勝てるマーケティングの「新・方程式」。AIは「マシンガン」だが「照準」を誰が合わせるか?
ノバセルがFUSIONをグループに迎え入れてから、半年が経ちました。
この半年間、私たちは「PMI(統合プロセス)」というお行儀の良い言葉ではなく、もっと泥臭く、本質的な「実験と発明」を繰り返してきた。
その中で、私の中に一つの「確信」めいた結論が生まれた。 今日は自社の宣伝ではない。これからの時代を生きるすべてのマーケター、経営者に向けた、私の「危機感」と「提言」を書き残す。
テーマは、「マーケティングの民主化」と「戦略の復権」だ。
AIがもたらした「量産型マーケティング」の悲劇
今、猫も杓子も「AI」だ。 広告業界でも「AIでバナーを自動生成」「AIでコピーを量産」といったツールが溢れている。
しかし、あえて厳しいことを言う。 多くの企業において、AIは「ゴミを量産する装置」にしかなっていない。
なぜか? それは「戦略」なきまま「戦術」のスピードだけを上げてしまっているからだ。
AIは優秀だ。指示すれば、無限にクリエイティブを作ってくれる。 ですが、その指示(プロンプト)の元となる「誰に」「何を」「なぜ」届けるのかというマーケティングの背骨が折れていたらどうなるか。
ターゲットに刺さらない、ブランドの想いも乗っていない、ただ「それっぽい」だけの駄作が、人間には不可能なスピードで世の中に撒き散らされることになる。 これはマーケティングではない。デジタル空間の汚染だ。
私が事業主の立場でも、支援側の立場でも感じる「違和感」の正体はここにある。 ツールは進化した。けれど、それを使いこなす人間の「戦略眼」が追いついていない。
この「戦略と実行の乖離」こそが、AI時代の最大の落とし穴である。

「混ぜるだけ」では意味がない。業界にはびこる深い溝
もう少し、業界の構造的な話をしよう。 これまで、日本の広告業界には大きな「分断」があった。
① マスが得意な「戦略型」エージェンシー 「誰に、何を言うか(Who & What)」を考えるのは得意だ。テレビCMのように数千万円を投資するからこそ、徹底的なリサーチとインサイト発掘を行い、失敗しないロジックを組む。 しかし、いざそれをデジタルの現場で実装しようとすると、「手触り感」や「スピード」に欠けてしまう。
② デジタルが得意な「運用型」エージェンシー 「どう届けるか(How)」は得意だ。CPAを合わせるためのハックや、媒体アルゴリズムの攻略には長けている。 しかし、「なぜその商品を売るのか」という上流設計が弱く、クリエイティブが「当たり待ち」の運任せになりがちだ。

