小説・自己中恋愛ラプソディ⑧
エリの真意はというと、これが彼女の精一杯の告白だった。
別れを切り出したのは自分。就活でイライラしていたことがきっかけだったが、それだけではなかった。エリはどうしても譲れない将来の夢があった。「幼いころからあこがれていた地元企業の第一線で働きたい。そこで国内外を飛び回りたい」と。
卒業後もつきあったまま、遠距離の雅史に会いにいくこともできたかもしれない。だが、じっくり愛を育む余裕はないだろう。いまのようにふたりでなんとなく、ぼんやり過ごす時間などもう二度とやってこない。
自分もいつか結婚するだろうが、遠距離にいってしまう雅史との結婚は今のところ考えられない。遠くない未来に必ず別れが来る。であれば、自分を想ってくれる雅史を中途半端に繋ぎとめるなんてことはできない。
雅史にすぐ恋人ができるとは思いもよらず苦しんだが、それは自分の勝手な言い分であることも重々承知していた。
手を伸ばせばまだ取り戻せる場所にいても、ふたりの間には見えない厚い壁が立ちはだかっていた。これから、その壁が厚くなることはあっても薄くなることはない。
最後に妙な心残りをして別れる訳にはいかないが、このまま何事もなく終わるのも嫌だった。大人の対応をしようと我慢しようにも、エリもそこまでは割り切ることはできそうにない。ことばで伝えるには足りないし、自分のいない人生で「幸せになって」なんて嘘っぱちはいえない。
これが本当の最後だと思うと勝手にからだが動いた。あんなキスで雅史に本当の気持ちが伝えられたとは思わない。ただ、自分の中で初めてひとつ何かを越えられた気がした。またいつか、雅史に連絡したくなる時が来るかもしれない──。
ほんの少しだけ、淡い希望を託してエリはしばしの別れをするつもりでいた。
それが卒業式から数か月後、エリの元に電話がかかってきたことで事態は一変した。
