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【小説】⚾なろう連載中ラノベのスピンオフ、noteでも投稿してみた(前編)

他の小説投稿サイトで連載しているラノベのスピンオフ的な短編を書いたので、こちらでも公開してみようと思います。(場違いラノベ第一弾作品)

実はこの物語、5年以上前から少しずつ構想を練ってきたものなんです。まだほとんど知られていない作品ではありますが、この前初めてコメントをいただけて、すごく嬉しかったんです。

たったひとりでも、「あ、面白いかも」と思ってくれる人がいたら――
そんな想いで、ここにもそっと置いておきます。

このスピンオフ、野球の話じゃないんかいっていう突っ込みは無しでお願いしますね⚾



■ あらすじ

高校にはちょっと変わった野球部がある。
その名も――「楽式(がくしき)野球部」。

週末限定の活動、男女混合、掛け持ちOK。
だけど野球への情熱は、誰にも負けない。
毎日練習できない事情がある人も、他の部活を優先したい人も、ただ野球が好きなだけの人も、みんなが自分らしくいられる場所。

これは、そんな“楽しい野球”を追いかける高校生たちの物語。
ちょっぴり変わった野球部で、仲間と過ごすかけがえのない日々。
本気で楽しむって、案外むずかしい。でも、だからこそ面白い。


■ 光人視点① 本編

「そんなに話すことはないんだけどなぁ」

 俺の名前は新藤光人(しんどうあきと)。翠嶺学園高等部の2年生で、硬式野球部と楽式野球部の両方に所属している、ごく普通の高校生だ。実家は商店街で薬局を営んでいて、俺は一人っ子。いずれはその薬局を継ぐことになっている。

 今はというと、野球部の後輩・福冨颯真の家で昼飯をご馳走になりながら、彼女との馴れ初めを根掘り葉掘り聞かれている真っ最中だ。

「俺の周りって、大と七海しかカップルがいないから、どっちから告白したのかとか、どんなデートしてるのかとか、めっちゃ気になるんすよ」
「たしかに、大と七海は参考にならないもんな」
「だろ?」

 あの二人は保育園時代から付き合っているという伝説のカップルで、すでに空気のような存在。初々しさもなければ、からかう隙もない。侑利と颯真の興味津々な視線が痛いほど伝わってくる。

 ──まあ、飯もご馳走になったし、こいつらが外で言いふらすタイプじゃないのは知ってるし……いいか。

 そういえば、3人ともまだ彼女いないんだよな。侑利は片思い歴が長そうだけど。

 俺は記憶を辿りながら、茉莉子との出会いを語り始めた。

「茉莉子さんと初めて会ったのは、楽式野球部に入った時。ボールを投げる時のフォームがやたら綺麗で、自然と目がいったんだ」
「顔とかじゃなくてフォーム?言われてみれば、コーチの動きってブレないっすね」
「真面目に練習してきた証拠だと思ったんだ。足腰がしっかりしてるから、投げるボールも正確にミットに収まる」
「女性に“足腰がしっかりしてる”って表現はどうかと思うが、同意だ」

 あのフォームを見てから、自然と茉莉子さんに目がいくようになった。

「話すきっかけが欲しいと思ってた時、偶然うちの薬局に買い物に来て。練習の時はすっぴんしか見たことなかったから、化粧してる姿を見て本能的に『誰にも取られたくない』って思って、気づいたら『俺とデートしてください!』って言ってた」
「その勢い、すごいっす。で、コーチはOKしてくれたんすか?」
「めっちゃ驚かれたけど、その場ではOKはもらえなかった。代わりにConeaでフレンド登録してくれて、自己紹介のメッセージ送ったら、夜遅くにちゃんと返事が来てさ」
「そこでも真面目さ発揮ですね(笑)」

