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高い水より大事なこと、透析室で気づいた「何もしない水」

水素水にアルカリイオン水、シリカ水……体にいい水っていろんな種類がありますよね。実際どうなんだろうと気になったことはありませんか。健康を意識するほど、飲む水にもこだわったほうがいいのかなと思ってしまいますよね。私は透析室で働いていたころの経験から、水の本当のすごさは「何もしない」ことだと気づきました。今回は、その話と水分補給のコツをお話しします。

透析室で知った「何もしない水」の価値

私が水について深く考えるようになったのは、透析室で働いていたころです。透析は、腎臓の代わりに血液をきれいにする治療です。ダイアライザーという装置に血液を通してきれいにするのですが、そこで使う透析液を作るもとになるのが水です。すべてのもとになる水なので、ミネラルも余分な成分も除去した精製水でなければいけません。1回の透析で100リットル以上の透析液が、膜ごしに血液と向き合います。だから透析用水には、生菌数もエンドトキシンも非常に厳しい水質基準が決められているんです。その水が目指しているのは、何か特別な成分を持つことではなく、完全に「何もしない」こと。水の価値はそこにあるんだなと、透析室で実感しました。

「体にいい水」として売られているものの中には、「デトックス効果がある」「美肌になる」「ミネラル補給になる」とうたっているものがあります。でも毎日2リットル近くも体に入るものです。もし本当に水が体に作用するなら、腎臓病でミネラルを制限している方、お薬を飲んでいる方、やせ気味の高齢者……それぞれの身体に影響が出てしまいます。

水が「何もしない」というのは、安全性という面でとても大切なことなんです。

高い水や生成器にお金をかけるより、日々の食事にお金をかけるほうがいいというのが私の考えです。でも、家族がある特殊な水にハマっていて、私はそれを否定していません。「体に良い水を飲んでいる」という安心感がこまめな水分補給につながるなら、それはそれで意味があると思っています。

水分補給で知っておいてほしいこと

体の約60%は水でできています。体重の2%を超えて水分が失われると、集中力やパフォーマンスが落ちると報告されています※1。「2%なんてたいしたことない」と思うかもしれませんが、体重50kgの方なら1kgに相当します。のどが渇いたと感じるころには、すでに水分が足りていない状態になっていることもあります。

筋肉の75〜80%も水分でできているので、運動をしている方はとくに水分補給が大切です。以前ボクサーの栄養サポートをさせていただいたときのことです。試合前の体重制限をパスするために、サウナスーツを着てトレーニングしたり、サウナに入って汗を出したり、水分を制限したりすることがあると知りました。プロボクサーでも実際に行われている「水抜き」ですが、体内の水分を一時的に減らすだけで、体脂肪は落ちません。それどころか、集中力が落ち、怪我もしやすくなり、試合で勝てる可能性まで下がってしまいます。だから「過剰な水抜きはしないでほしい」とお伝えしました。

もう一つ、飲み方にもコツがあるんです。一気にたくさん飲んでも、体にためておける量には限りがあります。飲んだ水はちゃんと吸収されます。でも一度にたくさん入ると血液が薄まってしまうので、体はもとの濃さに戻そうとして、余った分を尿として出してしまうんです。こまめに少しずつ飲むほうが、ちゃんと体の内側にとどまってくれます。

外側のケアより、飲む水のほうが効いた

以前の私の話なんですが、コーヒーを飲んで、水をほとんど飲まずに仕事していた時期がありました。夕方になると顔がしわしわになって、鏡を見るたびに「あれ、なんか老けた?」と思っていました。保湿クリームを重ね塗りしても、加湿器をつけても、あまり変わらなかったんです。

それが、水をこまめに飲むようにしたら改善されました。外側からいくらケアしても足りていなかったのは、中からの水分だったんです。

高い水も特別な水も要らなくて、自分がおいしいと感じる水をこまめに飲む。それが一番身体にいい水なのだと思っています。


参考文献

※1 ハイパフォーマンススポーツセンター「パフォーマンスに差を生み出す水分補給作戦」https://pathway.jpnsport.go.jp/sports/column04.html


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