モンテレイで観たチュニジア戦は、アウェイのはずなのに最高にホームだった
夜のスタジアムが、青く染まっていました
ワールドカップ2026、日本対チュニジア戦。会場はメキシコ・モンテレイのエスタディオ・BBVAです。観客は、およそ7万1000人。
もちろん、日本人のサポーターも、たくさんいました。でも、青いユニフォームを着た観客のほとんどは、メキシコの人たちだったんです。
僕はこの夜、アウェイの地で「最高のホーム」を体験することになります。
※本当は、このチュニジア戦をはじめ、観戦した全ゲームは、熱気ホカホカのうちに書きたかったんです。でも、現地へ移動して、応援して、いったん地元に戻って仕事して、また移動して、応援して……なんてことを繰り返してたら、あっという間に日にちが経っていました。
で、やっと投稿する余裕ができたのが今日。なので、今日から3日連続で、僕の「2026年夏の振り返り」を一気にアップさせてください。
国境を、歩いて越える

今回の観戦は、移動からして、ちょっと面白い体験でした。
僕が今回利用したのは、CBX(Cross Border Xpress)という仕組みです。日本で暮らしていると、国境を歩いて越える機会はまずないので、ちょっと詳しめに説明しますね。
CBX(Cross Border Xpress)
アメリカ・サンディエゴ側のターミナルと、メキシコのティファナ国際空港を、全長約120メートルの屋内連絡橋で直結する国境越えルート。2015年開業。ティファナ空港発着便の搭乗券を持つ利用者だけが通行できる。
今回の移動ルート、流れは以下のような感じです。
まず、車でサンディエゴへ向かいました。CBXのターミナルに車を停めたら、搭乗券を見せて、屋内の連絡橋を歩いて渡るんです。
橋の途中には、アメリカとメキシコの国境線があります。飛行機にも船にも乗らず、スーツケースをゴロゴロ引きながら歩いて国境をまたぐわけです。
渡った先でメキシコの入国審査を受けたら、もうそこはティファナ空港の中。あとは国内線に乗るだけ。
メキシコ国内のフライトなので、航空券もぐっとリーズナブル。アメリカ側の空港から国際線で入るのとくらべて、時間もお金もかなり節約できてしまいます。
大陸で暮らしているからこそ味わえる、ちょっと不思議で、めちゃくちゃお得&便利なルートでした。
ティファナからモンテレイまでは、飛行機でおよそ3時間。試合前日のうちに現地入り。
着いた当日は、現地の人たちと食事を楽しみました。思い切り応援するためにも、しっかりエネルギーを補給しておかねばですから。
明日に備えて早めに休もうと思ったものの、すでに気持ちが高ぶっているのか、なかなか寝つけませんでした。
開始4分で、試合が動いた