「それなら、マスの会社とデジタルの会社が一緒になればいい」 そう思うかもしれない。実際に近年、大手代理店がデジタル専業のエージェンシーを買収するケースが増えている。
しかし、実態はどうだ。 看板だけ一緒になっても、中身は「分断」されたままのケースがほとんどだ。
大手代理店の構造上、どうしても予算規模の大きい「マス」が優先されがちになる。デジタルはあくまで「付属」扱いだ。 さらに言えば、クライアント側も分断されている。 宣伝部がマスを見て、デジタル推進室がWebを見る。KPIも違えば、見ている方向も違う。
そこに提案に行く代理店の営業マンも同じだ。 マスとデジタルの両方の力学を、骨の髄まで理解して提案できる営業マンがどれだけいるか。 「戦略」を描く人間と、「運用」を回す人間が、別々の会社の、別々のオフィスにいて、メールだけでやり取りしている。
これでは、本当の意味での統合なんて起きるはずがない。 この「構造的な分断」こそが、企業のマーケティング活動の足を引っ張っている正体なのだ。
私たちがFUSIONと組み、この半年で取り組んできたのは、単なる資本提携ではない。 この分断された世界をつなぎ直す」ことだった。
勝てるマーケティングの「新・方程式」
分断を乗り越えるために、私たちはこの半年、ノバセル(ラクスル)グループが持つ事業開発力を総動員し、ある一つの仕組みを構築した。 それが、「必勝のトライアングル・フォーミュラ」だ。
これは、単なるツールの導入ではない。 戦い方の構造そのものを変えるアプローチだ。
1. 照準器(スコープ):ノバセルの「意味の発明」
すべてはここから始まる。 AIに指示を出す前に、人間が汗をかいて「意味の発明」を行う。 その商品は、顧客の人生にとってどんな意味があるのか? なぜ、今その商品を選ぶべきなのか?
ノバセルがテレビCMの現場で培ってきた、失敗が許されないレベルの「指名検索を生むロジック」。この強固な戦略設計こそが、武器の「照準(スコープ)」になる。
ここがズレていれば、どんなに良い弾を撃っても当たらない。 私たちは「テレビCM枠を売りたい会社」ではない。「事業を伸ばしたい会社」だ。だからこそ、必要がなければテレビなんてやらなくていい。 ただ、テレビCMレベルで磨き上げた「スコープ(戦略眼)」だけは、すべてのマーケティングに不可欠なのだ。
私が言う「スコープ(戦略眼)」とは、単にターゲットを絞ることではない。 その中心にあるのは、「意味の発明」だ。
多くのデジタルマーケティングは、ここがおざなりになっている。 「安いです」「機能が凄いです」「今ならお得です」。 CPAを下げるために、こうした「スペック」や「お得感」ばかりを訴求する。 だが、それでは「指名検索」は生まれない。一時的に刈り取れても、ブランドは積み上がらない。
「意味の発明」とは、単なるキャッチコピー作りではない。 「そのサービスが、顧客の人生においてどんな役割を果たすのか」を再定義することだ。
例えば、単なる「配送サービス」を売るのではなく、「日本の物流クライシスを解決するインフラ」と定義する。 単なる「勤怠管理ツール」を売るのではなく、「無駄な作業をなくし、社員が本業に向き合える時間を創るツール」と定義する。
商品そのものは変わらなくても、「社会や顧客にとっての意味」**を変えることで、競合と比較されない独自のポジションが生まれる。 顧客は「機能」ではなく、その「意味」に共感し、自らブランド名を検索窓に打ち込むのだ。
テレビCMの世界では、15秒という短い時間でこの「意味」を伝え、大衆の心を動かさなければならない。だからこそ、死ぬ気で考え抜く。 この「意味の強度」がないまま、AIで大量のバナーを作っても、それは「デジタルゴミ」を量産しているに過ぎない。
まず、「意味」を発明する。 それができて初めて、AIというマシンガンの引き金を引く資格が得られるのだ。

2. マシンガン:開発陣による「AIクリエイティブ」
ここが、一般的な代理店には真似できない部分だ。 私たちは事業開発会社である。「ツールを使う」のではなく「ツールを作る」側だ。
事業開発チームが半年かけて開発したのは、「戦略(スコープ)と連動したAI」だ。 「1」で定めた戦略の枠組みから外れることなく、しかし人間には不可能なパターン数で検証を行う。 これは、「高精度のスコープがついた状態で、大量の弾丸を放てるマシンガン」を手に入れたに等しい。
世の中の「AIバナー」は、目隠しをしてマシンガンを乱射しているようなものだ。まぐれで当たることもありますが、弾の無駄遣い(予算の無駄)が多すぎる。 私たちは違う。 「勝てる論理に基づいて、狙い澄ました圧倒的な手数を打つ」のだ。

3. 射撃手(シューター):FUSIONの「運用力」
高性能なスコープ付きマシンガンがあっても、引き金を引くタイミング、風向き(アルゴリズム)を読む力がなければ無意味だ。
AIが生成した「戦略的クリエイティブ」を、FUSIONの運用チームがデジタルという戦場に展開する。 彼らは、FacebookやGoogle、TikTokのアルゴリズムの奴隷ではない。アルゴリズムをハックし、戦略を成果に変える「熟練の射撃手」だ。

