同じビールなのに真逆だった〜カウンターの内側で知った泡のリアル
ビールと犬と野球を溺愛するたけしです。
2031年に看板犬のいる古民家ビアバーを開業するという目標に向け、少しずつ行動しています。
前回の記事では、カフェを開業した知人の言葉をヒントに「誰に来て欲しいか?」というターゲット像を考えてみました。
今回は、いよいよ現場に立った話です。
行きつけのビアバーでのサービングレクチャー。
そして、知人がヘッドブルワーを務めるブルワリーのイベント出店ヘルプ。
この2つの現場で、自分はまったく逆のことをやりました。
お店では、きれいな泡をつけるために時間をかけて一杯を仕上げる。
イベントでは、泡をつけずに次々と出していく。
同じクラフトビールなのに、真逆。
しかもイベントでは、お客さんに「えっ、ビールなのに泡がないんですか?」と驚かれました。
では、将来の自分のお店ではどうするのか?
すぐに答えの出なかったこの問いを、持ち帰るまでの話を書いてみます。
【静の現場】一杯に時間をかける理由
まずは、行きつけのビアバーでのサービングレクチャー。
平日の開店直後、お客さんが誰もいない時間帯。
おかげで、店主さんにじっくりと教えてもらうことができました。
教わった一杯の流れは、こんな感じです。
グラスを水ですすぐ(※)
樽をつないだ直後は、ライン内に残った洗浄用の水などを出し切る
グラスをしっかり傾けて、液体を注ぐ
大きく粗い泡を取り除く
レバーを倒して、きめの細かい泡をつける
最後にもう一度粗い泡を整えて完成
※ビールグラスは油分や洗剤の残りが泡を殺してしまうため、あらかじめ洗剤で洗ってあるグラスを、提供直前に水ですすぎます。
サービング以外にも参考になった設備の話
一連のサービングの流れ以外に、設備まわりの話も聞くことができました。
ガス圧はゲージで0.5〜1の範囲:樽ごとに個別調整はできない仕組みなので、つないでいるビールすべて同じ設定。
ビールラインの長さは5m:以前は2mだったが、それだと泡が多く出てしまうため、長いものに変更したそうです。
洗浄は毎日水を通す:専用の洗剤を使うのは、樽が空になって交換するタイミング。
特に参考になったのが、ビールラインの長さです。
長くした方が泡が減る。
言われてみれば、流れる距離が長いぶん、ビールの勢いと圧が適度に落ち着きます。
おいしいビールの注ぎ方は、ビールがタップから注がれてからの話だと思っていたのに、実際は注ぐ前の設計でも決まってくることを理解しました。
1杯目:流れはわかっていても緊張した
店主さんのお手本を見せてもらった後、実際に自分で2杯ほど注がせてもらいました。
(もちろん、すべて自分がお金を払って飲んでいます)
自分が注ぐ1杯目は、ヘイジーウィートIPAです。
流れは頭に入っている。
説明も聞いた。
それでも、いざ自分が注ぐとなると、やはり緊張します。
グラスをすすぐ段階から、既に軽くドキドキ。
動作の一つ一つを慎重にやりながら、「これで大丈夫ですか?」と都度店主さんに確認してしまうほどでした。
無事に注ぎ終えたビールをカウンターの席に座って、いただきます。
味そのものに不満はありませんでした。
普通においしい。
ただ、飲みながら思ったのは、泡のつけ方をもっと丁寧にやれば、この一杯はまだ変わるんじゃないかということ。
決定的に何かを失敗したわけではない。
でも、店主さんが注いだ一杯との間には、まだ埋まっていない差がある。
その差が何なのか。
この時点の自分には、まだ言葉にできませんでした。
2杯目:あえて難易度の高い一杯を
2杯目に選んだのは、アメリカンウィートエール。
これには、ちょっとした意図がありました。
