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【小説】⚾なろう連載中ラノベのスピンオフ、noteでも投稿してみた(中編)


■ 光人視点② 本編

 高速を走ること約1時間半。ようやく目的地の水族館に到着した。

 車内は完全にふたりきりの世界。俺にとっては夢のような時間だったけど、茉莉子さんにとってはどうだったのだろう。大学生から見れば、高校1年生なんてやっぱり子どもに見えるよな……。

 でも、年の差なんて些細なことだ。俺は今日のデートを全力で楽しむし、茉莉子さんにも心から楽しんでもらいたい。

「あっ、あっちが入り口ね。チケットを買わないと……」
「はい、これ。茉莉子さんの分もあるよ」
「えっ!?……これ、事前に?」
「うん、コンビニで買っておいた」
「わたしの分まで!?……ありがとう。後で代金払うね」

「行きも帰りも運転してもらうんだから、これくらいは出させてよ。うち、薬局やってるから手伝いのお礼にお小遣いちょっと多めにもらってて」
「楽式と硬式を掛け持ちしてる上に、家業の手伝いまで……本当にすごいわね」
「若いうちに色々覚えておいた方が、あとが楽だと思ってさ」
「うっ……身にしみる言葉だわ。わたしも本気で頑張らなきゃ」

「何か目標でもあるんですか?」
「ふふっ、それは……まだ秘密」

 茉莉子さんがいたずらっぽく微笑んだ。

「じゃあ、中に入ろっか」
「うん。わたしも初めての水族館だから楽しみ」
「ここ、“世界の海”がテーマだから、市内の淡水魚水族館とはまた違った面白さがあるよ」

 二人でゆっくりと館内を歩きながら、水槽の生き物たちを観察……しているフリをしながら、俺は横にいる茉莉子さんの横顔をチラチラと盗み見ていた。

 こんなに近い距離にいるのは初めて。手をつなぐべきか否か──というより、そもそも付き合ってすらいないのに手をつなぐのはアリなのか? 頭の中でグルグル考えが巡ってばかりで、答えが出ない。

「イルカって、見てるだけで癒されるよね」
「イルカは超音波を出してるらしくて、一緒に泳ぐと人間の脳波にも影響があるんだって。だから癒されるって話もあるよ」
「へぇ、新藤くんって物知りね」

 あらかじめ調べておいてよかった。ちょっとだけ得意げになりながら、次々と展示を見て回る。
 チンアナゴ、ウミガメ、ペンギン……そしてクラゲブースにたどり着くと、茉莉子さんがスマホを取り出した。

「たまに動画サイトでクラゲの動画を見るんだけど、スマホに撮っておけば、いつでも見られるかなって」
「クラゲって、ゆらゆら漂ってるだけで癒されるしね。ストレス軽減にもいいって聞くよ」
「なにそれ、最高!いろんなクラゲ、撮りまくろっ!」

 そんな彼女の後ろ姿ごと、俺はスマホを構えて動画を撮る。もちろんクラゲメインだけど、ちゃっかり彼女も画角に入れて。……盗撮じゃないよな、これ。

 そうこうしているうちに、館内をひと通り回り終えたころには13時を過ぎていた。

「そろそろお昼にしようか。この水族館、当日なら再入場できるから、お土産も後で見られるし」
「そうね。近くに気になってる味噌かつ屋さんがあるんだけど、行ってもいい?」
「もちろん!俺、味噌かつ大好きなんだ」
「味噌かつに赤だし。この組み合わせが最高なの!」
「それ、めっちゃわかる!」

 俺たちは一度水族館を出て、歩いて味噌かつ屋へ向かった。サラリーマンたちのランチタイムも終わったタイミングで、すんなり席に座ることができた。

「ちょうどいいタイミングだったね」
「うん。あまり待たなくて済んでよかった」

 ランチ定食を注文して、俺たちは味噌かつと味噌唐揚げを堪能する。

「味噌かつのタレ、濃厚で美味しい~。味噌唐揚げは初めて食べるけど、これも美味しい!」
「俺も初めてだけど、クセになるなぁ。……大に頼んだら作ってくれたりするかな」
「茉莉子さんって、毎週楽式の練習に来てくれるけど、大学の付き合いとか大丈夫なんですか?」
「楽式野球部が大好きだからね。大学では週一のスイーツ巡りサークルに入ってるだけ。他は特に活動してないの」

「スイーツ巡りサークル!?めっちゃ楽しそう!俺も甘いの好きですよ」
「商店街でいうと、赤星くんちのクリームソーダのアイス、あれ卵黄のコクがすごい好きで。和佳ちゃんの家の二層チーズケーキもマジで最高!」
「あ~わかる。あと、大の焼肉屋で出るパンナコッタ。あれ、焼肉屋のデザートとは思えないクオリティだよね」
「えっ、それ知らなかった!今度絶対食べに行く!!」

 “今度一緒に行きませんか?”──と口にしかけて、思わず言葉を飲み込む。

 商店街の中じゃ、知り合いに会う確率は高すぎる。まだ俺の片思いなのに、変な噂でも立ったら茉莉子さんに迷惑がかかる。

「ねぇ、この後もう一度水族館に戻るでしょ?そのあと、デニッシュソフト食べに行かない?」
「いいね。あの店のチョコケーキ、俺も好きなんだ」
「やった!じゃあ決まりね!」

 水族館を見終わって解散──じゃなかったのが、なぜか嬉しい。


前編と後編は ↓ のリンクから行けます


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