見出し画像

「写真集を読む」第一回|鳥羽宏之×柊里杏『つなぐ』『記憶の海を泳ぐ』

ポートレート撮りとして、どのような方をロールモデルするか。
ひとり上げるとするなら「ビーバーさん」と答えるでしょう。
本連載の第一回目はこの二冊からスタートしようと真っ先に思った写真集で。

連載の詳細についてはこちらをご参照ください。

概要

この写真集は、鳥羽宏之さん(以下、ビーバーさん)柊里杏さん(以下、里杏さん)のお二方がTOKYO models 2021、同2022でグランプリを受賞され、副賞の個展開催に併せて発売されたものです。
個展の期間中に会場で購入するか、指定の期間内に注文するかで入手可能なものでした。

2021年の写真集『記憶の海を泳ぐ』
2022年の写真集『つなぐ』

写真集の感想

写真展でグランプリを受賞されただけあって、そのクオリティは折り紙付き。
Leicaは空気を写す、なんて言葉もありますが、ビーバーさんの写真は言葉通り空気まで写されているように感じます。

特に青の表現は筆舌に尽くしがたく、どこまでも呑まれてしまいそうな、しかしそれでいて安心できるような表現。
その他も彩度が高くない落ち着いた風合い、だからこそ安心してじっくりと鑑賞できる色になっています。

構成も好き。
全部がポートレートではなく、花や風景を織り交ぜて。
それも無作為ではなく、カットインのように場面転換の役割をさせています。
上質な短編映画を見ているような、時間軸を感じるつくりになっています。

余白のつくり方や写真の並べ方など、参考になる部分が多分に含まれた二冊です。

深読み①「時の流れ」

ここからは私が深読みした箇所。
完全な主観なので正解ではありません。

これは写真展にお伺いした際に聴いたお話し。
「同じ場所で同じ季節に、また撮ってみると違いが感じられる」
とビーバーさんがおっしゃっていました。

写真集の中で数年ほど経過しているのです。
その中で撮り方撮られ方、ロケーションの幅など広がっていることが伺えます。
その中でも目を惹くのが、上述の「同じ場所で同じ季節に」撮られた写真です。

写真の持つ独特の機能の一つが「記録性」。
その日その時間に、撮る人と撮られる人がいて、瞬間をデータとして保存可能な状態に書き起こす。
そして移り行く時間の中で、変わるもの変わらないものの対比ができるのが写真の魅力だと思います。

サッと見ていても「ここさっきも見たかも」と思えるほどの精度で、しかし違いが分かるように、自然と織り交ぜられています。
全体としての技術の変遷もさることながら、里杏さんとお二人でつないできた記憶の海の中を泳いでいるような錯覚を味わえます。

深読み②「写真の視座」

一部の写真に影か写っているので判るのですが、ビーバーさんは車椅子で生活をされている方です。
スノーボードでの転倒事故により下半身に障がいを抱えたとのこと。
このことは写真展のステートメント、また写真集の文章に書いてあります。

車椅子ユーザーであるという情報をもとに写真集を見返すと、いくつか不思議だと思わされるカットがあります。
そう、車椅子からはあり得ないような高さから撮られているカットが見受けられるのです。

たとえば2冊の表紙。
これどうやって撮られていると思いますか?

正解は「一脚などを使ってカメラを高い位置に持って行っている」。
しかしさらに高い技術をうかがわせるポイントがあります。
ビーバーさんが使っているのはLeicaのマニュアルフォーカスレンズです。
そう、事前にフォーカスを併せたMFレンズを、車椅子から一脚を使い高く上げ、事前に想定した構図になるよう調整し撮っているのです。

その他の写真も、改めて見ると発見や驚きの連続です。
健常者と障がい者という対比をするのはナンセンスではあるのですが、私よりもビーバーさんの視野は広く、視座は高いのです。

私はこのことを「写真の視座」と(勝手に)呼んでいます。
一朝一夕に身につくものでもなく、何もせず身につくものでもありません。
被写体へ必死に向き合い、どのように写れば素敵に見えるのか考え、研究し、果てにたどり着いたものなのだろうと考えています。
これこそ私がビーバーさんに憧れる理由の最たるものです。

おわりに

先般執筆した写真展「UNTITLED2023」の記事でも触れましたが、この二冊を購入した写真展こそ私が目指した展示でした。

ビーバーさんは写真教室で新たな方向性について勉強なされているようで、今後も作品が楽しみであると同時に、私が目指す地点を示してくれたことには変わりありません。
特に写真集についてはまだまだ考慮しきれていない点が多く、この二冊から多くのものを吸収せねばと改めて実感しています。

連載1本目にこの写真集を持ってきたことに、多くの意味を持たせられるよう連載を続けていこうと思います。
今後ともお付き合いいただけますと幸いです。

それでは。

こちらもどうぞ

SNSリンク

X(旧Twitter):https://twitter.com/poisute_words
Instagram:https://www.instagram.com/poisute_words/

併せて読むnote記事


いいなと思ったら応援しよう!

たかはしあさぎ ご覧いただきありがとうございます! サポート頂きましたら、役者さんのコーヒー代、撮影機材への投資、資料購入費として使わせていただきます🙏