脂質の基礎〈知っておきたい〉 | 食事 - 6
脂質は生命維持に不可欠な栄養素ですが、現代食では9割の人が「脂質過剰」になっていると言っても過言ではありません。特に20代後半以降からお腹周りに肉がつき始めた人は、当てはまっている可能性が高いです。
量・種類・酸化の3点を意識することが、脂質と正しく付き合うための基本です。
男性(2,500kcal目安):約55~80g/日(18~25g/食)
女性(2,000kcal目安):約45~65g/日(15~22g/食)
✅この記事でわかること
脂質の役割と目安量・コレステロール・中性脂肪の基本
脂質過剰になりやすい原因とリスク
6種類の脂質の特徴とオメガ比率の考え方
食事から脂質をうまく摂るコツと油の選び方
👩🏫 脂質とは
脂質は約9kcal/gで、タンパク質・炭水化物(約4kcal/g)に比べて2倍以上のカロリーを持つ効率のよいエネルギー源です。身体にとって重要なエネルギー源の1つであり、空腹時に脂質の高いものを食べたくなるのは身体が高カロリーを求めているからです。
エネルギー源としてだけでなく、身体を作る上でも非常に重要な役割を担っています。
ホルモン・細胞膜・核膜の構成
臓器の保護(内臓脂肪)
体温の保護
体のクッション(皮下脂肪)
脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収促進 など
脂質がなければ、これらの身体の基本的な機能が維持できません。
また、脂質のうち、覚えておきたいのがコレステロールと中性脂肪です。
どちらも血液中に含まれる「血中脂質」と呼ばれます。
コレステロール:細胞膜やホルモン、胆汁酸などの原料
LDLコレステロール、HDLコレステロールの2種類が存在中性脂肪:エネルギー源になる。余分は体脂肪として貯蔵される
■コレステロール
コレステロールは細胞膜やホルモン・ビタミンD・胆汁酸などの原料となる、生命維持に不可欠な脂質です。
①LDLコレステロール:
肝臓で生成されたコレステロールを体中の組織へ運搬する役割を持ち、脂身の多い肉・卵・乳製品などから摂りやすいです。
②HDLコレステロール:
血管壁に付着したコレステロールや余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す役割を持ち、魚類や大豆製品・きのこ類・海藻類などから摂りやすいです。
いずれの値が極端に高かったり低かったりしても動脈硬化や心臓病・脳卒中のリスクにつながるとされています。
脂質断ちも過剰摂取もNG、適量・バランスが重要です。
現代食では肉類が多くLDLコレステロールが過剰になりやすいため、魚摂取によるHDLコレステロールの摂取が推奨されています。
■中性脂肪
内臓や筋肉を正常に動かす、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収、体温維持など、生命維持にとって重要なエネルギーです。
しかし、LDLコレステロール同様、現代食では必要以上に摂りすぎてしまいやすく、脂肪蓄積の直接的な原因となりがちです。
原因としては以下が挙げられます。
糖質過剰
ご飯・パン・麺類・甘いお菓子・果物・ジュースなどの摂りすぎ脂質過剰
バター・クリーム・肉の脂身・揚げ物などの摂りすぎアルコールの過剰摂取
肝臓で中性脂肪の合成を促進運動不足
摂取エネルギーが消費されず蓄積
なお、糖質過剰と言っても現代人の多くは「お菓子・ジュース」は減らさずに「質の良い糖質(主食や野菜)」を減らしがちです。お菓子をおにぎりや果物に置き換えたり、お腹が空かないようにメインの食事を増やすなどして、PFC・カロリー・栄養バランスを整えることが大切です。
🔽バランスが整いやすい定食型についてはこちら
⚠️ よくある誤解と摂りすぎのリスク
「おかずを増やせば栄養価が高くなる」
「健康オイルを積極的に摂るべき」
「LDLコレステロールが気になるから肉・乳製品・卵を控えよう」
このような考え方をしている人が多くいます。
しかしこれらはいずれも脂質過剰や栄養バランスの崩れにつながりやすい考え方です。
1. おかず中心で脂質過剰になりやすい
⭐️画像作成:おかず中心NG図⭐️
おかず中心の食事では脂質が過剰になりやすいです。
なぜかというと、1日で摂る油のうち、大体はこのような比率になるからです。
20%:調理用油
80%:食材に含まれている脂質
そのためおかずを増やすほど、食材に含まれる脂質が積み重なっていきます。
お医者さんにNG出されていない限り、何かを控えるのではなくいろんなものを取り入れた食事を心がけてください。
2. 脂質の偏りによるバランス崩れ
例えば、LDLコレステロールが気になっている人がいるとします。
・LDLコレステロールが多いから、お肉は控えよう
・できるだけ乳製品や卵も控えようかな…
・代わりに健康オイル(亜麻仁油など)をサラダにかけて、おやつはナッツを食べよう!