「至極の戦略(スコープ)」×「AI(マシンガン)」×「運用(シューター)」
この3つが完全に同期した時、初めてAIはマーケティングの武器になる。 この半年で、この仕組みを導入したクライアントにおいて、劇的に成果(CPA改善と指名検索数アップ)が向上しているのは、決して偶然ではない。
「戦略」を特権階級のものにしない。これがマーケティングの民主化だ。
私がこの仕組みで実現したいこと。 それは、ノバセルのミッションである「マーケティングの民主化」そのものだ。
これまで、高精度のリサーチに基づいた緻密なマーケティング戦略(スコープ)は、数億円の予算を持つ大企業や、一部の外資系企業だけの特権だった。 多くの企業は、戦略不在のまま、手探りでデジタルの海に飛び込むしかなかった。
しかし、AIとテクノロジーの力を使えば、このコスト構造を変えられる。 「スコープ付きの高精度マシンガン」を、限られた予算の企業にも提供できる時代が来たのだ。
大手だろうがベンチャーだろうが、正しい戦略と、正しい実行手段があれば、勝負ができる。 「お金があるから勝つ」のではなく、「知恵と仕組みがあるから勝つ」。 これこそが、私たちが目指す「成果至上主義」**の新しい形だ。
組織論:AI時代に求められる「人材」とは
この仕組みを回すためには、組織も変わらなければならない。 AI時代において、「マス担当」と「デジタル担当」が別の場所にいるなんてもってのほかだ。
私たちは物理的な壁も取り払った。 現在、ノバセルとFUSIONは同じオフィスで、同じ空気を吸って仕事をしている。
さらに、人の融合も本気で行った。 ノバセルのエースであり、私の右腕でもある楠勇真をFUSIONの取締役CROとして送り込んだ。 「戦略のノバセル」のDNAを、FUSIONに移植するためだ。
また、今年1月からは、元Facebook(Meta)で、動画生成SaaS「リチカ」のCOOを務めた中川雄大も参画した。 プラットフォーマーの視点、SaaS経営の視点、そしてクリエイティブの視点を持つ彼のような人材が、これからのエージェンシーには不可欠だ。
戦略家、エンジニア、運用者。 この異能たちが一つのテーブルで「どう勝つか」を議論する。 これこそが、AI時代のエージェンシーのあるべき姿だと私は考える。
最後に:新しい「マーケティングエージェンシー」の夜明け
AIの進化によって、マーケティングの「実行コスト」は限りなくゼロに近づいていく。 バナーを作る、動画を作る、広告を入稿する。 こうした作業はいずれ自動化されるだろう。
その時、私たち人間に残される価値は何だろうか? それは「意味の発明」だ。
AIに「いい感じの広告を作って」と言っても、AIは「意味」を作れない。 その商品がなぜ世の中に必要なのか。その本質的な価値を定義できるのは、人間の意思だけだ。
「AIに使われるな。AIを戦略のしもべにせよ。」
これが、M&Aから半年、最前線で走り続けてきた私からのメッセージだ。
ノバセルとFUSIONは、単なる「デジマ会社」でも「運用型テレビCM会社」でもない。 AIと人間の叡智を融合させ、クライアントの事業に「非連続な成長」をもたらす「グロースパートナー」だ。
私たちは、マス広告を無理やり売りつけるようなことはしない。 逆に、デジタルだけで局地戦を強いられている企業には、大局的な戦略を授ける。 すべては「成果」のためだ。
もし、あなたの会社のマーケティングが、 「戦略なきAI活用」や「分断されたマスとデジタル」に陥っているなら。 ぜひ一度、私たちと話をさせてほしい。
そして、この「マーケティングの変革期」に、最前線で新しいスタンダードを作りたいという野心ある仲間も待っている。
私たちはまだ、登り始めたばかりだ。 次の半年、さらに業界を驚かせる準備はできている。

