『少年係を呼べ!』と言った彼らが、私に残してくれた『マシマシの残業』と『温かい記憶』と【元女性警察官】
優しい人ほど、損をする。
これ、たぶん世の中の真理だと思います。
今日は
自分の損は、きっと誰かを助けているはず
という話をします。
私は元警察官です。
人の話を聞く時間が長い仕事でした。
ドラマとかでもよくありますよね、刑事の聞き込み。
警察手帳を相手に見せて、「実はいまこんな事が起きてて…」みたいな。
ドラマの終盤には犯人を追い詰め、自白させて逮捕!
でも、実際の現場はここからが長い!
発生した出来事を時系列に書類に書いて
犯人を取り調べして、書類にまとめて
犯人が言っていることが本当かどうか裏取りをして
更にそれを書類にまとめて。
あれが足りない、これはどーなった
寝ても覚めても書類書類書類。
警察業務はとにかく書類を大量に書きます。
誰かの人生を左右するかもしれないから、適当には書けません。
在宅捜査を受けている人の分の書類を書いて
今後逮捕予定の捜査記録を書いて
猟銃の申請書をまとめて
DVや男女間トラブルの書類を書いて
事故状況の書類、免許更新、相談事などなど。
体感として3:7くらいで書類を書いている時間の方が長かったと思います。
きっと今はもっと作成書類が増えているんだろうなぁ。
そしてそんな忙しいところに
毎日電話や来署相談が来ます。
私は当時少年係にいたので
少年から直接指名で電話があったり
来署した少年の話を聞くこともありました。
少年って1度警察に捕まったり補導されたりすると
少年係が担当します。
そういう子達ってすごく少年係員に懐きます。
例えば、少年たちが集まって騒いでいる、という通報があると警察官が現場に行くんですよね。
今や少年が複数いると通報される時代。世知辛い。
現場に着いた警察官は
何があったか少年達に話を聞こうとします。
すると一度警察の世話になったことがある少年達は
「少年係呼べ!そうじゃないと話さない!」とか言って
他の警察官が対応するのを物凄く嫌がるんです。
というのも、私が見てきた少年係じゃない警察官は
頭ごなしに少年達を叱る傾向にありました。
さっきの現場だったら
お前ら何騒いでるんだ!!苦情きてるぞ!みたいな感じで出会い頭に叱る。
子供だから大人が導いてあげなきゃ
早く苦情の処理をしなきゃ
って考え方になってしまうんですかね?
大人に話を聞く時は
いきなりそんな威圧的な態度取らないだろうに
なんで少年にはそんな上から目線になるんだろう
と私は何度も思っていました。
少年係員は少年たちと同じ目線で話を聞きます。
お、⚫️⚫️じゃん、何でこんなことになってんの?
から入り、少年たちの言い分もしっかり聞くんです。
すると、いきりたっていた少年もだんだんトーンダウンし、落ち着いて話ができる状態になります。
彼らもただギャーギャー騒いでいるわけではないので
ちゃんと話を聞いてもらい、解決策が見出せれば
暴れる理由もなくなるわけですね。
大人はどうしても
世間体とか権力による抑制みたいな点が働き
警察が説明するとすぐ納得して(いるようにみせかけて)くれることが多かったように思います。
一方、少年たちに「建前」は通用しませんでした。
彼らが何よりも求めていたのは
正しい理屈ではなく
「自分の言葉を、そのまま受け止めてくれる大人」の存在だったのだと思います。
あーだこーだ話してくるので、1からちゃんと話を聞き
要点を整理して、希望を聞いてあげて。
事案が終わるまで本当に時間がかかりました。
でも話を聞くことはおろそかにはしませんでした。
そこが「少年係を呼べ」っていうところに繋がるんだろうなぁと思います。
さて、警察に連絡をくれる子の話に戻ります。
少年係に電話をかけてきたりする少年達は
別に再度何か罪を犯したとか、困り事があって相談に来たとかではないんです。
内容は近況報告みたいな感じ。
不登校だった子が就職決まったんだって連絡くれたり。
あたしのこと覚えてるー?!って急に抱きついてきたり。
しょっちゅう補導されてた子が急に来たと思ったら
子供が産まれたから来たよー!抱っこしてみない??って言ってきたり。
彼らはちゃんと話を聞いてくれる“大人”がいて欲しかったのかなぁと思います。
当時の私は25,6歳。
少年達に軽く毛が生えた姉のような、
でも成人していて
学校などの同じ組織に所属していない外部の大人。
そんな存在が、彼らは欲しかったんじゃないかなと思っていたんです。
正直大変でした。
自分に会いに来てくれてうれしいという気持ちと
しんどさが同時にありました。
彼らの話を聞いている間は、私の他の仕事はストップ。
期日までに書類を終わらせるためには残業しなければいけなくなります。
上司もそれを見越してか
長く話を聞かなくてもいいからなー
と声をかけてくれていました。
でもせっかく会いに来てくれた子達の気持ちを考えると無碍にできないし
頼ってきてくれるのは
警察冥利につきるというか、嬉しい。
彼らの気の済むまで、は言い過ぎですが
ある程度時間をとって対応していました。
その結果、片付けなければいけない仕事はますます増え
私の残業時間はマシマシ。
特に少年達の対応をしていない係員は
時間内に仕事を終わらせて帰宅していました。
優しさは、損、なんでしょう。
自分の身を削ることになってしまいますからね。
でもきっと、私がしてきた損も
似たような損をしてきた人の気持ちも
誰かの心のどこかに
そっと引っかかっているんじゃないでしょうか。
「あの時、話を聞いてくれた人がいた」
という記憶はその子に残って、人生を支えることもある。
いや、ぜひ残ってて欲しい。
でないと、私の努力や優しい気持ちが水の泡じゃないか!!!
どうかどうか
私が身を削って作った時間が
彼らにとって暖かい記憶になっていますように。
以上は、自分のキャパシティ内で優しさを与えることができた話です。
ただし、それを続けすぎると
自分が削れていることに気づけなくなります。
その代償については
また別の場所で書こうと思います。
それでは。
こちらはその他の警察のお話です。
ぜひどうぞ。
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