水たまりに、朝がいた。
朝の道に、
小さな水たまりがあった。
昨日の雨が、
そこだけまだ残っている。
水面には、
白い雲。
その向こうに、
電線が一本、
まっすぐ伸びていた。
黄色い長靴が、
近づいてくる。
水たまりから見ると、
ずいぶん大きい。
ざぶん。
空が、
崩れた。
長靴は、
何もなかったように
通り過ぎていった。
少しして、
自転車の車輪が横切る。
細い波紋が、
水面を走った。
風が止まる。
波紋が消える。
また、
空が戻ってきた。
誰にも見上げられない空が、
そこにあった。
しばらくして、
小さな影が立ち止まった。
しゃがんだ子どもが、
水面を覗き込んでいる。
「空だ。」
それだけ言って、
子どもは立ち上がった。
走っていく足音が、
遠ざかっていく。
水たまりには、
また誰もいなくなった。
雲がひとつ、
ゆっくり流れていく。
私は、
その水たまりをまたいだ。
二、三歩進んでから、
一度だけ振り返った。
水面には、
まだ空があった。
🌸 こちらの記事も、よかったら。
雨の日には、
晴れの日には見えないものがある。
足元に残った雨の中に、
いつもと少し違う景色を見つけた話です。
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