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珈琲の和様化【カフェ浪漫主義33】

【カフェ浪漫主義】
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冬の飲み物も各々好みで色々あろうが、玄冬季の我が夢幻の時間に最もふさわしいのはやはり熱い珈琲だ。

前回にも少し触れたが、残念なのは珈琲には抹茶や紅茶のような様式美が無い事だ。

仕事場でのコーヒーブレイクには様式も細かな作法も要らないだろうが、一日に一度くらいは離俗夢幻の珈琲座を設え、せめて最低限の道具立てや卓飾りの様式くらいはある方が満足度は高く、読書や思索に耽るひと時もより深まる。

ヨーロッパの貴族達も初期の茶器珈琲器は中国の磁器の碗を使っていた。いわゆる取手の無いティーボウルと呼ばれる物だ。

カフェオレボウル
粉彩蓋碗
ティーボウル

やがてティーカップは取手が付いた華麗な色絵磁器になっていくが、これが繊細優美過ぎて珈琲には合わず、平民達は無骨な陶器製で耳付きのカフェオレボウルやマグカップを使うようになった。

ヨーロッパでは用具や礼法など最初から定まった形式はなく、各々の国柄風習との兼合いをも図りながら、徐々に変化しつつ洗練され様式化されて来た訳だ。

写真の奥二つは19世紀フランスのカフェオレボウル、手間二つが20世紀初頭のイギリスのティーボウル、中央が中国清朝時代の蓋碗だ。

アジア諸国でもそれぞれの国で各種の茶式が工夫され、中国の烏龍茶で使う茶器類や近年の台湾で驚くべき発展を遂げた茶芸用の浄土庭園のような茶盆など、まさに一級の芸術品となっている。

近年の中国文化とえいばエンタメ分野の発展も目覚ましい。去年一昨年はアクションRPG『黒神話:悟空』が空前の大ヒットを記録して『西遊記』関連のイベントで連日盛り上がっていた。悟空をテーマにした楽曲のリリース・カバーも多く、中でも実力派イケメン歌手張遠(ジョウ・エン)と中国民謡の女帝龚琳娜(ゴン・リンナ)の共演「悟空傳(天降甘霖)」は圧巻だった。

龚琳娜の歌唱は怪物揃いの中国歌手の中でもなおトップレベルだ。民謡で培われた骨太な発声を維持しながら情感のコントロールが緻密で、鼻腔・口腔共鳴の技術も洗練されている。全ての女性歌手が見習うべき堂々たるパフォーマンスだ。張遠も龚老師に食い下がるようにパワフルかつエッジの効いた歌声を披露している。

巨大な3Dディスプレイと民族楽器にも注目すべきだ。中華ファンタジーや悟空を象徴する映像が楽曲のスケールをさらに拡大させている。また、ヒロイックな「悟空傳」の曲に民族楽器の横笛を活かした「天降甘霖」を組み込むという挑戦的な試みも見事なアレンジで相乗性のある結果になった。

伝統的な陶磁器だけでなく、大衆のエンタメでもこのような創造性を見せつけられると、やはり日本や欧米も及ばない文化大国たるバックグラウンドがあらゆる方面に通底しているのだと感じてしまう。

茶器珈琲器の話題に戻すと我国ではヨーロッパブランドの色絵磁器の人気が高いが、ヨーロッパの色絵磁器は元々中国物のコピーから始まっていて、世界的には断然清朝陶磁器の方が格上だ。

そのような歴史を我が国の珈琲にも当て嵌めれば、今からでもより洗練された和風珈琲の様式美を打ち立てられるだろう。

特に精神美の域まで到達した侘茶や文人茶に習えば、現代人の雑然とカフェインを補給するだけの珈琲など言語道断ではないか。こうなったら例え私一人だろうが「カフェ浪漫主義」の場だけでも、この崇高なる大義に挑むべきだと思う。

楽焼小服茶碗 備前ポット 大正〜昭和初期
小鹿田油壺 昭和前期
古瀬戸小皿 江戸時代

まずは珈琲碗などの用具を改めて試行錯誤しながら選ぶのに、まず材質は持った時に熱過ぎない陶器製が最適だ。

また白磁に色絵プリントのポップな絵柄のマグカップなどは、普段使いならともかく高雅幽陰の珈琲座には向かない。

色絵磁器でも薄手で古風な絵柄なら初夏や秋口の冷珈琲には良いかもしれないが、酷暑時のアイスコーヒーには古色の付いたピューターのゴブレットが最強だ。

ガラス器にはすべからく古格が染み込まないので、残念ながらこれも普段使いまでだろう。

形は春夏は取手付きのカップ、秋冬には掌を温めるボウル型が良い。ボウル型なら筒形や小振りの抹茶碗がベストで、日本に豊富にある古今の優れた品々から選べる。また、少量ずつ飲む人には筒形の湯呑も良いかもしれない。

昭和前期頃の良作が安価で沢山あり、全国の窯場の作をコレクションするのも面白い。

ポットも珈琲に似合うのは陶器製のやや厚手の物が良く、季節ごとに碗との組合わせで数種類揃えるのも楽しい。

いずれも参考にすべきは桃山茶陶の雄渾かつ幽玄なる美意識で、紅茶器の繊細優美な王朝美貴族趣味に対し、珈琲器は豪壮無骨なる武士騎士の文化が似合うのだ。

写真の小服茶碗は直径10cmほどの小ささで、英国式にビスケットをダンキング(コーヒーに浸す)するにも丁度いい大きさだ。

普通の抹茶碗の直径12〜15cmの大きさだと流石にコーヒーには大き過ぎるので、筒茶碗小服茶碗などでもせいぜい直径11cm以内を基準に選ぶと良いだろう。

この和様の珈琲座の話は旧来の茶道ほどでは無いにしろ、とても1回では語り切れないのでまた折を見て何度か続く予定だ。

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