一見、健康意識高そうに見えますが、NG判断です。
健康オイルをサラダにかけて、おやつはナッツを食べている時点で、脂質量のコントロールが難しいですし、お肉や乳製品、卵に含まれている豊富な栄養素が一気に取れなくなります。
お肉は赤身中心にしたり、乳製品・卵は1日1回は摂るなどした方が、トータルのバランスは良くなります。
3. 脂質過剰による代謝バランス崩れ
脂質の摂りすぎは代謝バランスを乱します。
健康的な体になるにはメインのエネルギー源である糖質をしっかり代謝できる身体が必要ですが、脂質の摂りすぎはその代謝バランスを乱し、エネルギーをうまく使えない身体を作ってしまいます。
脂質はエネルギーとして使うまでの工程が多く、糖質よりも使いにくいエネルギーです。そのため脂質に偏ると、エネルギー効率が落ちやすくなります。
⭐️画像があれば(TCA回路)⭐️
結局、糖質と脂質はどちらが良い悪いではなく、バランスが重要です。
特に糖質を控えすぎて脂質メインの食生活になっている人は注意が必要ですので、気をつけましょう。
🔥【実践】日々の食事での取り入れ方
1日の食事のうち20〜30%を脂質から摂ることが目安です。
男性(2,500kcal目安):約55~80g/日(18~25g/食)
女性(2,000kcal目安):約45~65g/日(15~22g/食)
「大体20~30%だと思うんですけど…」と言って食事の見た目で判断している人がいました。PFCバランスで考えましょう。
その上で以下のステップで改善できるようになるとよいです。
1 .おかず中心の食事をやめる
先ほども記載した通り、おかずは脂質がメインとなりがちです。
そのため、PFCバランスを意識しつつ、主食・主菜・副菜の量をコントロールすることが最も効果的です。
出先など栄養成分が書いてあるお店では、意識して脂質量を確認してみてください。

🔽PFCバランスについてはこちら
2. 様々な食材から油を取る
卵・豆・乳製品・肉・魚を1日1回ずつ摂ることがおすすめです。
特定の食材を控えるのではなく、いろんなものを取り入れた食事をすることでトータルのバランスが整いやすくなります。
🔽食品カテゴリについてはこちら
3. 新鮮な食材を摂る
新鮮でない食材や酸化した油を摂り続けると内臓に負担をかけ、健康を損なう恐れがあります。
酸化しかけているもの、酸化したものを摂取すると、それを体内で還元する反応が生じます。この処理のために、ビタミン不足に陥ったりします。
どうせ食べるなら美味しいものを美味しいタイミングで食べることが大切です。
📣酸化還元については今後記事にします。
🔥【実践応用】油は「酸化しにくさ」と「加熱への強さ」で選ぶ
酸化した脂を多く摂ると肝機能が低下し、日頃のパフォーマンスが落ちたりシミやくすみが出やすくなります。
酸化した油は体内で酸化ストレス(活性酸素の発生)を引き起こします。肝臓などで分解・解毒しようとするためビタミンEやCなどの抗酸化栄養素とエネルギーを多く消費してしまいます。
酸化した油を減らすだけでも、肝臓と肌の調子がかなり変わります。
⭐️油の選び方マップ⭐️
油の安定性をざっくり順番にすると、
飽和脂肪酸系(ココナッツ油、ラード、バター)
一価不飽和脂肪酸系(オリーブ油、米油、キャノーラ油)
多価不飽和脂肪酸系(ごま油、コーン油、サラダ油
オメガ3系(亜麻仁油、えごま油、魚油) ※加熱NG
亜麻仁油・えごま油・チアシードなどの健康オイルはオメガ3が豊富ですが、非常に酸化しやすいため加熱せず封を切ったら早めに使い切る必要があります。ドレッシング代わりに使うと脂質量が高くなりがちであり、小さじ1杯以上は脂質過剰のリスクもあります。保存状態によってはかえって酸化ストレスの原因になることもあるため、これらの健康オイルは脂質の量と酸化の考え方を身につけてから取り入れることをおすすめします。
💡オメガ3のサプリにはまだ期待しない
⭐️オメガ比率図⭐️
DHA・EPAなどのサプリもたくさんありますが、長期的な健康効果についてのエビデンスはまだ十分ではありません。
そのため。「サプリを飲めばOK」ではなく、できる限り自然な食事から摂ることが基本です。魚が苦手な方でも、新鮮なクルミ10g前後(ひとつまみ程度)からオメガ3を少量摂ることができます。
サプリは無意味ではありませんが、保存や酸化のリスク・摂取バランスの崩れを考えると食べ物から摂る方が安全で自然です。
✍️脂質の種類と特徴

脂質は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分けられ、
さらに、それぞれ3種類ずつ存在します。
1. 飽和脂肪酸(常温で固体)
現代人は①短鎖脂肪酸が不足しがちで、③長鎖脂肪酸が過剰気味になっています。
①短鎖脂肪酸(不足注意)