実は1杯目を注ぐ前に、店主さんにこう聞いていたのです。
「今日つながっているビールで、一番泡が出やすいのはどれですか?」
その答えが、このアメリカンウィートエールでした。
理由の一つは、樽の中身が残り少なくなっていたこと。
残量が少ないと、樽内の空間が増えて液温も上がりやすく、泡が立ちやすくなります。
加えて、ウィートエールは小麦由来のタンパク質が多く、泡持ちがよいスタイル。
泡が立ちやすいと泡が消えにくいは本来別の話ですが、この日は両方が重なった状態でした。
せっかくの機会なので、難しい方に挑戦したい。
1杯目と同じ要領で注いでみると、案の定、泡がモコモコ。
こういうときは、グラスの泡が落ち着くまで少し待ってから、また注ぐ。
その繰り返しなので、一杯ができあがるまで時間がかかります。
(忙しいときは泡を取り除きながらすぐに注ぐそうですが、ビールのロスが多くなるので、なるべくやらないとのこと)
ここで、一つ自分の中の記憶がつながりました。
ビールを注文した際に、「提供まで少しお時間いただきますが、大丈夫ですか?」と言われたことがあったのです。
そのときは深く考えず、ただ待っていました。
あれは、おそらく泡が多く出るビールだったのだと。
カウンターの外から見ていたちょっと長い待ち時間の正体が、内側に立ってようやくわかりました。
泡が落ち着くのを待つ必要な時間だったわけです。
2杯目も無事に完成し、カウンターでゆっくりといただきました。
お手本の一杯を含めると、これで3杯目。
ほどよく酔いつつ、店主さんと話しながら思ったのは、ここから先は場数でしか埋まらない差があるということ。
手順は覚えられても、泡の状態を見て「今日はこう注ぐ」と判断する部分は、まだ何も持っていません。
「忙しくないタイミングで、また挑戦させてください」
そうお願いして、お礼を伝え、お店を後にしました。
【動の現場】泡をつけない現場で起きたこと
続いては、知人がヘッドブルワーを務めるブルワリーのイベント出店のお手伝い。
開店直後の静かな店内とは打って変わって、こちらはBGMと人の声が混ざり、カウンターの前にも常に人の流れがある現場です。
自分の担当は、会計・サービングと提供・グラスやトレイの補充。
合間に、ビール樽の交換と洗浄も教えてもらいました。
数字で見る最終日の熱量
3日間の出店用に持ってきたビールの樽は、17樽。
自分が入った最終日の時点で、残りは7樽。
しかも、そのうち2樽はほぼ空でした。
営業時間は12:00〜21:00。
天気にも恵まれてビールは次々と売れ、18時前に完売しました。
売るものがなくなれば、当然やることもなくなります。
自分のお手伝いも、18時半頃には終わりました。
もちろん、持ってきたビールが全部売れるのは嬉しいこと。
ただ、片付けをしながら知人のブルワーが「もう少し樽を持ってきてもよかったかもね」と話していたのが、妙に印象に残りました。
多く持ち込めば、売れ残りとロスのリスクがある。
少なければ、今回のように早い時間で店じまいになる。
天気も客足も、当日にならないとわからない。
イベントにどれだけのビールを持っていくかは、経験を積んでも読みきれない難しい判断と、空になった樽の横で実感しました。
手渡す一瞬に考えることがある
カウンター越しにお客さんと接していると、「毎年ここのビールを飲んでいるんですよ」「ブルワリーの近くの出身なんです」と、嬉しそうに話しかけてくれる方も。
そして、実際に手を動かしてみて、初めてわかったことがあります。
一杯を作るのと渡すのは、別の技術だということ。
どの角度でグラスを差し出すか?
相手が財布をしまい終わるのを待つのか、先に出すのか?
グループのうち誰から渡すのか?
