【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 21 天に刺さったスカイタワー 1000字
[HL:昨今のビルはバベルみがあるよね]
アイリスを出れば急に木枯らしが吹き、思わず体が縮こまる。そうして見上げた空はなんだか曇っていた。ぱっとしない天気。スカイタワーが薄ぼんやりと広がる雲に囲まれ突き出てるみたいにみえて、なんだか十字架みたいだ。それはそれできっと、今日という日にはおあつらえ向きで。
公園通りの入口とスカイタワーの間には大きな幹線道路が横たわるだけで、改めて薄青と灰色のまざった空に浮き彫りになったその白い塔の巨大さは、まるで灰色の天に手を届かせようとするように少々不謹慎。
そうして何にも遮られることはなく私はFM神津のオープンスタジオにたどり着き、ノルゲンで購入した少々の差し入れをバックヤードに置いて更衣室で用意した服に着替える。
それは真っ赤なワンピース。何で買ったのか最早忘れてしまったけれど、日用に使う勇気はとてもなく、ずっとクロゼットの奥に記憶と一緒にしまい込んでいたやつだ。今回奏汰さんにサンタなんて言わなければ一生着なかったかも。クリーニングのビニールを剥がして身に着けて鏡の前に立てばどこか滑稽な気分に陥ったけれど、そもそも今日は普段と違うクリスマス。
「よし、やるか」
オフホワイトのコートを羽織ってサンタ帽を頭にかぶせ、グリーンの関係者タグを腕につければ結局私もクリスマスカラーの仲間入り。結局ね。
「おはようございます!」
「お、夜道ちゃんお疲れ様」
スタジオ前ではたくさんのスタッフが慌ただしく行き来し、巨大なモミの木はそれはもう大層にキラキラと飾り付けられていた。
「私は何をすればいいですか」
「えっと、そうだな、夜道ちゃんはオーナメントの配布をお願い」
「オーナメント?」
「そう、子供たち向けにオーナメントを配って、ツツジに飾り付けてもらうのさ」
見渡せば、葉の落ちてすこし寂しいツツジの並木に子供たちが群がり、金や赤の飾りをつけていた。なんだかお正月のおみくじの結び所みたいだ。
「スタジオ脇のテントに追加のオーナメントを置いてあるから、もっていって」
「はーいわかりました!」
そうしてスタジオ前を通りかかる時、何かが気にかかる。今番のパーソナリティと目があって手を振り返し、そうして気が付いた違和感は、スノードームに雪がほとんどなかったこと。
あれ? 前は雪で埋まってなかった? 変だな。埋もれていたスカイタワーが、今はちゃんと見えている。まるで知らない間に、街の中でクリスマスが少しずつ始まっていたみたいに。
……けれど今はお仕事しなくっちゃ。
「夜道です! 配布のオーナメントを受け取りに来ました!」
「お、お疲れ様。えーと、これをお願い」
渡されたB4サイズの段ボール箱は、見た目より軽かった。
to be Continued
神津と辻切は同じ市内なので、天気はかぶせるついででネタをかぶせました。オーナメントの間に挟まってて難しい。
★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#十字架
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
なみさんち用の話の表紙がだんだんできてきました。

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これはどこというのでもないけど、神津北のホテルヘイリのバーのイメージかもしれない。
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