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manatsunosaru
小説・自己中恋愛ラプソディ⑨
電話の相手は雅史の友人だった。
「もしもしエリちゃん? 雅史にキスしたって本当?」後ろで男友達らしき数人の声が聞こえる。
じつは雅史は友人同士の間でいじられキャラだった。気が強くて独特の雰囲気もあるエリと大人しい雅史のカップルは異色だったため、面白がられているのは以前からエリもなんとなく分かっていた。
エリは一瞬でそれを理解し腹が立った。しかしここで怒るとまた話のネタになるだけだ。そう思ったエリは無難な方法を取ろうと思い、素直に「そうだよ」と認めた。すると電話の向こうで驚きや笑い声で盛り上がる様子が分かった。
その集団の中に雅史もいたのだろうか。エリは友人になめられている雅史を憎らしく思い、そして自分のキスを茶化されたことも許すことができず、二度と雅史に連絡するまい、と勢いで連絡先を消し、雅史への想いを強制終了させたのだった。
「そんなこと知らなかった」雅史は愕然とした。そもそもなぜキスされたのか、理由すら知らなかったのだ。こんなにも自分を想ってくれたエリの本心を知って驚くのも無理はない。
「好きだったからに決まってるじゃん」告白しているのか怒っているのか、眉を吊り上げてこちらをきっとにらむ。
エリの目はちょっと怖くもあったが、エリらしいといえばエリらしい。
「びっくりしたけどちょっとうれしい」それが雅史の素直な気持ちだった。
エリは黙ったまま歩き続ける。
「これからも仲良くできたらいいな」雅史は心からそういった。結婚したとしても、友人関係を続けていくことはできるだろう。
「結婚するんでしょ? じゃ無理じゃん」エリは雅史の純粋な希望をバッサリと一刀両断した。
「どうして」雅史はキョトンとした。
「だって不倫でしょ」
