小説・自己中恋愛ラプソディ④
「うん。でも別れたわ。1人に戻って2年になるかな」
エリは就職先の同僚と出会って3年で結婚し、2年ほどで別れていた。
「そうなんだ」少し驚いたそぶりを見せたが、離婚のことも雅史は知っていたので、予想通りの答え。結婚の話題が出たからには自分のこともいっておこうと、「ぼくはもうすぐ結婚するよ」と伝えた。
「へえ」エリもまた雅史の結婚については友達から聞いて知っていた。「わたしの後に付き合ったあの人?」
エリとは就職が決まったころから不穏な空気が流れていた。正確にいうと、雅史は変わらずエリのことが好きだったが、エリは就職活動がうまくいっていないこともあり、当時はいらだっていた。
雅史はそれでもエリが落ち着くのを待っていたかったのだが、一方的に別れを告げられてしまい、その直後に今の婚約者が自分を好いてくれたので付き合うことにした。
婚約者は積極的に「愛してる」「好き」と分かりやすいことばで好意を表現してくれる。雅史にベタぼれなのは明らかだった。雅史からの一方通行の愛のようにも見えたエリとの恋愛とは真逆で、見た目や性格もまあまあ好みだったのでそれなりにうまくいっていた。
エリのように、不安定な関係なのに放っておいてもわき出てくるような思いは婚約者に感じなかったが、長く続くカップルというのはこういうものなのだろう、と自分を納得させた。
エリは婚約者についてはほとんど何も知らなかったが、「ほかの人と付き合うことにした」というのは雅史本人から報告していた。しかしそれについてエリは多くを語らなかった。
完全に自分のことを吹っ切っているのだろう、と理解した雅史はなんともいえない気持ちだったが、余計なことを考えないようにしていた。
時間をかけてエリを忘れてきていたが、まだその思いは未だに微かに残っていたかもしれない。
「うん、そうだよ」
「うまくいってたんだね、おめでとう」こちらを向いてにっこりするエリ。
「ありがとう」かつていつも横にあったエリの笑顔を久しぶりに見た雅史は笑顔で返した。