モンテレイは、とにかく暑い。数分に1回くらい、自動的に「あっつ~いッ!!!」と口から出てしまうと言えばわかってもらえますかね。とにかく暑い(笑)
それほどの暑さなので、キックオフが夜10時という遅い時間なのも納得です。スタジアムには空調がなく、夜になっても蒸し蒸し。蒸し殺されるんじゃないかと思うほどでした。
さて、チュニジア戦。初戦でオランダと引き分けていた日本にとって、なんとしても勝ちたい一戦です。
22時キックオフ
ホイッスルが夜気を割って響きます。日本の選手たちは、立ち上がりから前へ、前へ、さらに前へ。まさに熱風を切り裂くような勢いでした。
開始4分、日本先制
開始4分。左サイドを中村敬斗が縦に突破して、低い折り返しをペナルティエリアの手前へ。受けた鎌田大地が、DFの影をくぐるように合わせると、敵のゴールネットが揺れました。
1対0。日本の先制です。
Japanの連呼が、スタジアム全体に響き渡ります。あとで知ったのですが、これが日本代表のワールドカップ史上最速ゴールだったそうです。
前半31分、追加得点
中盤でボールを受けた上田綺世が、ためを作らず右足を振り抜きます。強烈なミドルシュートがゴール左隅へ吸い込まれて、2対0。
張り詰めていた圧が、一気に解放されたような雰囲気に包まれました。日本がリードしたまま、前半を折り返します。
後半も、青い戦士たちは止まらない
ハーフタイムを挟んでも、日本の勢いは落ちません。ボールを奪えば、即座に縦へ。サイドチェンジで相手の守備を翻弄していきます。
Japan、Japanと、チャントのリズムがスタジアム中で刻まれていました。
69分、3点目
上田綺世のスルーパスがDFラインを突き抜けます。右から抜け出した伊東純也がGKと1対1になり、冷静に右足で流し込みました。
3対0。スタンドの青い波が、大きくうねります。
83分、さらにダメ押しで4対0
伊東のパスを受けた佐野海舟が、右サイドの深い位置から低いクロス。飛び込んだ上田綺世が、高い打点のヘディングで合わせて、ボールはゴール右奥に刺さりました。
4対0。この夜、上田は2得点めです。
1試合で4得点は、日本代表のワールドカップ最多得点記録なのだとか。史上最速ゴールに、最多得点。しかも、しかも、この試合はワールドカップ通算1000試合目という節目のゲームでもありました。
そんな記録オンパレードの夜に立ち会えたのだから、運がいいとしか言いようがありません。
スタジアムの鼓動と一体化した90分間
あと、僕が何より驚いたのが客席のムードです。
スタンドのあちこちで、揺れる青い波。その光景は、前の試合でも目の当たりにしていました。
でも今回はそれだけじゃなく、日本への声援が四方八方、それこそスタジアム中から飛んでくる感覚があったんです。その声の主のほとんどが、メキシコの人たちだというのには、ホントびっくりしました。
日本のユニフォームを着て、日本人に負けないぐらいの熱量で応援してくれるメキシコの人たち。スタジアムの中だけじゃありません。街中でも、みんなが日本を応援してくれている印象でした。
なぜ、こんなに日本を応援してくれるのか
「メキシコの人たちって、どうしてこんなに日本推しなわけ?」と、不思議でした。
そんな僕に、オーストラリアの報道局だという人が質問をしてきました。「なぜメキシコ人は、こんなに日本人のことが好きなのか」と。
僕に聞かれても、わかるわけないじゃない。僕自身も、なんでだろうって考えてたところなんだから。
「共通点があるからじゃないですか」と、一応、それらしく答えておきましたけど。
コンテンツの持つ力
あとからちゃんと調べてみると、日本大好きなメキシコ人の背景にあるのは、「日本のコンテンツ文化」のようなんです。
メキシコでは、1970年代から『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『マジンガーZ』といった作品が放送されていて、アニメ文化が早くから根づいていました。
1996年には『ドラゴンボールZ』がスペイン語吹き替えで放送されて、国民的なアニメとして定着します。ここで日本アニメ人気に火がついて、その後も『ポケモン』『ナルト』『ワンピース』、サッカーつながりなら『キャプテン翼』と、日本でおなじみの作品が次々に浸透していきました。
半世紀にわたって、日本の物語がメキシコの茶の間に届き続けていたわけです。灼熱の夜のスタジアムに響きわたる青い声援は、そんな積み重ねの上に生まれたのでしょう。コンテンツの威力って、半端じゃないなと再認識しました。
実はこのコンテンツの話を掘っていくと、「タケシ」という僕の名前につながる面白いエピソードにもたどり着きます。が、この記事に書くと長くなるし、なんの記事だかわからなくなるので、改めてまたお話します。
アウェイの地で知った、最高のホーム感

青いユニフォームを着たメキシコの人たちで、埋め尽くされたスタジアム。そこで観た、4対0の日本代表の圧勝劇。
地球の裏側にある異国の地。完全にアウェイのはずの場所。それなのに、強く体感したのは、まちがいなく「最高のホーム感」でした。
国境を歩いて越えた先に、こんな夜が待っているなんて。ワールドカップは、試合の中身の感動だけじゃなく、現地の人たちの熱気や心の温度まで見せてくれるものなんだと、心底からグッときました。
このあと僕は、家族と合流してダラスへ向かったのですが、その話はあらためて明日アップします。良かったら、また読みに来てください。
