ人は外国映画を字幕で観る人が少ないのだ。例外的にアメリカでヒットした外国映画を探してみると、1957年フェデリコ・フェリーニ監督によるイタリア映画『カビリアの夜』がアカデミー賞を取っているものの、その後は1992年のメキシコ映画の『赤い薔薇ソースの伝説』の大ヒットがあるくらい。これは”Like Warter for Chocolate.”というタイトルで公開されたそうな。ストーリーは薔薇を捧げられた女が、ウズラのローストにその薔薇を使った赤いソースをかけて、男にふるまう。男は彼女の情熱が感染し、禁じられた愛が官能をかきたて、それが料理と結びついて、とんでもない出来事が次々と起こるそうな。ただし、メキシコ移民たちにウケたってことでしょ、べつに字幕読みながら映画を観た客は少ないかも。ぼくもこの映画を観てみたくなってはきたけれど。




同様に、2013年のメキシコ映画 ”Instructions Not Included”もアメリカでヒットしたそうな。





2019年の韓国映画『パラサイト半地下の家族』は全員韓国人のキャストでありながら、カンヌでパルムドールを取ったのみならずアカデミー賞も受賞したそうな。



日本映画では、アニメの『もののけ姫』は『千と千尋の神隠し』が大成功しています。さすがジブリの底力です。ディズニーの惨状と比べるまでもありません。


いやはや、驚くべきこと。アメリカ人は外国映画をほとんど観ないんですよ。他方、日本の映画ファンはアメリカ映画を大好きだし、もちろん日本映画も観るし、もっともっとたくさんの多彩な外国映画を観てるでしょ。こうした教養の下支えがあってこそ、たとえばジブリや世界のキタノの活躍がある。ぼくはアメリカ映画もそこそこ観るけれど、しかしアメリカ映画しか観れない環境なんて、考えるだに恐ろしい。そしてそれはアメリカの半年後(?)の現実なのだ。





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