介護保険2027年改正|「2割負担の拡大」「ケアプラン有料化」で親の介護費用はどう変わる?【元介護士10年】
「親の介護費用、2027年から変わるかもしれません」
いま国では、2027年度の介護保険制度改正に向けた議論が大詰めを迎えています。ニュースで「2割負担の拡大」「ケアプラン有料化」という言葉を見かけて、不安になった方もいるかもしれません。
結論から言うと、慌てる必要はありませんが、知らないままでいるのは損です。元介護士10年の視点で、家族に関係する部分だけを整理します。
1. いま何が議論されているのか
介護保険は3年ごとに見直されます。次の改正は2027年度。2026年の通常国会に改正法案が出され、2027年4月から新しい制度が動き出す予定です。
家族の財布に関係する論点は、大きく3つです。
利用料「2割負担」の対象拡大
ケアプラン(介護サービス計画)の有料化
施設の相部屋(多床室)の室料負担
なぜこうした見直しが続くのか。背景はシンプルで、高齢化で介護にかかる費用が年々増え続けているからです。介護保険は、40歳以上の人が払う保険料と税金、そして利用者の自己負担で成り立っています。費用が増えれば、「保険料を上げる」か「利用者の負担を増やす」か、どちらかの議論が必ず出てきます。今回の改正論議は、その両方のバランスをどう取るかという話です。

つまり、今回だけの特別な話ではなく、3年ごとの改正のたびに「負担増」の議論は繰り返されます。一度仕組みを理解しておけば、次の改正ニュースも冷静に読めるようになります。
2. 「2割負担」の拡大──うちの親は対象になる?
介護サービスの自己負担は原則1割。所得が高い人だけ2割・3割です。
現在の2割負担の基準は、単身世帯で年収280万円以上。厚労省は2025年12月、この基準を年収230万〜260万円以上に引き下げる4つの案を示しました。一番広い「230万円以上」の場合、約35万人が新たに負担増になる試算です。
ただし、急な負担増を和らげる配慮措置もセットで検討されています。
当分の間、負担増は月7,000円までを上限とする案
預貯金が一定額以下の人は、申請すれば1割に据え置く案
そして重要なのは、この2割負担拡大は2025年末の時点でいったん結論が先送りされたことです。廃案になったわけではなく、2027年度の改正までに結論を出す方向で議論が続いています。
金額にすると、どのくらい変わる?
「2割になる」と言われてもピンとこないと思うので、具体的な数字にします。
例えば、在宅で訪問介護とデイサービスを組み合わせて、月に15万円分の介護サービスを使っているとします。
1割負担なら:自己負担は月1万5,000円
2割負担なら:自己負担は月3万円
差額は月1万5,000円、年間で18万円です。年金で暮らす親にとって、この差は小さくありません。だからこそ配慮措置(月7,000円上限案など)がセットで議論されているわけです。
つまり「決まった話」ではありません。ですが、年金収入がおおよそ230万円を超える親がいる家庭は、負担が2倍になる可能性を頭に入れておくべき段階です。
3. ケアプラン有料化はどうなった?
そもそもケアプランとは、「どの介護サービスを、どのくらい使うか」をまとめた計画書のことです。ケアマネジャー(介護支援専門員)が本人や家族の希望を聞きながら作成します。介護サービスは、原則このケアプランに沿って利用します。
このケアプラン作成、実はこれまで利用者の自己負担ゼロでした。他のサービスは1〜3割負担なのに、なぜ無料なのか。「お金がかかるなら相談をやめよう」と入口でためらう人を出さないため、という設計思想があったからです。ここに自己負担を求めるかどうかが、長年議論されてきました。
「ケアプランが有料になる」と話題になりましたが、正確に言うと、自宅で暮らす人のケアプランは有料化が見送られる方向です。
有料化の対象として検討されているのは、登録制に移行する一部の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居者に限られます。
在宅介護を考えているご家庭は、いまのところケアマネジャーへの相談・ケアプラン作成は無料のままです。「お金がかかるから相談を控える」必要はありません。ここを誤解して相談が遅れるほうが、よほど損をします。
4. 施設の「部屋代」は、すでに一部で変わり始めている
もう1つ、施設を視野に入れている家庭に関係するのが、老健(介護老人保健施設)などの相部屋(多床室)の室料です。
実はこれ、「これから始まる話」ではありません。前回の改正で決まり、2025年8月から、一部の老健(その他型・療養型)と介護医療院(Ⅱ型)では、月8,000円程度の室料負担がすでに始まっています。
いま議論されているのは、その次の段階です。今回は対象外だった残りの老健・介護医療院にもこの負担を広げるかどうかが検討されており、2026年末までに結論が出る見込みです。
施設選びの際は「その施設・その部屋は室料がかかるのか」が、すでに現実のチェックポイントになっています。見学や相談の場で率直に確認して構いません。
5. 家族がいまできる3つの準備
制度が固まるのを待つ間に、できることは3つです。
① 親の年収をざっくり把握しておく 年金振込通知書や源泉徴収票で確認できます。「単身で年収230万円」がひとつの目安ラインです。
② 負担割合証を確認する 要介護認定を受けている親には、毎年7月頃に自治体から「介護保険負担割合証」が届きます。現在の負担割合(1〜3割)がここに書かれています。
③ 「高額介護サービス費」の存在を知っておく 仮に2割負担になっても、自己負担には月ごとの上限があり、超えた分は払い戻されます(一般的な所得なら月44,400円)。
負担が青天井になるわけではありません。
現場にいた経験から言うと、制度改正のたびに一番損をするのは、「よくわからないから」とサービスの利用自体を控えてしまう家庭です。負担が増えるかどうかより、使えるはずの制度を使わないことのほうが、家計にも介護する家族の体力にも響きます。迷ったら、お住まいの地域包括支援センターに聞けば無料で教えてくれます。
まとめ
2割負担の拡大は「検討中」。決定ではないが、年収230万円が目安ライン
在宅のケアプランは無料のまま。相談を控えるのが一番の損
施設検討中の家庭は「相部屋の室料」に注目。一部施設ではすでに負担が始まっており、対象拡大が議論中
制度は変わっても、「早く知って、早く動く」が最強の対策であることは変わりません。
介護について、いまから体系的に備えたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
介護がまだ始まっていない方は、まず全体像からどうぞ。 → 親が倒れる前に読んでほしい|元介護士10年が整理した「介護の備え」入口ガイド
※本記事は2026年7月時点の審議会資料・報道に基づいています。制度改正の内容は今後の国会審議等で変わる可能性があります。最新情報はお住まいの市区町村や地域包括支援センターでご確認ください。
