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「小さな活版印刷機」をカスタムして、色んなインキ・絵の具で印刷してみた

学研 大人の科学マガジン 小さな活版印刷機

最近、「小さな活版印刷機」が思いのほかおもしろくてハマっていました。

今回は、初回組み立てから初印刷、その後の本体カスタムや、色んな表現の試行錯誤した様子を紹介します。

我が家の「小さな活版印刷機」カスタムと
試行錯誤した印刷物たち


◾️【初回】 組み立て〜初めての印刷まで

【◎】「組み立て方」は意外と大丈夫

最初は組み立てるのが大変なのかと思って始めたんですが、そこは意外と大丈夫でした。同梱されているマニュアルも丁寧だし、公式が動画も出してくれているので、ひとつひとつ確認しながら進めていけば工作が苦手な人でも30分から1時間もあれば組み立てられると思います。

↓興味があるけど組み立てが不安という方は動画を先に確認してみると良いかも。

しかし、問題はこの先。完成した活版印刷機を眺めて、さあ印刷をやってみようとページをめくった先に恐ろしい工程が待ち受けています。

【!?】「使い方」に魔物が潜む

意気揚々とマニュアルの「使い方」をめくった途端、急に今作最強の敵とエンカウントします。

「1 活字をはさみで切り離す」
え、これ、全然進まないし、すっごい大変なんですけど!?

しれっと書いてますけど、これ30分じゃ済まない大仕事です。あと、準備なしで始めると多分大変なことになります。血文字で書かれた以下のメッセージをご確認ください。

  • ハサミで切った勢いで飛んでいく活字
    →私は何文字か無くしそうになって机の下を探し回りましたよ!
    →ボウルとか受け皿を用意してその上で切った方がいいですよ!

  • 同じく、切るたびに飛んでいくバリ
    →しばらくは、作業した場所で何かを動かすたびにバリが出現しますよ!
    →食卓でやらない方がいいですよ!

  • 山積みになっていく切り取られた活字
    →一度混ぜてしまったら、いざ文字を探すときに絶対当たらない神経衰弱みたいになって絶望しますよ!
    →クスリケースとか小物入れを用意しておいて、「あ行」・「か行」みたいに入れていった方がいいですよ!

このあとも、活字を活字台にセットする、インキを練る、など難敵は登場しますが、これは失敗したり汚れたりしつつも楽しいんです。これをやること自体がこのキットの醍醐味だと思いますし。

しかし、この活字を切り離す作業は想定していない苦行。私はここを奥さんに手伝ってもらってなかったら挫折してたかもしれません。ここだけは一人きりで作業するのはオススメできません。

一人暮らしの方は友達を唆して家に招くなどの小細工をしましょう。ご飯を奢るくらいで手伝ってもらえるなら安い物だと思いますよ(何を勧めとるか

◾️【2回目〜】 カスタムで使い勝手を上げる

【◎】台にねじ止め+滑り止めで安定感アップ

完成後、板にねじ止めして安定感アップ!

これはマニュアルにも記載されていて、底面に通すビスとビス穴まで付いています。適当なサイズの板だけ用意すれば、付属のプラスドライバーで4箇所止めれば簡単に固定できます。

「小さな活版印刷機」はプラスチック製なのでどうしても軽く、ハンドルを下ろす時に倒れたりズレたりする可能性があります。何度も使うつもりがあるのであれば、この台取り付けはオススメです。

写真には写っていませんが、私は板の底面に滑り止めも取り付けています。ここまでやるとちょっとやそっとではズレない安定感が得られて、一気に実用的な機器感が出てきます。

【◎】活字の保管はクスリケース

100均で買ってきました

これも、何度も使うつもりがあるならオススメのカスタムです。文面を決めて活字を探すとき、活字が細かく分類されていないと、山の中からたった一文字の正解を探さなければならなくなります。これは本当につらい。印刷の前にやる気がなくなります。

しかも、活字は左右反転しています。
「ソ」と「ン」とか、「N」と「Z」とか、「l(小文字のエル)」と「I(大文字のアイ)」を見分けていると本当に神経が衰弱します。小分けになっている中から探すのであればこれらの問題は回避できます。ぜひクスリケースなどを使ってください。

映像なんかで見ると、活版印刷所では壁面にずらっと活字の棚が並んでるみたいなんですよね。ああいうのやりたいなと思っちゃうんですけど、今のところこれで良しとしています。

↓2025/11/3追加。本物の活字ケースを入手しました

◾️【いろいろ実験】 いろんなインキ・絵の具を試してみた

◎:まず付属インキ。さすがのクオリティで雰囲気ある!

