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2600ドルは「いくつになってもドレスを着られる世界」への投資

「海外送金」なるものを、初めてアプリでやってみた。

アプリから海外送金…なんだかその言葉だけで、ドキドキしてくる。先方から教えてもらったアプリをインストールする。見慣れないアプリのアイコンが、やけに怪しげに見えてしまう。

ほんとうにアプリからで大丈夫なのか? 以前にドレスの生地代を海外送金したときは、わざわざ銀行の窓口に出向いて行っていた。時代は変わるもので、いまはアプリで簡単に、手数料も少なく海外に送金できるみたいだ。便利な世の中だなあ。でも、50代のわたしにとっては、その便利さもなんだか怖く感じてしまう。

とまどいながらもアプリの指示通りに進み、送金金額を入力する。
2600ドル。

そう、わたしはつい最近、2600ドルを海外へ送金した。


銀婚式をニュージーランドで

わたしは春の銀婚式で「25年目のウェディングドレス」を着る50代の仕立て屋。

ウェディングドレスのお仕立てとリメイクをしている

いつもは花嫁さまのドレスをつくるわたしだが、50代をもっとワクワクして生きるために、ニュージーランドの銀婚式で再びウェディングドレスを着ることを決意した。

送金した2600ドルは、現地のサービス会社に申し込んだウェディングフォトプランの代金だ。

プロのカメラマンの撮影代金にヘアメイクと造花ブーケなどがセットになったフォトプランだ。ドレスのレンタル代金は含まれていないが、それは自分で用意する予定なので逆に好都合だった。

2600ドル。その内容からすると決して高くはないと思うのだが、ある程度まとまった金額ではある。円安もこたえる。

このお金は、ドレスの売り上げから経費と運転資金を除き、自分でパーセンテージを決めて、「貯金」「投資」「子どもたちへの投資」「自分への投資」に分け、少しずつコツコツと貯めてきたものだ。

そう、わたしはニュージーランドで、25周年の記念撮影とヘアメイクをプロにお任せすることにしたのだ。場所はテカポ湖畔の「善き羊飼いの教会」周辺。わたしたちが25年前に結婚式を挙げた場所だ。(サムネ画像の教会が善き羊飼いの教会「みんなのフォトギャラリー」より)

最初は、記念撮影をプロに頼むことも、ましてやドレスを着ることも考えていなかった。結婚25周年を記念して、家族で旅ができたらそれでいいやと考えていた。写真だってプロに任せずに、自分たちで撮ればいいだろうと。

いやでもちょっとまてよと。

わたしは秒で考え直した。やっぱり撮影を自分たちでやるのは無理だ。

例えばわたしのお客さまのなかに、「ウェディング写真は自分たちで撮ります」と言う方がいたとする。そしたらわたしは全力でプロに依頼することをおすすめするだろう。だって自分もその仕事をしているからわかる。

そこはやっぱり全然違う。仕上がりもそうだけど、大変さが。そもそも撮影ってけっこう大変だから、自分たちでやろうとしたらせっかくの記念撮影を思いっきり楽しめないと思う。

ましてやロケ、しかも海外ロケってなったらどれだけ大変か。(海外のウェディング撮影に同行した経験もあるからわかる)ヘアメイクや撮影そのものやドレスの準備だけじゃない。撮影許可に、ロケハンに、荷物の運搬に、時間管理、言葉、現地のルール、周囲への配慮、不測の事態などさまざまなことに即座に対応しなくてはならない。

そういうわずらわしさにお二人が悩まされることなく、その日をただただ「思い出に残るいちにち」としてめいっぱい楽しんでほしい。「きれい」「かわいい」「かっこいい」ってゆうてもろてウキウキ笑っていてほしい。そんな思いでウェディング撮影の仕事しとったやんかわたし自身が。

うん、ここはやっぱりプロにお願いしよう。

真夏のロケ撮影 花嫁に日傘を差しかけるわたし

でも迷っていた…理由は、年齢。

とは思ったものの、心のなかではまだ迷っていた。いや、ほんとうの若い新郎新婦ならいいけれど、この年でお金をかけて撮影まで頼むなんて、さすがにそれは大げさすぎやしないか、と。もう家族で現地に行けるだけで十分なんじゃないの? とも。

その迷いの原因は、年齢。
やはり年齢は、大きなネックになっていた。

迷いながらも、わたしは現地の(日本人向け)ウェディングサービス会社に問い合わせのメールを送ってみた。すぐに日本語で返信が返ってきた。その方のお名前から、彼女は日本人の女性で、ニュージーランドでご結婚されたのだということがわかった。

現地の状況をお伺いすると、最近ではテカポ湖周辺は観光客が増え、もう私たちが結婚式を挙げた「善き羊飼いの教会」で旅行者が結婚式を挙げることも、教会内部の写真を撮ることも難しくなっているという。

とにかく旅行者が多く、撮影も大変なのだとか。ここはやはり、プロにお願いしたほうが良さそうだ。

とはいえ、ほんとうのウェディングじゃないし…とわたしはまだうじうじ悩んでした。お金のことというよりも「この歳で、大げさにするのは恥ずかしい」という気持ちが強かった。