お客さんとして受け取っていたときは、意識したことすらありませんでした。
でも、提供側に立つと、この一瞬の判断で受け取りやすさが変わる。
一杯を出すという行為は、注ぐだけでは終わっていなかったんです。
IPAとヘイジーIPAの強さ
この日は、ゴールデンエール・ウィートエール・ファームハウスエールなど、他のスタイルもつないでいました。
その中でも、IPAとヘイジーIPAは注文する人が明らかに多く、樽が空になるペースも早い。
飲み手として見ていたときも、IPAとヘイジーIPAが人気なのは感じていました。
自分のまわりにも好きな人は多いし、よく行くお店のタップリストでも、なくなるのが早いのはこのあたりです。
ただ、これはクラフトビールのイベントに足を運ぶ人の傾向でもあります。
クラフトビールを目当てに来る層と、住宅街の古民家に近所だからと寄ってくれる人では、選ぶものが違う可能性もある。
だから、「IPAが人気だから自分の店も揃える」と単純には結論づけられません。
むしろ、イベントで売れるスタイルと、自分がやりたい店で売れるスタイルは別物かもしれない。
この新たな仮説を立てられたのは、収穫でした。
※自分の将来のお店で出そうと考えているビールについては、以前の記事に書きました。
ビールに泡がないと人は驚く
前述したように、お店で教わったサービングは、泡ありでした。
一方、このイベントでは泡なしで提供していました。
理由は、設備の都合です。
出店で使っていた設備は、泡をつける構造になっていませんでした。
すると、何人かのお客さんから、こんな反応がありました。
「えっ、ビールなのに泡がないんですか?」
クラフトビールの世界では、設備やビールの種類によって、泡をつけずに提供するお店はめずらしくありません。
どちらが正しいという話でもないのです。
ただ、少なくともこの日、泡がないことに反応する人が確実にいました。
やはり、「ビールは泡があるもの」という前提を持った人は、一定数いると実感。
飲み手としてタップリストを眺めているだけでは、絶対に気づけない感覚でした。
おいしい失敗とチェックすべき点を再認識
正直に書くと、この日一つ失敗をしています。
忙しさの中で、グラスのフチに残ったわずかな汚れを見落とし、そのままビールを注いでしまったのです。
幸い、お客さんに提供する前に気づけたので事なきを得ました。
それ以降は、グラスの状態をより一層シビアに見るようになりました。
(弾かれたビールは、合間の休憩時に自分がおいしくいただきました…笑)
この失敗で腹落ちしたのは、一杯を出すまでにチェックすべき点がいくつもあるということ。
グラスは汚れていないか?
泡の状態はどうか?
渡すタイミングは合っているか?
落ち着いたときなら順番に確認できることが、忙しさの中ではつい抜け落ちる。
丁寧にやるのはもちろん、忙しくても抜けない手順にすることが必要だと感じました。
自分のお店では泡をどうするか?
行きつけのお店での基本の反復とイベントでの実践。
同じクラフトビールを、片方では時間をかけて泡をつけ、もう片方では泡なしで次々と出す。
その両方を、短い期間のうちに自分の手でやりました。
現時点での自分の考えは、基本は泡ありです。
一杯に時間をかけられる店にしたいし、待つ時間そのものを楽しんでもらえる空間を目指しているから。
古民家でゆっくり過ごしてもらう店に、回転率優先の出し方は合いません。
ただ、これはまだ2つの現場しか知らない人間の仮説です。
そして今回わかったのは、それが方針の問題ではなく設備の問題でもあるということ。
ビールラインをどれくらいの長さにするか?
どんなディスペンサーを選ぶか?
泡をどうするか?
開店してから決めることではなく、設備を決める段階でほぼ決まってしまう。
5年後の話ではなく、物件と設備を選ぶときに答えを持っていないといけない問いでした。
接客で感じた手応え
カウンター越しにお客さんと一対一で向き合い、目の前で表情がわかる仕事は、率直に楽しかったです。
長年Web制作の世界で、画面の向こうにいる顔の見えない相手に向けて作ってきた自分にとっては、まったく質の違う手応えでした。
もちろん、自分が経験したのはいい部分だけです。
お客さんが来ない平日の夜も、理不尽なクレームも、体調が悪い日の仕込みも、まだ何も知りません。
それでも、「この仕事が好きかもしれない」と思えたことは、5年後に向けた判断材料としては十分に大きい。
一歩の大きさはまだわかりませんが、少なくとも質の違う一歩は踏み出せた気がします。
みなさんはクラフトビールを飲むなら、泡ありと泡なし、どちらのスタイルが好きですか?
ぜひコメントで教えてください!
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