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自己評価と他者評価|「どちらが正しい?」だけでは、ズレの正体は見えない【前編】

先日、以前の職場で一緒だった後輩のAくんから、相談があると呼び出された。

場所はお馴染みのCoCo壱。

私は手仕込みとんかつカレーに、らっきょうとハーフチーズをトッピング。

辛さは1辛。

はちみつがあれば、なお嬉しい(笑)。

そんなカレーを食べながら、Aくんの相談を聞いていた。

「仕事は結構頑張ってるんですけど、あんまり評価されないんですよね」

「自分では結構やってると思うんですけどね。会社は全然分かってくれないんですよ」

自分では頑張った。

結果も出したつもり。

でも、会社から返ってくる評価は思ったより低い。

「いやいや、もっと評価されてもよくない?」

となる。

私はAくんに聞いた。

「ところでさ、会社から何を求められてるの?」

「営業なんで、売上じゃないですか?」

「それ、会社とちゃんと確認してる?」

少し間があった。

「……そう言われると、ちゃんと確認したことはないかもしれないですね」

ここで気になった。

評価が高いか、低いか。
その前に、そもそも何を期待されていたのか。

さらに考えてみると、「評価」という言葉自体もかなり曖昧だ。

自分が自分につける評価。

上司や同僚からの評価。

会社が給与や昇格を決めるための評価。

全部「評価」と呼んでいるけれど、意味は同じではない。

まず、ここを整理してみたい。


① まず、「評価」の意味をそろえる

この記事では、4つの言葉をこう定義する。

  • 自己評価
    自分自身が、自分の仕事・成果・行動を評価すること。

  • 他者評価
    上司・同僚・部下・お客様など、自分以外の人が、自分の仕事・成果・行動を評価すること。

  • 会社評価
    会社が、給与・賞与・昇格・降格・配置などの処遇を決めるために行う評価。

  • 自己肯定感
    自分自身を、価値のある存在だと認識すること。

会社評価も、大きく分ければ他者評価の一つだ。

ただ、この記事では分けて考える。

同僚から、

「仕事が丁寧ですね」

と言われることと、

会社が、

「来期から課長を任せる」

「今回の賞与はこの金額にする」

と決めることは同じではない。

他者評価は、自分以外の人から受ける評価。

会社評価は、その中でも会社が処遇を決めるために行う評価。

そして、自己肯定感は仕事の評価そのものではない。

仕事で良い結果が出たか。

会社から高い評価を受けたか。

それとは別に、自分自身にどんな価値があると認識しているか、という話だ。

だから、

仕事の評価と、自分自身の価値は別の話だ。

Aくんが悩んでいたのは、この中でも、

自己評価と会社評価のズレ

だった。

自分では「できている」と評価している。

でも、会社評価はそれより低い。

では、このズレはなぜ起きるのか。

その前に、もう一つ明確にしておきたいことがある。

② そもそも、何を任されているのか

それが、役割だ。

この記事では役割を、

会社から任された仕事と、その仕事で期待されている成果。

と定義する。

例えば、同じ営業でも期待される成果は違う。

  • 売上をつくる

  • 粗利を確保する

  • 新規顧客を獲得する

  • 既存顧客との取引を継続する

管理職なら、

  • 自分自身の数字をつくる

  • チーム全体の目標を達成する

  • 部下を育成する

などがある。

全部、同じではない。

何を任されているかによって、優先する仕事も、評価するときに見る成果も変わる。

だから会社には、

「何を任せるのか」
「その仕事で、どんな成果を期待するのか」

を明確にする責任がある。

何も伝えていないのに、半年後になって、

「いや、そこを期待していたんだけど」

と言われても、本人は困る。

一方で、本人も、

「自分に何を期待されているのか分からない」

なら確認できる。

「今の私に、一番期待されている成果は何ですか?」

と聞けばいい。

会社が決めるべき役割を、本人が勝手に決める必要はない。

でも、

役割が分からないまま、半年、一年と仕事を続ける必要もない。

会社は、役割と期待する成果を明確にする。

本人は、分からなければ確認する。

会社には会社がやることがある。

本人には本人ができることがある。

私は、そこを分けて考えている。

③ 会社を「船」に例えてみる

この「役割」と「評価」の関係は、会社を一隻の船に例えると分かりやすい。

船には目的地がある。

会社でいえば、会社が達成したい目標だ。

そして、船にはいろいろな役割の人がいる。

船長がいる。

航海士がいる。

舵を取る人もいる。

帆を張る人もいる。

オールを漕ぐ人もいる。

全員が同じ仕事をしているわけではない。

それぞれに任された仕事がある。

会社も同じだ。

営業をする人。

商品を作る人。

採用する人。

経理をする人。

マネジメントする人。

仕事は違う。

でも、それぞれが自分に任された役割を果たすことで、会社は目標に近づいていく。

船の例で整理すると、

  • 目的地=会社の目標

  • 船の中で任された仕事=役割

  • 目的地にどれだけ近づいたか=結果

  • 海や天候=市場・競合・景気などの外部環境

という関係になる。

しかも、海は止まってくれない。

風向きが変わる。

波が変わる。

天候も変わる。

会社なら、競合も、お客様も、技術も、景気も変わる。

船が止まっても、海は止まってくれない。

では、自分がオールを漕ぐ役割だったとする。

毎日、ものすごく頑張って漕いだ。

誰よりも長い時間漕いだ。

本人からすれば、

「これだけ頑張った」

と思う。

それは事実だ。

でも、仕事を評価するときには、もう一つ確認する必要がある。

その結果、船は目的地に近づいたのか。

例えば、必死にオールを漕いでいても、隣の人のオールに何度もぶつかっていたら、船全体では思ったほど進まないかもしれない。