付属しているインキ
真っ黒でもなく濃淡を感じるグレーで綺麗。さすが。

活版印刷と聞いて思い浮かべる、古い新聞などの硬質な活字のイメージそのものが目の前に現れます。自分で一生懸命組み立てて、活字を組んで、インキを練って、ついに印刷された文面を見ていると「そう、これこれ。いいよねえ・・・」としばらく見惚れてしまうと思います。そして凹みの部分を指でなぞりたくなりますが、乾くまでは気をつけて・・・!

また、この黒インキはアクリル塗料だそうです。手についても石鹸で洗えば落ちますし、洗った洗面台が真っ黒になったりすることもありませんので、その辺は安心してください。

活字台はこんな感じ。鏡文字だし、センター位置を考えながら配置する難しさがある

◎:水彩絵の具でカラー印字!

カラーにしたくなって、水彩絵の具の「あお」でやってみた

絵の具でもできるとのことで、サクラマット水彩を使ってみました。
付属のインクより多少シャープさは損なわれるような気がしますが、期待通りの色で印字することができました。

ちなみに、アガパンサスというのは花の名前です。
↓早速、このエントリのサムネに使いました

◎:シャチハタのカラースタンプパッドで、手軽にシャープに!

シャチハタのカラースタンプ「紺青色」

色も綺麗だし、陰影もシャープでとても読みやすい。
シャチハタの技術力すごい。

これで印字する場合、先に「小さな活版印刷機」からローラーを外してしまいます。組んだ活字を直接スタンプパットに付けてインキを付け、
「小さな活版印刷機」にセットしてガチャンとやれば印刷されます。圧はかかっているので、ちゃんと文字の凹みも再現されるのが活版印刷機を使う利点ですね。

また、ローラーを使う必要がないので手軽に数枚だけ刷れるのも良いところです。ローラーでインキを練る方式だと毎回洗うのがちょっと面倒だったりするので、オススメです。


◎:シャチハタ「いろづくり」でグラデーションもできる!

同じくシャチハタの、自分でグラデーションが作れるスタンプパッド

これもやはり印影が綺麗で、手軽に美しいグラデーションが作れてGOOD!

ちょっと文字が薄い感じがするのは、インクを染み込ませる量が足りないせい。もっとしっかり染み込ませれば、しっかり濃く印字されるはず。

ところで最近「ダンジョン飯」にハマっていて、英題「DELICIOUS IN DUNGEON」が印字にちょうど良い綴りだったのでテスト印字に使わせてもらってます。


◎:色画用紙に水彩絵の具で、白文字を表現!

画用紙に水彩絵具の「しろ」

色紙に印字してみたくなり、画用紙を切ってやってみました。これも良いですね。

水彩絵の具はべったりになりがちで難しい

絵の具はかなりべったり付いていますが、結果的には良い感じにできたと思います。水の量や練り方を工夫すれば、もっと細い線の表現なんかもできそう。

◎:不透明インクで豪華な金文字風の表現もできる!

画用紙に不透明インクで「金文字」風
下の本の金文字表現を再現

ダンジョン飯のシャープな金文字表現の再現は、これでうまく行きました。文具店のインクコーナーに「用途別の最適インク」みたいなPOPがあって、濃い色の紙にしっかり印字するには不透明インクが良いと書いてあったので買ってきてやってみました。評判通りのすばらしい印字で大満足です。インクの世界すごい。

✖️:コピックはこの用途には向かない

失敗:コピックインク COPIC ink

スタンプマットにコピックを染み込ませてみたところ、これは失敗。

そもそも綺麗に印字もされないし、コピックインクは手や服に付いてしまうと石鹸では落とせないなど、想定外の事故になる可能性があります。小さな活版印刷機のインクとしては使わない方がよさそうです。
(コピックを付けてしまった活字は、除光液を付けて洗いました)

◾️【感想】活版印刷の素晴らしさ、現代のプリンターの凄さ

今回何度か活版印刷をやってみて、その素晴らしさに何度も感動しました。活字はアルファベットもひらがなもカタカナも一文字ずつそれぞれに美しいし、それが自分の手で紙に刻まれるということに何か敬虔な気持ちになりました。

活版印刷機という機械と、活字、インク、紙が合わさって、思考を遠い未来にすら伝達しうる印刷物というものを生み出す。これが活版印刷が世界三大発明の一つに数えられている意味なんだと身体で実感できたことは貴重な体験でした。文字通り、世界を変えてしまう発明だったんですね。

この体験をさせてくださった学研さん、本当にありがとうございます!
感動しました!


