戦略的再起動 ⑤ 「何もしないために旅に行く」:Tabiloという答え ーコード経験ゼロで、AIと1,000時間でアプリを作った話ー
ここまでの4話で、社会の現状、3つの原則、4つのレベル、そして日本人の旅行の再定義を書いてきました。最終話となる本稿では、そのすべてを社会に実装するために作ったTabilo(タビロー)というアプリの話と、そこに込めた「これからの旅のかたち」について書きます。これはまだ、成功した起業の話ではありません。リリースから3ヶ月、ユーザーは一桁です。それでも私は、この概念は社会に必要だと信じています。
■ 1. 旅行好きではなかった私が、「旅」を冠したアプリを作った背景
私は、社会人になってからほとんど旅行に行っていません。理由は単純で、混雑が嫌で、自宅が一番落ち着くと信じていたからです。連休に渋滞する高速道路で家族サービスのために遠出するくらいなら、家でゆっくりしたほうがよほど整うと本気で思っていました。その私が、なぜTabiloという「旅」を扱うサービスを作ったのか。答えは、定義を変えたからです。旅行という言葉の定義を、「自分を整えるための、環境を変える手段」として再定義し直した瞬間、これはサービスにできると確信しました。
詳しい「旅行の再定義」は第4話で書きました。ここでは、その再定義を、ひとりひとりの日本人が体験できるように、サービスの形にしたことを書きます。
■ 2. コード経験ゼロの私が、AIと1,000時間でアプリを作った話
私はこれまでコードを書いたことが一度もありませんでした。職歴は、飲食業の他、toCサービスのカスタマーサポート、マーケティング、プロダクトマネージャー。すべて事業側の人間で、エンジニアではありません。そんな私が、なぜiOSとAndroidのアプリを作れたのか。答えはたった1つです。AIと一緒に作ったからです。
AIに丸投げしたわけではありません。私はClaude CodeとChatGPTを併用しました。片方が出した実装を、もう片方にレビューさせる。片方が見落とした観点を、もう片方が拾う。AI同士で議論させ、その結論を私が最終ジャッジする、という3者で開発を進めました。それでも、1,000時間かかりました。
ツールの操作方法すら分からず、AIに何を聞けば良いのかさえ分からなかった最初の数ヶ月は辛かったです。AIは賢いですが、何を聞かれているか分からない質問には、賢い答えを返してくれません。「分からないことが分からない」という状態を、自分の質問力を上げることで突破していくしかないわけです。何度修正してもバグが消えない時も大変でした。「ここを直せばいける」と思って直すと、別の場所が壊れる。何日もこのループの中で、心が折れかける時もありました。副業として、平日の終業後と週末に時間を捻出していました。家族との時間、自分の睡眠時間、友人と会う時間。多くのものを、この1,000時間に差し出しました。それでも、2026年3月5日、TabiloはApp StoreとGoogle Playに無事リリースされました。
■ 3. 62メディア掲載、ユーザー1桁の現在地
リリース後にプレスリリースを打ったところ、62のメディアに転載されました。これは数字としては悪くありません。ただ、ユーザー数はまだ一桁です。皆さんに読んでもらう頃にはユーザーがもう少し増えているかもしれませんが、外側は成功に見えて、内側は焦りでいっぱい、というのが率直なところです。事業の成長スピードを早くしたい。早く100人、1,000人に届かせたい。
それでも続ける理由は、第1話で書いたことに尽きます。この国にいま、戦略的再起動のスキルや習慣が必要だと本気で思っているからです。私は心療内科の診療の現場で、医療が本気で救えるのは、すでに症状が出ている人たちが中心であることを内側から見ました。グレーゾーンの人たちは、自分でなんとかしなければいけない。けれど、そのための知識を持っていない。ここに、いまの日本でいちばん大きな空白があると私は思っています。この空白に、医療ではない方法で、生活側から伴走できるサービスを置く。それがTabiloの存在意義だと思っています。
■ 4. 3つの原則を、Tabiloにどう社会実装するか
Tabiloで実装している考え方を3つだけ書きます。いずれも第2話の3原則に対応しています。