逆もある。

航海士がルートを変えたことで、目的地までの距離が大きく縮まった。

その人が動いた時間は短い。

でも、船全体の結果には大きく貢献している。

仕事も同じだと思う。

どれだけ頑張ったのか。

と、

その仕事によって、会社やチームの成果がどう変わったのか。

これは同じではない。

努力に意味がないと言いたいわけではない。

私自身、営業時代はかなり量をやってきた。

電話もした。

訪問もした。

結果が出なければ、さらに動いた。

だから、努力は大事だと思っている。

ただ、

自分がどれだけ時間を使ったか。

どれだけ大変だったか。

どんな工夫をしたか。

こうしたことは、本人が一番把握しやすい。

一方で、

自分の仕事によってチーム全体の成果がどう変わったのか。

他部署の仕事にどんな影響が出たのか。

会社全体の結果にどうつながったのか。

ここは、本人だけでは把握できないことがある。

努力の量は、本人が把握しやすい。

自分の仕事が組織全体の成果にどうつながったかは、本人だけでは把握できないことがある。

自己評価と会社評価がズレる理由の一つは、ここにある。

では、

「会社評価の方が正しいのか?」

というと、それも違う。

④ 会社にも、見えていない事実がある

会社や上司も、その人の仕事に関するすべての事実を把握しているわけではない。

例えば、

  • 他部署をどれだけフォローしたのか

  • お客様とどんなやり取りをしたのか

  • トラブルを防ぐために何をしたのか

  • 仕事の中でどんな工夫をしたのか

こうした事実を、上司や会社が把握していないこともある。

さらに、人が人を評価する以上、評価する人によって判断も変わる。

例えば、同じ行動を見ても、

「自分から動いていて主体的だ」

と評価する人もいれば、

「周囲に確認せず勝手に進めている」

と評価する人もいる。

同じ人。

同じ行動。

それでも、評価する人によって判断が変わることがある。

自己評価と他者評価について調べていて、面白い研究があった。

360度評価を分析した研究では、評価点のばらつきのうち、評価する人固有の傾向が53〜62%を占めていた。

一方、評価される本人の一般的なパフォーマンスや、評価項目ごとのパフォーマンスに関わる要因は21〜25%だった。

もちろん、

「上司の評価の53〜62%が間違っている」

という意味ではない。

この研究から分かるのは、

評価点には、評価される本人の仕事ぶりだけではなく、評価する人の見方も大きく影響する。

ということだ。

だから、

自己評価は主観だから間違っている。

他者評価は客観だから正しい。

とは言い切れない。

本人と会社では、評価するときに持っている情報が違うからだ。

本人は、

自分がどれだけ努力したのか。

どんな工夫をしたのか。

仕事の途中で何が起きていたのか。

こうした情報を詳しく持っている。

一方で会社は、

本人の仕事がチーム全体の成果にどう影響したのか。

他部署にどんな影響が出たのか。

会社全体の目標に対して、どんな結果につながったのか。

本人からは見えにくい情報を持っていることがある。

もちろん、逆もある。

本人しか知らない事実を、会社が把握していないこともある。

さらに、本人にも会社にも把握できていない事実があるかもしれない。

だから、

自己評価と他者評価がズレたとき、最初に考えるべきなのは「どちらが正しいか」ではない。

自分と会社は、それぞれどの事実を見て評価しているのか。

ここだと思う。

Aくんは最初、

「会社は全然分かってくれないんですよ」

と言っていた。

本当に会社が見落としている事実があるのかもしれない。

逆に、Aくん自身が把握していない結果や、周囲への影響があるのかもしれない。

その時点では、まだ分からない。

分からないから、確認する。

自分は、どの事実を見て「できている」と評価しているのか。

会社は、どの事実を見て、その評価をしているのか。

この二つを並べて、初めてズレの正体が分かる。

私は、自己評価と他者評価が違うこと自体は悪いことではないと思っている。

むしろ、自分だけでは分からなかった事実を知るきっかけになる。

そして、新しい事実が分かれば、次の仕事のやり方を変えられる。

ここまで話したところで、手仕込みとんかつカレーはほぼ食べ終わっていた。

らっきょうとハーフチーズの話から始まったはずなのに、ずいぶん重い話になった(笑)。

でも、Aくんの

「自分では頑張っているのに、会社は評価してくれない」

という話を聞いて、改めて思った。

頑張ったかどうかを考える前に、何を期待されていたのか。

評価が正しいかどうかを考える前に、自分と会社は何を見ているのか。

まず確認したいのは、この二つだ。

では、そこを確認しても自己評価と会社評価がズレていたら、次はどうするのか。

会社は何を評価すればいいのか。

本人は、その評価をどう受け止めればいいのか。

そして、

その問題は、本当に評価制度で解決する問題なのか。

後編では、ここを掘り下げたい。

最後に、もう一度だけ。

今の仕事で、会社から自分に何を期待されているのか。
あなたは、一言で言えますか?

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

簡単に本日の要点をまとめてみました⬇️

「成長の定義」シリーズ

変えられないこと、変えられること。「定数と変数」は立場で変わる

結果が出ない。そのとき、何を変える?|「自責100%」の話


参考文献

Scullen, S. E., Mount, M. K., & Goff, M. (2000).
Understanding the latent structure of job performance ratings.
Journal of Applied Psychology, 85(6), 956–970.

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