小説・自己中恋愛ラプソディ⑥
「好きよ」ケンカでもないのに売り言葉に買い言葉かのようにエリは返してきた。
「え?」まさかの答えに雅史は耳を疑った。付き合っている当時ですら聞けなかったことが、こんなに直球で聞けるなんて思うはずもない。動揺したがうれしいのも事実だった。
「雅史くんと別れた時のわたしは、ちょっと不安定だったの。だから別れたあとも後悔してた。でもわたしから終わらせたことだし」向こうからやってくる自転車をよけるため、いったん止まって通り過ぎるのを待ってからエリは続ける。
「仕事が始まると忙しくなって色々考えている暇もなくなったし、そのうち適当に好きな人もできた。──あ、適当っていっても、その時はすごく好きだったよ。それでお互いに結婚したくて結婚したけど、うまくいかなくて別れたの。難しいね結婚て」エリは過去を思い出したらしく、少しだけ眉をひそめる。
エリの結婚生活というのはどういうものだったのだろう。具体的に聞くのもはばかられたので「そっか」とだけ雅史はいった。
「うん。それから雅史くんのことをよく思い出すようになってた」
エリは就職してから心境の変化があったらしい。学生時代には一切見られなかった雅史への思いが素直にすらすらと出てくる。付き合っていた頃は自分のことなど興味があるのかないのか分からなかったのに、これは本当にエリなのだろうか、と疑いたくなるくらいだった。
少々混乱していた雅史は「だったら連絡くれたらよかったのに」というのが精いっぱいだった。
「連絡先、消したからできなかった」
「どうして?」
「それは……」一瞬いい淀んだがエリは覚悟を決めるといった。「雅史くん、わたしがキスしたこと、友達にいったでしょ」少し口をとがらせてエリはいった。
いきなり話が飛んだので雅史は何のことか戸惑った。その様子を見てエリは続ける。
「卒業式の日、ふたりでお茶して別れる時。キスしたでしょ?」