① 判断ゼロ―設計の原則の社会実装。Tabiloは、今の自分の状態をチェックすると、AIがその状態に合った「整い方」を提案してくれます。ユーザーが選ぶ必要はありません。SNSで「最適な休み方」を検索する必要もありません。判断疲れを起こさせないことが最優先です。
② レベルに応じた提案―段階の原則の社会実装。提案は、Lv0からLv3まで段階で出ます。「今日は近所のコンビニまで5分散歩」というLv0レベルの提案もあれば、「1泊、目的地を1つだけ決めた小さな旅」などLv3レベルの提案もあります。状態に合わせた内容を提案する、というのが、Tabiloの中核機能です。
③ 行動を入り口にした言語化―観察の原則の社会実装。世界的に見ると日本人は、感情の言語化が文化的に得意な方ではないと思います。だからTabiloは、行動を起点にして、結果として自分の状態が言語化される設計にしています。「散歩に行く」を選んだ後で、どうだったかを記録する。これを繰り返すうちに、自分の状態への解像度が、自然に上がっていきます。3原則、3つの社会実装。これがTabiloの設計思想です。
■ 5. 100人目の、あなたへ
Tabiloはまだ、100人にも届いていません。私が想像している100人目のユーザーは、こういう人を想像しています。
30代後半、IT系企業で働く、東京で一人暮らしの方。夜23時、ベッドに入ってからもInstagramを30分流し見続けてしまっている。気持ちはモヤモヤしているが、明日も、7時起き。「今日はあと寝るだけ」と思いながら、ふとアプリストアを開いてTabiloに気づく。自分の状態をチェックをすると、「ひとりで小さな喫茶店、コーヒー1杯」と提案が出る。「あ、これいいかも」と思って、明日のカレンダーにメモする。
たぶん、これを読んでいる方の中にも、こういう日があるはずです。誰にも頼れず、頼っていいかも分からず、それでも明日も働かないといけない、そういう日です。そういう日のあなたを、医療ではない側から支える仕組みを作っています。第1話で書いた「日本という国の存続に関わる問題」というのは、こういう日の皆さんを、何人見過ごしてしまうかという問題です。
この5部作を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。もしよければ、Tabiloをダウンロードして、今の状態チェックから始めてみてください。きっと、いまのあなたに、ちょうどいい再起動が見つかります。
▶各回の記事へのリンク
第1話:https://note.com/takehiro_sumida/n/nfbd40b77e83d
第2話:https://note.com/takehiro_sumida/n/n9dcb62009e51
第3話:https://note.com/takehiro_sumida/n/nddac5655b890
第4話:https://note.com/takehiro_sumida/n/n6779080388d7
▶ Tabilo(iOS/Android):https://www.tabilo.jp/lp-01
■ 著者:角田岳大(すみだたけひろ)
飲食業 → 大手通信事業者コールセンター → 宅配クリーニングサービス(CSMgr/PMM)→ 心療内科オンライン診療サービス(PdM)と、業界をまたいで転職。旅行業の登録資格「国内旅行業務取扱管理者」を保有。
2026年3月、コードを書いた経験ゼロからAIと1,000時間で、iOS/Androidアプリ「Tabilo(タビロー)」を副業でリリース。リリース後のPR記事は62メディアに転載。医療業界の内側で「医療では救えない領域で疲弊する人」へのサポートの必要性を感じてきた当事者として、日本人のための新しいセルフケア体系「戦略的再起動」を提唱している。医療と旅行、二つの業界の知見をひとつの体系にまとめている試みは、日本でも例が少ない。
X:@TakehiroSumida
Mail:sumida@tabilo.co.jp
Tabilo(iOS/Android):https://www.tabilo.jp/lp-01
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