小説・自己中恋愛ラプソディ⑤
しばらくの間、また他愛のないことをしゃべっていたが、エリは思い出したように話を戻した。
「あの子のこと、好きだったんだね」少し下を向いてぽつりという。
「あの子って婚約者のこと?」
「そう」
「好き……うん好きだよ」少しだけためらう雅史。
「けど?」すかさず突っ込んでくるエリ。
「エリと別れたし」雅史は当時のことを思い出した。
本当はエリのことが好きだった。
でも振られてしまった以上、自分がどうあがいてももう戻れないだろう。目の前の彼女に向きあうことがエリへの苦しい思いを紛らわせた。そして極めつけはエリの結婚。これ以上、エリへの未練は不毛でしかない。彼女との結婚を決意するのはごく自然な流れだった。
「わたしと別れたから付き合ったの? わたしより彼女が好きになったから、じゃなくて?」
「……そうだよ。だってエリと別れたから」先ほどと同じせりふを自信なさげにつぶやく。核心をつくエリのことばに婚約者に対する罪悪感が沸いてきたので、そっぽを向いた。
「なんでわたしが好きなのに別の人と結婚するの」
思わぬ言い分に雅史は目を見開いた。「いや、エリが先に結婚したんじゃん」誰もがそう言いたくなるに違いない。
「そうだけど、あの時のわたしは和之……元夫が一番好きだったし結婚したいと思ったんだもん。でも結婚したら違ってたのが分かったから別れたの。わたしはその時の自分の気持ちに忠実だっただけ」元夫の名前は和之というらしい。エリはなにも後ろめたいことがないようで、実に堂々としていた。
「そうかもしれないけど」持論を展開するエリに雅史ことばを失った。
「でもあなたはわたしが好きなのに彼女と結婚するんだ」立て続けに攻めてくるエリ。
雅史はひるんでいたが、理不尽な気がしてきた。言われっぱなしでなるものか。「そういうこというけど、エリはぼくのことどう思ってるの」