その方に相談すると、ニュージーランドでは年齢に関係なく結婚記念日にドレスを着て記念撮影されますよ、とのこと。60代、70代のウェディング撮影をしたこともあるんですよ。とおっしゃる。

そうか。

そしてその担当の方から、「参考に」と、見本の写真がいくつか送られてきたので見てみる。

そしたらさ、、、見本のお写真は若いお二人ばっかりなのよ。(当たり前か)

若くて美しい新郎新婦さんたちが、テカポ湖を前に寄り添ったり、手を繋いだり、腰に手を回して体を寄せ合ったりしている。ルピナスの咲くお花畑をあははうふふと駆け回り、「つ〜かまえた」「キャ」なんて見つめあっている。(すいませんあくまでもわたしの妄想です)

それを見た瞬間、わたしは思った。

やっぱ無理。

ちょっと、考えます。とその方にメールを送った。

お金をかけるから本気になれる

若いカップルのあははうふふ写真にすっかり「無理」と思っていたわたしだけど、どうしてもあきらめきれない。

というのも、やっぱりお金をかけてプロに頼むと、自分自身が本気になれると思うからだ。

自分たちで撮影するにしても、記念撮影をするならやっぱりもうちょっと痩せてきれいになっておきたいじゃない。そうなるとわたしの性格上、ある程度お金をかけたほうが「自分磨き」に力が入り、ダイエットも成功しやすいと思うのだ。

ダイエットだけじゃない、節約も、英会話も、「お金をかけたほうが」ぜったいにうまくいく。だってせっかくお金をかけたのに、無駄にしたらもったいないって思って、「本気になれる」から。

「本気になる」代金としての2600ドルなら全然ありじゃないか。

迷いが消えたきっかけ

あきらめきれないわたしは、またサービス会社の女性に連絡をしてみた。この時点でもじつはまだ迷っていた。(しつこい)

「迷ってます。この歳でヘアメイクまでしてもらうなんて大げさだし、ちょっと恥ずかしいかなと思っているんです」

と、素直な迷いをぶつけてみた。

すると、その方が、一枚の写真を送ってくださった。

その方ご本人と、ニュージーランド人の旦那さんが、和装姿で微笑んでおられるお写真だ。日本に帰国されたときに結婚30年を記念して撮影されたものだという。

仕事柄、こういうのを体験しておくのも大切だということで、振袖を着て、きちんとヘアセットとお化粧もしてもらったそうだ。

とても素敵だった。

「いくつになってもキチンとお化粧してもらって、ちゃんと撮影してもらうのってやっぱり大切だなと思いました」


その一枚の写真が決め手となった。

そうだよ。

いくつになってもドレスや振袖を着ていいし、ヘアメイクをしてもらって写真を撮ってもらってもいい。(あははうふふまでは、しないけどね)

これはただの思い出旅行や記念撮影なんかじゃない、50代をワクワクして生きるためのものなんだ。

わたしはかねてから、日本でももっと結婚記念日にドレスを着て写真を撮ったらいいのになと考えていた。50代だけじゃなく、60代、70代、80代のドレス姿も素敵じゃないか。

かつてわたしがウェディングドレスをつくった花嫁さまが、老人介護施設にお勤めで、わたしがつくったウェディングドレスを90歳のおばあちゃんが着てくれたという報告をくれたことがあった。ドレスを着てメイクをしてもらったおばあちゃんはとってもうれしそうで、輝いていたという。そうだよ。わたしたちはいくつになっても「きれい」がうれしいんだ。

そう考えると、わたしがこれから撮ってもらう写真が、いつか誰かの背中を押すかもしれないとも思えてきた。

つまりこの2600ドルは、「いくつになってもドレスを着られる世界」への先行投資なのだ。

ちっとも惜しくない。

えいやっと送金ボタンを押す

2600ドル。

アプリに金額を入力する段になると、通貨単位を設定しなくてはならなかった。わたしは急に不安になった。

ちょっと待って。通貨単位って、ニュージーランドドルであってるよね。米ドルじゃないよね?

え、米ドルだったらえらいこっちゃ。そう、ニュージランドドルは1ドル92円程度だが、米ドルだと1ドルは158円になる。(2026.1.22現在)えらいこっちゃ。

インボイスを見直すと、そこには通貨単位が記載されていなかった。見積もりには別ページに通貨単位はニュージーランドドルとある。大丈夫だと思うけどふと不安になり、確認した。

ニュージーランドドルだった。よかった。

あっぶね〜。ヒヤヒヤするぜ。

わたしは気を取り直して送金ボタンを押す。ドキドキ。あっという間だった。数時間後には、2600ドルはニュージーランドに送金された。

すごい。

これでわたしは、「いくつになってもドレスを着られる未来」へ投資できた。

やったった。

I'm done!


2001 善き羊飼いの教会

あとは…本気で痩せるだけだな。




「ニュージーランドで25年目のウェディングドレスを着る」この挑戦の過程は、noteでリアルタイムに綴っていきます。「仕立て屋の私が50代の私に贈る25年目のウェディングドレス」マガジン(無料)にて、ダイエット、節約、ドレス制作の泥臭い過程も、全部さらけ出していこうと思っています。よかったらまた覗きにきていただけたら幸いです。


そして後日。

まさかの結末!

25年目のウェディングドレス、完結編はこちら↓




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