【聖なる経済学】 経済の寓話
訳者コメント:
利子付き貨幣を使う「高利貸しの経済」では、必然的に生産過剰となり、それを処分するために戦争が起きます。第一次大戦と第二次大戦はその典型でしたが、第二次大戦後にも、東西冷戦期、そして冷戦後から現在に至るまで、絶え間ない戦争が続いてきました。いま噴出しているウクライナや中東の戦争も、巨大経済圏の行き詰まりが低レベルの戦争では解消できないほどに高まっている現れなのです。
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経済の寓話
高利貸しは、今日あるような地域特有の欠乏を生み出すと同時に、世界を蝕む永続的成長の原動力となっています。その仕組みを説明するため、まず並外れた経済思想家であるベルナルド・リエターが著書『マネー崩壊』の中で語った「十一枚目」という寓話から始めましょう。
昔々、奥地にある小さな村では、人々は物々交換で全ての取引を行っていました。市の立つ日に、人々は鶏や卵、ハム、パンを持ち歩き、長時間にわたる交渉の末に、必要なものと交換しました。収穫期や、嵐の後で納屋の大がかりな修繕が必要になった時のように、一年の中で重要な時期には、人々は昔から受け継いだ助け合いの伝統を思い出しました。そして、いつか自分たちが困ったことがあれば、他の人が助けてくれるだろうと知っていました。
ある市の日、ぴかぴかの黒い靴と上品な白い帽子をかぶった見知らぬ男がやって来て、皮肉な笑みを浮かべながらその様子を観察していました。ある農夫が大きなハムと交換するため6羽の鶏を囲い込もうと走り回っているのを見て、男は笑いをこらえきれませんでした。「かわいそうな人たちですね」と彼は言いました。「なんと原始的な。」農夫の妻がそれを聞きつけ、見知らぬ男に問いました。「鶏の扱いならもっと上手くできると思うの?」「鶏では無理です」と見知らぬ男は答えました。「ですが、こんな面倒なことを全部なくせるもっといい方法があります」「そうかい、どうやって?」と女は尋ねました。「あそこの木が見えますか?」と見知らぬ男は答えました。「では、私はそこで待っているから、誰か大きな牛革を一枚持ってきなさい。それから、一世帯ごとに私のところに来なさい。もっといい方法を説明します。」
そしてこうなりました。彼は牛革を手に取ると、そこから完璧な丸を切り出し、それぞれの丸革に精巧で優美な小さい刻印を施しました。そして一世帯に10枚の丸革を渡し、それぞれが鶏1羽分の価値を表していると説明しました。「これで、扱いにくい鶏の代わりに、この丸い革で物々交換や値段交渉ができるようになります」と彼は説明しました。
それは理にかなっていました。誰もが、ぴかぴかの靴と印象的な帽子を身につけたその男に感銘を受けました。
「そうそう」と彼は、各世帯が10枚ずつ受け取った後に付け加えました。「1年後、私は戻ってきて、同じ木の下に座ります。皆さんにはそれぞれ11枚ずつ持ってきてほしいのです。その11枚目は、私が皆さんの生活にもたらした技術革新への感謝の印です。」「でも、11枚目はどこから来るのですか」と6羽の鶏を飼っている農夫が尋ねました。「そのうち分かりますよ」と男は安心させるような笑顔でいいました。
人口と年間生産量が翌年も全く同じままだとすると、何が起こると思いますか。思い出してください、11枚目は実際には創られていないのです。つまり、たとえ全員がうまくやりくりしたとしても、11世帯のうち1世帯は丸革をすべて失い、他の10世帯に11枚目の丸革を提供する必要が生じることになります。
そのため、ある家の作物を脅かす嵐が来ても、人々は災害が起こる前に収穫を手伝う時間を割くことをためらうようになりました。市の日に鶏の代わりに丸革を交換する方がはるかに便利でしたが、この新しいゲームは、村の伝統だった自発的な協力関係を積極的に阻害するという予期せぬ副作用ももたらしました。その代わりに、この新しいマネーゲームが生み出したのは、参加者全員の間に競争を生む制度的な底流でした。
この寓話は、利子のせいで経済に競争と不安と貪欲がいかに根深く織り込まれているかを示す第一歩となります。これらを根絶することは、生活必需品に利子付き貨幣で値段が付いている間は不可能です。でも、ここで物語を終わりにせず、利子が永続的な経済成長を駆り立てる絶え間ない圧力を生み出すしくみも見ていきましょう。
リエターの物語には大きく分けて3つの結末が考えられます。債務不履行、通貨供給の増加、そして富の再分配です。11世帯のうち1世帯が破産し、帽子をかぶった男(銀行家)に農場を明け渡すか、銀行家が牛の革を新たに調達して通貨を増やすか、あるいは村人たちが銀行家を「タール羽の刑」〔上半身裸にしてタールを塗り羽毛を付けてさらし者にする、中世ヨーロッパやアメリカなど植民地で行われた大衆による刑罰〕に処して、借金の返済を拒否するかのいずれかです。高利貸しに基づく経済圏であれば、どこでも同じ選択肢に直面します。
では、村人たちが帽子をかぶった男の周りに集まって、「旦那様、どうか私たちにもう少し丸革を分けていただけませんか、そうすれば誰も破産せずに済みますから」という場面を想像してみてください。
