🌼立春 身近な春を探してみませんか?――最強寒波の隙間に見つける、2026年だけの小さな光
2026年の1月末。窓の外を眺めれば、灰色の空と凍てついた景色が広がっています。連日のように「最強寒波」という言葉がニュースを賑わせ、凍てつく風に肩をすくめる毎日が続いています。
札幌では積雪1メートル超えの記録的な雪、能登・北陸を襲う氷点下の朝。私たちは今、まさに「冬の真っ只中」に放り出されています。
しかし、ふとカレンダーに目をやってみてください。そこには「2月4日 立春」の文字が静かに、けれど確かな意志を持って記されています。
「こんなに寒いのに、春なんて本当に来るの?」
「外に出るのも億劫なのに、春を探す余裕なんてないよ」
そんな声が聞こえてきそうです。でも、実は自然界は私たちの想像以上にタフで、そしてせっかちです。暦が春へと切り替わるその瞬間に向けて、雪の下で、氷の向こう側で、そして無機質なビルの谷間で、着々と「始まりの音」を鳴らしています。
まさに「東風解凍(こちこおりをとく)」
立春の初候が示すように、春の東風が吹き始め、厚く張った氷さえも少しずつ緩み始める――そんな季節の変わり目に、私たちは立っているのです。厳しい寒さの分厚いベールの下で、命たちはすでに呼吸を深め、出番を待っています。
今回は、山、海、そして都市部といったそれぞれの景色の中に隠れた「春の招待状」の見つけ方を紹介します。
明日の通勤路や散歩道で、あなたの鼻先をかすめる空気が少しだけ違って感じられるはず。
2026年のこの特別な冬を、ただ「寒かった」だけで終わらせないために。一緒に、立春の足音を探しに行きませんか?

1. 雪の下で「呼吸」を始めた命

見渡す限りの銀世界が広がる2026年の冬。山間部や雪の多い地域にお住まいの方にとっては、春という言葉さえ非現実的に感じられるかもしれません。しかし、そんな過酷な景色のなかで、木々は決して眠っているわけではありません。
もし、近くに大きな樹木があるなら、その「足元」をじっと観察してみてください。幹の周りだけが、まるでドーナツのように円形に雪が溶け、黒々とした土が顔を出していることがあります。
これは「根開き(ねあき)」と呼ばれる現象。木が春を感じて活動を始め、太陽の光で温められた幹の熱によって周りの雪を溶かしているのです。
雪を押し退けるその姿は、困難な状況下でも己の芯を保ち続ける、植物たちの静かなる闘いを感じずにはいられません。
また、雪の下では「蕗の薹(ふきのとう)」が、信じられないほど鮮やかな薄緑色の蕾を少しずつ膨らませています。
立春の次候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」(2月9日頃から)が訪れる頃には、山里で鶯の初音が聞こえ始めるでしょう。まだ雪深い森の中でも、春を告げる鳥たちは確実に目覚めの準備をしているのです。
週末、近所の公園や森で「一番大きな木の根元」を覗いてみてください。そこだけ雪が溶けていたら、それは木が「もうすぐ春だよ」と深呼吸をしている証拠です。
2. 水面が映し出す「光のメッセージ」

水辺は、どこよりも早く「光の変化」を教えてくれます。気温は一年で最も低い時期を迎えていても、ふと水面を見つめたとき「あれ、なんだか眩しいな」と感じることはありませんか?
この現象を、北国ロシアでは「光の春」と呼びます。太陽の高度は着実に上がり、水面に反射する光の粒は、どこか丸みを帯びた黄金色へと変わり始めています。
立春の末候「魚上氷(うおこおりをいずる)」(2月14日頃から)が示すように、春の気配を感じた魚たちが割れた氷の間から姿を現し始める――そんな季節がもうすぐそこまで来ています。
また、この時期の川や池では、ぜひ耳を澄ませてみてください。昼間の日差しで氷が緩み、パキッという音を立てて流れていく「薄氷(うすらい)」の音。それは、冬の沈黙を破る春の第一声です。
まさに「東風解凍」――東から吹く春風が、厚い氷を少しずつ解かしていく音が、水辺では最も早く聞こえてくるのです。
もし通勤路に水辺があるなら、一度だけイヤホンを外して歩いてみてください。氷が緩む音や、帰郷の準備を始めた鳥たちの声が、春の語りかけとして聞こえてくるはずです。
3. コンクリートの隙間に隠れた「色の招待状」

都会の風景の中にも、誰かが意図して用意した「春のサイン」が溢れています。
まず意識していただきたいのが夕方の景色。太陽の角度が変わり、ビルの影が以前より柔らかく、長く伸びるようになっています。
信号待ちの数秒間、スマホから顔を上げ、ビルの隙間から差し込むオレンジ色の光を見つめてみてください。
また、フラワーショップに並ぶミモザの鮮やかな黄色や、どこからともなく漂う梅の香り――「暗香浮動(あんこうふどう)」――は、私たちの閉ざされた心に小さな喜びを運んできてくれます。
都市の中にも、立春は確かに訪れています。街路樹の枝先をよく見れば、固く閉じていた冬芽がほんの少しだけ膨らみ始めています。
公園のベンチに座って空を見上げれば、冬とは違う「青さ」が感じられるかもしれません。それは、東風が運んでくる春の色です。
明日、駅へ向かう道中で「ショーウィンドウ」か「街路樹の先」を一枚だけ写真に撮ってみてください。小さな「色」を見つけたとき、あなたにとっての立春が始まります。
4. 結び:冬が厳しいほど、春の音は高く響く

2026年、私たちは「冬の本当の厳しさ」を知りました。あまりの寒さに、春を信じることが難しかった日もあったかもしれません。
けれど、春は決してある日突然やってくるものではありません。
山で、水辺で、都会のビルの影で。自然は一歩ずつ、着実に「2月4日」に向けて準備を進めてきました。
立春の七十二候が教えてくれるように――東風が氷を解かし、鶯が鳴き、魚が氷の上に現れる――春は静かに、しかし確実に、段階を踏んで私たちのもとへやってきます。
厳しい寒さに耐え忍んだ後に巡ってくる春の喜びは、例年のそれとは比べものにならないほど深いものになるでしょう。
この記事を読み終えたあと、まずは玄関を開けて、一度だけ大きく深呼吸をしてみてください。鼻先を通る冷気の中に、ほんの少しだけ混じった東風の気配を感じられたなら、もう大丈夫。
2026年の立春。
それは、私たちが厳しい冬を共に乗り越えたという、誇らしい勲章のような一日の始まりです。
マフラーを少しだけ緩めて。
あなただけの「身近な春」を見つけに、一歩踏み出してみませんか?(千里ふうた)

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