介護なんて無縁だった私が、初任者研修を修了するまで ~知識ゼロのアラカン男性が見た、介護の世界~
2026年5月、修了証を手に、私は少し放心していました。
それまで「介護」とはまったく縁のない人生でした。目指したのは「介護職員初任者研修」。15日間のスクーリングと修了試験、そして約4か月にわたる学びの果てに、ようやくたどり着いた一枚の紙です。
実技では何度も手が止まり、聞き慣れない専門用語に頭がついていかず、「これ、最後まで続けられるのか」と本気で不安になった夜もありました。それでも投げ出さずに済んだのは、同じ教室で励まし合い、時には黙って助けてくれた仲間たちがいたからです。
この記事では、ごく普通のアラカン男性である私が、知識ゼロの状態から介護の世界に飛び込み、そこで見た景色と学んだことを、体験を交えてお伝えします。
介護資格に興味がある方はもちろん、親の介護が気になり始めた方、何か新しいことに挑戦したい方にも、少しでも参考になればうれしいです。

きっかけは、たまたま目に入った説明会の案内だった

事の始まりは、記事執筆のためのリサーチ中でした。偶然、「介護職員初任者研修」の説明会案内が目に留まりました。
介護の仕事に興味があったわけではありません。いつもならスルーする類の情報です。ただ、ちょうど気分転換したいタイミングだったこともあり、気がつけばなんとなくそのWebページを眺めていました。
案内は「未来ケアカレッジ(株式会社EE21が運営する介護資格スクール)」のもので、調べてみると同業他社も似たような講座を展開しているようでした。
「介護の仕事をしている人は、こういう勉強をして資格を取るのか。大変そうだな……」
そんな軽い気持ちで説明会の日程を確認すると、最寄り校舎の開催日が、ちょうど予定のない一日と重なっていました。講座に申し込む気などまったくなかったのに、気づけば説明会だけ申し込んでいました。
「場違いかもしれないが、後学のために話だけ聞いてみよう」——その程度の軽い気持ちでした。

説明会で知った、介護資格の体系
説明会に足を運んでみると、介護職員が歩む資格のステップが思いのほか明快に整理されていました。
・介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)――介護の基礎知識と基本的な介助技術を学ぶ入り口
・介護福祉士実務者研修(旧ホームヘルパー1級)――介護福祉士の受験資格にもなる重要なステップ
・介護福祉士(国家資格)――介護の専門知識と技能を証明する国家資格
今回の説明会は、この長い道のりの玄関口にあたる「介護職員初任者研修」の案内でした。

迷いながらも、申し込んだ理由
介護職に就く予定はありません。それでも講座の内容は、介護の世界を知るうえで有益だと感じました。ただし、実際に参加するとなると話は別です。
申し込みに迷った理由は、主に次の3つでした。
・全15回、オンラインではなく、すべて通わなければならない
・平日は仕事があるため、土日コースしか選べない
・貴重な休日の一日が、15週連続でつぶれる
数日悩んだ末、私は思い切って申し込みボタンを押しました。親の介護問題からいつまでも目を背けているわけにはいかないし、自分自身の老後を考えても、介護を学んでおくことは決して無駄にはならないはずだ——そう腹をくくったのです。
事務局の方に聞くと「介護職に就く予定がない参加者もおられます」とのこと。その一言に背中を押されるように、覚悟が決まりました。

スクーリング初日。11名の仲間との出会い

初日は、緊張しながら早めに教室へ向かいました。生徒は自分を含め12名(女性8名・男性4名)。年齢層は自分と近い人が多く、少しほっとしたのを覚えています。最年少は現役の女子大生。今どきの若い人はしっかりしているものだと、素直に感心しました。
自己紹介が進むにつれ、参加者は大きく3つのタイプに分かれることが見えてきました。
1.現役の介護職員
2.これから介護職に就こうとしている人
3.その他
1と2が大半で、3のグループは明らかに少数派。「ついていけるのだろうか……」という不安はありましたが、申し込んでしまった以上やるしかありません。この12名で、これから4か月を共にすることになります。

前半は座学。毎回違う先生の“リアルな話”が面白い

第1〜7回は座学が中心です。とはいえ、ただ教科書を読み上げるだけの退屈な時間ではありませんでした。グループワークを交えながら進むので、集中力が途切れる暇がありません。
何より面白かったのは、毎回担当の先生が変わることでした。訪問介護、グループホーム、特養、老健——経歴は実に多彩で、そのほとんどが現場と講師業を兼務しています。だからこそ聞ける、テキストには載っていない「現場のリアル」がいくつもありました。
どの先生も、介護の仕事に確かな誇りを持っているのが伝わってきました。教室には、良い意味での緊張感と真剣な空気がずっと漂っていたように思います。