 嬉しすぎてスクショ撮ったのは、もちろん秘密だ。

「部活中は特定の誰かと仲良くしすぎるのは控えてるから、挨拶やグループで話すくらいだった。でもConeaでは毎回丁寧に返してくれて、やりとりの中で彼氏いないこととかも分かってきて、何度か『デートしてください』って送ってたら……ある日突然『いいよ』って」
「先輩、めっちゃ青春してる!」
「高校生活は3年しかないからな。やりたいことは全部やるべきだろ」
「確かに……」
「後悔だけはしたくない。手が届きそうなものは、全部掴みにいく」
「その想いが先輩の自信に繋がってるんですね」
「俺は、自分が想い続けたものは全部叶うって本気で信じているからな」

 自分がモテる自覚はあったけど、本気で誰かを好きになったのは初めてだった。そのせいか、デートのシミュレーションは驚くほど難しかった。

◇◇◇◇

 「いいよ」の返事をもらってから、行き先を決めるまで毎日が作戦会議だった。夏休み中の俺は久々の休日を利用して、隣県の水族館を選んだ。地元だと知り合いに会うリスクが高すぎる。
 ネットで予算や初デートのマナーを調べまくり、少しでも大人に見えるように服装と髪型にも全力を注いだ。

 初めて買った夏用ジャケットに、細身のチノパン、ローファー。普段のジャージ姿とは雲泥の差。

 最寄り駅から2駅離れた場所で待ち合わせ。知り合いとの遭遇率を下げるための細かい配慮だ。

「さすがに30分前は早すぎたか……」

 興奮して目覚ましより早く起きて、朝練も済ませた。でも走っても走っても、心臓の鼓動は収まらなかった。

 喫茶店でも探そうと移動を始めたその時――

「おはよう。もういるからビックリしちゃった」
「あっ、おはようございます」

 茉莉子さんは、ふわりとしたブラウスにワイドパンツ、軽めのメイクに下ろした髪。普段と違う雰囲気に、俺の幸せゲージは限界突破した。

「年下の俺が言うのもなんですが、今日、すごくかわいいです」
「あまり年上に見えないように頑張っちゃった♪」

 練習中には見せない、ちょっとあざとい笑顔。……やばい、マジでかわいい。

「少しかかとの高い靴を履いてきたけど、新藤くん背が高いから問題ないわね」
「身長、いくつですか?」
「165cm。この靴で170cmくらいかな?」

 女性にしては高めだけど、俺は178cm。ちょうどいいバランスだった。

「新藤くんも、今日の服装すごく気合い入れたでしょ?」
「あ、バレました?普段はTシャツにジーンズかジャージです」
「うん、まさにそのイメージ(笑)」

 茉莉子さんが笑う。その笑顔だけで、シャツが汗で濡れそうだ。

「じゃあ、水族館行こうか。こっちよ」
「えっ?改札はあっちですよ?」
「駅の駐車場に車を停めてあるの。運転、怖かったら言ってね」
「免許あるんですね」
「大学入ってすぐ取ったの。車はおじいちゃんと共同だけど、至れり尽くせりの性能よ」

 助手席のドアを開けてくれる茉莉子さん。中は柑橘系の香りがふわりと漂っていた。

「隣県までちょっと距離あるし、電車よりドライブの方が気楽かなって」

 俺と話す時間を作ってくれたのだと思うと、胸がいっぱいになる。

「楽式と硬式、掛け持ちって大変じゃない?」
「いや、それぞれに面白さがあるから苦じゃないよ」
「そうそう、二人きりの時はタメ口で話して。その方が嬉しい」
「うん、そうする」

 楽式野球部のコーチと選手の関係じゃなくて、今はただの『俺と茉莉子さん』。距離が一気に縮まった気がして、嬉しかった。

「硬式、2回戦負けだったね。残念。でも1年でレギュラーって、新藤くんだけだったよね?本当、すごい」
「野球だけは、誰にも負けたくないから」
「うん、真っ直ぐだね。でも、たまにはこういう息抜きも大事だよ」
「……息抜きになってないけどね(笑)」

 正直、試合の時より緊張してる。



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