ただ、一方で、2025年に生きる私たちは、活版印刷がどんなに味わい深いからといって活版印刷で何でも印刷しているわけにはいきません。

インキを練って(これは水彩絵の具の混色)
1回目。活字が足りないのでまずこれで刷る
2度目の登場の活字だけを配置して2度刷り
3回登場する活字でさらに3度刷り
やっとできた! けど、明らかに濃淡に差が出ている。。。

ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字。どれで印刷しようとしても、同じ活字が何度も出てきてしまいます。

活字が足りないとなれば2度刷り、3度刷りするしかなく、結果的にインキや圧にムラが出やすくなります。これをコントロールする技術は素晴らしいとは思いますが、正直なところ効率の悪さに溜め息が出る感覚もあります。

私は何度も重ね刷りしたらバレちゃう腕前しか持ってないので、諦めてアルファベットの活字を追加注文しました。

さっきのシャチハタのアップ。

英字は一回で刷っているので均一にできていますが、「ダンジョめし」の方は、2度目に刷った「ン」だけ圧が違うのが分かりますよね。

・・・気になる。ひらがなも追加で買うかな。

こんな感じで、活字を拾って版を作り、インキを練ってテスト印刷し、調整しながら何度も刷っていくことで1枚の印刷物を作るというのは、ロマンチックではありつつも生産性には難がありすぎます。

私も仕事中には、EXCELやパワーポイントで資料を作ります。データができたらすぐに複合機から印刷するのを当たり前に感じていましたが、活版印刷を経験した最近では、これまでは何とも思っていなかった印刷待ちの時間に複合機を拝みたくなるような気持ちになります。さすがに絵面がヤバいのでやりませんけどね笑

そして大日本印刷や印刷会社の動画を見ているうちに、YouTubeのオススメがどんどんマニアックな印刷業界のものばかりに・・・いかんいかん。

私は写真を撮るので、こういう話になるとやはりフィルムカメラとデジタルカメラの話を連想します。あとは淹れるコーヒーと缶コーヒー・インスタントコーヒーの違いとか。デジタル音源とレコードの違いとか。

なんとなく、どちらかが正当、とか、本来、という言い方になりがちな論争ですが、こういうのってなんでも「そもそも用途が違うものなんだから、特性を活かして使い分ければいい。どちらも誰かに求められている素晴らしいものだ」と個人的には感じています。

活版印刷でベストセラー作家の最新刊を大量印刷しようとするのは向いていないし、現代の印刷に手作りの味わいを求めるのも向いていない。

どちらかがもう片方を飲み込む必要も、全否定する必要もない。向いている用途ごとに使い分けられれば一番豊かですよね。(もちろん、サービスとして両立し続けられるかといった問題があることは理解しています)

私は、書店に整然と並んだ現代の本を見ても素敵だと思うし、活版印刷で作られた古い本も素晴らしいと思います。「人間の手によるもの」という意味のアーティファクト(Artifact)という単語がありますが、私はこの言葉が大好きです。私も自分自身は滅びても、何か美しいアーティファクトを残せたら悔いはないという願望が心の中にあります。

Artifact(アーティファクト)

ちょっと壮大な話になりすぎました。今回はこの辺で。

活版印刷、おもしろいので気になってる方はぜひやってみてください!

↑さぁさぁ!(押し売り

読んでくださってありがとうございます。
それでは、また!

我が家唯一のプリンター(笑

↓10/5追記:縦書きを見たいかたはこちらもどうぞ

今回は横書きばかりだったんですが、活版印刷といえば縦書きがかっこいいイメージもありますよね。四季の俳句を刷ってみましたので、興味があったら見てみてください。

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