基本的に食材から直接摂ることは難しいとされていますが、「発酵性食物繊維」を摂ると体内で腸内細菌が食物繊維を分解して短鎖脂肪酸が作られ、腸粘膜の健康維持に関与します。
代表例:酪酸、酢酸、プロピオン酸
発酵食品:チーズ、ヨーグルト、味噌、ぬか漬けなど
バター:特にグラスフェッドバター
基本的にサプリは不要ですが、発酵食品が苦手な場合はサプリを検討してもよいです。
②中鎖脂肪酸
吸収が速くすぐエネルギー化されやすく、脂肪として蓄積しにくいです。また酸化しにくい傾向があります。ただし脂質であることに変わりはないため、摂りすぎには注意が必要です。
代表例:カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)
ココナッツオイル
MCTオイル
母乳
MCTオイルダイエットについて
このダイエットは脂肪燃焼効果を狙って脂質(MCTオイル)を摂るアプローチです。しかし、脂質過剰になりやすい現代では高難易度に感じますため、あまりお勧めはしません。
エネルギー補給目的としては良いでしょう。
③長鎖脂肪酸(過剰注意)
身体にとって必要不可欠ではない脂肪酸ですが、現代食では過剰になりやすいです。摂りすぎるとLDLコレステロール値が高くなり、動脈硬化などのリスクにつながります。
代表例:パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)
牛脂(ラード、ヘット)
パーム油
チョコレート(カカオバター)
動物性油と言われるものが多いです。
2. 不飽和脂肪酸(常温で液体)
現代人はオメガ6(サラダ油)が多く、オメガ3(魚から摂れる油)が少ない傾向があります。
①オメガ9
酸化に比較的強く、LDLコレステロールを下げるとも言われているため、同じ油でも調理用油におすすめです。
代表例:オレイン酸(C18:1)
オリーブオイル
アボカドオイル
キャノーラ油
アーモンド、マカダミアナッツ
②オメガ6(過剰注意)
必須脂肪酸で、細胞膜の構成や細胞機能の維持・炎症反応の調整・コレステロール値の低下・脳の発達などに欠かせません。
しかし現代人は摂りすぎの傾向があり、オメガ3とのバランスを意識することが重要です。
代表例:リノール酸、アラキドン酸
サラダ油(大豆油、コーン油、ひまわり油、紅花油など)
ナッツ類(特にピーナッツ、くるみ)
③オメガ3(不足注意)
現代人が不足しがちな必須脂肪酸です。
脳や神経・細胞膜の構成成分として重要であり、オメガ6との比率が適切であれば肌の水分量もアップしやすいです。
ただし熱に弱く酸化しやすいという特徴があります。
代表例:α-リノレン酸、EPA、DHA
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)
亜麻仁油、えごま油、チアシード
亜麻仁油、えごま油、チアシードなどの健康オイルの使用はあまりオススメしていません。
・小さじ1杯以上は、脂質過剰の可能性が高まる
・非常に酸化しやすいため、封を切ったら1週間以内に使い切りたい
・熱にも弱いため、炒め物・揚げ物には向かない
缶詰摂取でももちろんOKです。
💡 オメガ6とオメガ3の理想的な比率
オメガ6とオメガ3の理想的な比率は6:1〜4:1とされています。
しかし現代人の食生活では10:1〜20:1に偏りがちです。
このバランスが崩れると体内で炎症が起こりやすくなったります。
もっと身近で言えば、肌荒れ・アレルギー・PMSなどの不調につながることがあります。
しかし、オメガ6とオメガ3の比率を整えることで炎症を起こしにくくなり、肌の水分量アップ・アレルギー反応の緩和など、体調や美容面にも良い変化が期待できます。
理想は1日1回、特に青魚(サバ・サンマ・イワシなど)を取り入れることです。これらは、酸化しにくく安定した形でオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が含まれています。
📝まとめ
脂質はエネルギー源であり、身体を作る上でも欠かせない栄養素です。ただし現代の食生活では、意識しなくても過剰になりやすい特徴があります。
特に問題になりやすいのは、おかず中心の食事や健康意識による油の追加によって、知らないうちに脂質量が増えてしまうことです。
脂質は「減らす」のではなく、量とバランスを整えることが重要です。PFCバランスを基準にしながら、主食を減らさず、様々な食材からバランスよく摂ることで、自然と整いやすくなります。
さらに、油は種類や酸化の影響も大きいため、「何を使うか」だけでなく「どう使うか」まで意識できると、体調やパフォーマンスの安定につながります。
まずは、今の食事が「おかず中心になっていないか」を見直すことから始めてみてください!