男はいいます。「いいでしょう、ただし返済を確約してくれる者に限ります。丸革1枚は鶏1羽分に相当するので、既に私に借りている丸革の数よりも多くの鶏を所有している人に、新たな丸革を貸します。そうすれば、もし返済しなかったら鶏を没収できます。ああ、それから私はとても親切な人間なので、今は鶏を余分に持っていない人でも、将来もっと鶏を殖やせると私を説得できれば、新たな丸革を作ってあげます。ですから、事業計画を見せてください。あなたが信頼できる人間であることを証明してください(村人の一人が、あなたのために『信用情報』を作ってくれるかもしれませんよ)。年利10%で貸しましょう。あなたが賢い繁殖家なら、毎年20%ずつ鶏の数を増やし、私に返済して、あなた自身も金持ちになれるでしょう。」
村人たちは問います。「それは良さそうですが、新しい丸革も10%の利率で作っているのだから、最終的にあなたに返済するにはまだ足りないでしょう。」
「それは問題ありません」と男はいいいます。「いいですか、その時が来れば、私はさらに多くの丸革を作り出しているだろうし、それらが満期を迎えたら、また新たな丸革を作り出すでしょう。私はいつでも喜んで新たな丸革を生み出すつもりです。もちろん、あなたはもっと鶏を生産する必要があるでしょうが、鶏の生産量を増やし続ける限り、決して問題は起こりません。」
一人の子供が彼に近づいてきて、「すみません、うちの家族は病気で、食べ物を買うのに十分な丸革がありません。新しい丸革を少し作っていただけませんか」といいました。
「申し訳ありませんが、それはできません」と男はいいます。「というのも、私は返済してくれる人にしか丸革を作らないからです。もしあなたの家族が担保として差し出せる鶏を何羽か持っているか、あるいはもう少し頑張って鶏を殖やせることを証明できるなら、喜んで丸革をお渡しします。」
いくつかの不運な例外を除けば、この制度はしばらくの間うまく働きました。村人たちは、帽子をかぶった男に返済するのに必要な余分の丸革を手に入れるため、十分な速さで鶏の群れを増やしました。不運か不手際か、何かの理由で破産した者もいましたが、より幸運で効率的な隣人たちが彼らの農場を買収し、彼らを労働者として雇いました。しかし全体としては、鶏の群れは貨幣供給量とともに年10%ずつ増加しました。村と鶏の群れは非常に大きくなったため、帽子の男の他にも多くの同じような人物が加わって、皆が忙しく新しい丸革を切り出し、鶏を増やすための良い計画を持つ人々にそれを配布しました。
時折、問題は生じました。まず、誰もそんなにたくさんの鶏を必要としていないことが明らかになりました。「卵はもう飽きた」と子供たちは文句を言いました。「もう家中の部屋に羽毛布団がある」と主婦たちは不満を言いました。鶏製品の消費を拡大させるために、村人たちはあらゆる手段を考え出しました。毎月新しい羽毛マットレスを買ったり、それを入れておくための大きな家を建てたり、いくつもの庭いっぱいに鶏を飼ったりすることが流行りました。他の村との間で争いが起こると、盛大な卵投げ合戦で決着をつけました。「もっと鶏の需要を生み出さねばならない」と帽子の男の義兄弟である村長は叫びました。「そうすれば、みんな金持ちになり続けることができるんだ。」
ある日、村の老婆が別の問題に気づきました。村の周りの野原は、かつては緑豊かで肥沃でしたが、今では茶色く嫌な臭いがしました。鶏の餌にする穀物を植えるために、すべての植物が刈り取られていたのです。かつて魚でいっぱいだった池や小川は、今では悪臭を放つ糞尿の溜まり場と化していました。彼女は言いました。「こんなことは止めなければ。このまま鶏の数を増やし続けたら、もうすぐ鶏糞に溺れてしまうわ。」
帽子をかぶった男は彼女を脇へ連れて行き、安心させるような口調で言いました。「心配ありません。道の先に肥沃な畑がたくさんある村があります。うちの村の男たちは、あそこに鶏の生産を委託しようと計画しています。もし彼らが同意しなかったとしても……まあ、私たちのほうが人数が多いですからね。それにしても、成長を止めるなんて本気で考えているわけじゃないでしょう。だって、近所の人たちはどうやって借りを返すんですか。私はどうやって新しい丸革を作れるんですか。 私だって破産してしまうでしょう。」
こうして、村々は次から次に、悪臭を放つ汚水溜めに取り囲まれた、誰も必要としない大量の鶏の群れと化し、村々はあと数年の成長を支えるため、わずかな緑地を巡って争うようになりました。しかし、成長を維持しようと最善を尽くしたにもかかわらず、そのペースは鈍り始めました。成長が鈍化すると、収入に比例して負債が増え始め、多くの人々は帽子の男への返済だけで手持ちの丸革をすべて使い果たしました。多くの人が破産し、最低賃金で働かざるを得なくなりましたが、その雇用主でさえ、帽子の男への債務もまともに履行できないありさまでした。鶏製品を買う余裕のある人はますます少なくなり、需要と成長を維持するのはもっと困難になりました。環境を破壊するほど鶏が過剰に殖える中で、ますます多くの人々が生活に困窮し、豊かさの中の欠乏という逆説が生じました。
そして、現状はまさにそういうことです。
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原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-6-the-economics-of-usury/