後半はいよいよ実技編。体で覚える介護技術

第8回からは、いよいよ実技編に突入します。4つのグループに分かれて実習を行いますが、内容は多岐にわたりました。
移動・移乗介助
車椅子操作
食事介助・口腔ケア
排泄介助
入浴介助
更衣介助
ベッドメイキング・体位変換
コミュニケーション技術
受講者同士で「介助する側」と「される側」を交互に体験することで、利用者の不安や心地よさを、頭ではなく身体で理解できます。
先生は手の向き、触れ方、力の入れ方まで、驚くほど細かく指導します。最初は「そこまで気にする必要があるのか」と正直疑問に思っていました。
しかし、自分が実際にされる側に回ってみると、その意味がよくわかりました。ほんの少し手の角度が違うだけで、支えられている安心感がまるで違うのです。

男女の実力差に驚く。男子チームは苦戦の連続
今回、身をもって痛感したのが、女性と男性の実力差でした。普段から家事や育児をこなしている女性陣は手際が良く、飲み込みも早い。一方、男性陣はどうにも要領を得ず、時間ばかりがかかっていきます。
当初は男女混成チームでしたが、途中から先生の判断で、女子2チーム・男子2チームと同性同士でグループを組むことが多くなりました。
女子チームは4名、男子チームは2名。同じ作業を女子は4回、男子は2回こなすことになるので、本来なら男子チームの方が圧倒的に早く終わるはずでした。
ところが現実はまったく逆でした。これだけのハンデがありながら、男子チームは女子チームに追いつくどころか、むしろ待たせてしまう場面がしばしば発生しました。
数字上は圧倒的に有利なはずなのに、なぜかいつも私たちが最後に残っている——その理不尽さに、自分たちの実力不足を自覚せざるを得ませんでした。
男性の先生方には、同性のよしみなのか哀れみなのか、我々男子チームには多少の忖度が感じられました。一方、女性の先生たちの指導は生徒の男女など関係なく厳しい印象でした。
先生が他のグループを見ている隙に、苦手な手順を適当に済ませようとしても、まるで瞬間移動でもしたかのように背後に現れ「違う、そうじゃないでしょう?」と鋭い指摘が飛んできます。
百戦錬磨の先生には、こちらの考えていることなど全てお見通しなのでしょう。しかしそれは、全員をきちんと卒業させるための愛情だと、今ならわかります。本当にありがたいことです。

優しい女子メンバーに救われた

普通に考えれば「ちょっとあんたたち、早くしてよ!」とブーイングが飛んでもおかしくない状況でした。しかし、このクラスの女子メンバーは本当に優しい人たちでした。
小声でこっそりアドバイスをくれる人、離れた場所からジェスチャーでヒントを送ってくれる人、さりげなく手を貸してくれる人——彼女たちの思いやりに、何度も助けられました。不器用な男子チームがどうにか脱落せずに済んだのは、間違いなく彼女たちのおかげです。
講座は淡々と、しかし着実に進み、最終日の修了試験を迎えました。試験の結果は当日はわからないのですが、みなさん、頑張って試験勉強していた様子だったので、きっと全員合格したはず……。

打ち上げで感じた“仲間”という存在

全プログラム終了後、近くの居酒屋で打ち上げが開かれました。年齢差は上から下まで実に40以上…それでも同級生です。年齢も性別も、社会的な肩書きも関係なく、最後はみんな、同じ時間と苦楽を共にした、ただの友達のような関係になっていました。
「最後の日、打ち上げしませんか!」と真っ先に声を上げてくれたのは、クラスのムードメーカー的存在だった女子大生のSさん。彼女の一言がなければ、この打ち上げも実現しなかったかもしれません。Sさんには、心から感謝しています。

エピローグ:実務者研修へ進む決意

打ち上げの席では、「この後、実務者研修に進むかどうか」が自然と話題にのぼりました。介護福祉士を目指す方は「介護福祉士実務者研修」の資格が必須なので、時期を見て受講する人が多いようでした。
一方、もともと介護職に就く予定などなかった私ですが、この4か月を経て、考えは静かに、しかし確実に変わっていました。一年後に迎える定年退職後、新たに介護の仕事をするという方針へと舵を切ったのです。
不器用で要領も悪く、HSP気質の自分に、果たして務まるのだろうか——正直、不安は尽きません。それでも、まずは第一歩として、実務者研修に挑戦することに決めました。
実務者研修の受講者は、現役の施設職員が多いと聞きます。素人の私には、今回以上に場違いかもしれません。それでも、申し込んだ以上はやるしかありません。
この続き、実務者研修での体験も、いずれこのnoteで紹介できればと思っています。(文:千里ふうた)
出典:未来ケアカレッジHP




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