会社に提案してメニューになった焼酎「金魚酎」
WEB担当なのにメニュー開発?
屋久島で働いていた頃の話です。
ある日、マネージャーから突然こんなことを言われました。
「何か面白いメニュー考えてみてよ」
えっ!??
私はWEB制作やECサイトの運営が仕事です。
ホームページを更新したり、通販サイトの商品ページを作ったりするのが本来の業務。
それなのに、なぜか飲食店のメニューまで考えることになりました。
会社ではホテルやカフェも運営していたので、部署の垣根を越えていろいろな仕事に関わることがありました。
とはいえ、料理人でもバーテンダーでもありません。
何を提案しようか考えていた時に思い出したのが「金魚酎」でした。
グラスの中を泳ぐ金魚
金魚酎の作り方はとても簡単です。
まず透明なグラスの底に大葉を1、2枚入れます。

ただ、そのまま入れるのではありません。
大葉を手のひらに乗せて、
「パンッ」
と軽く叩いてから入れます。
こうすると大葉の香りが立ちやすくなるのです。
その上から氷をたっぷり入れ、赤唐辛子を1本。
最後に焼酎を注げば完成です。

グラスの中では、大葉が水草、赤唐辛子が金魚のように見えます。
その姿から「金魚酎」と呼ばれています。
金魚鉢に見せるためのこだわり
さらに、ひとつだけこだわったことがありました。
それはグラスです。
普通のストレートグラスではなく、少し丸みのあるグラスを使いました。
理由は単純です。
その方が金魚鉢に見えるから。

透明な丸いグラスの中に氷を入れ、大葉を沈める。
そこへ赤唐辛子を浮かべると、本当に小さな金魚が泳いでいるように見えます。
味だけを考えるなら、どんなグラスでも問題ありません。
でも金魚酎は見た目を楽しむ飲み物です。
だからこそ、グラス選びも大切でした。
実はお店向きのメニューだった
この金魚酎には、会社にとって都合の良い点がいくつもありました。
大葉は会社の敷地内のあちこちに生えていて、必要な時に摘んで使えます。

焼酎もホテルで提供しているものがあります。
会社の社長が「三岳」の芋焼酎が好きで会社のキッチンには常に用意してありました。
他に新しく用意する必要があるのは唐辛子くらい。
材料費はほとんどかかりません。
さらに良かったのは、誰でも作れることでした。
メニューを考えるのは簡単ですが、実際にホテルで提供するとなると話は別です。
作る人によって味や見た目が変わってしまうと続きません。
その点、金魚酎は大葉を叩いて、氷と赤唐辛子を入れ、焼酎を注ぐだけ。
特別な技術も必要ありません。
見た目にインパクトがあり、コストも安く、誰でも作れる。
お店のメニューとしては理想的だったのかもしれません。
試しにマネージャーへ提案してみると、
「これ面白いね」
と気に入ってもらえました。
そして金魚酎は実際にメニューとして採用されることになったのです。
特に外国人のお客様に人気だった
金魚酎は日本人のお客様にも好評でしたが、特に外国人の宿泊客に人気でした。
注文されたお客様は、まずグラスを眺めます。
そして写真を撮る。
それから飲む。
そんな方が多かったように思います。
実際のところ、味はそれほど変わったものではありません。
大葉の香りがほんのり移る程度で、基本的には焼酎のロックです。
唐辛子が入っていますが辛くなるわけでもありません。
この飲み物は味を楽しむというより、見た目を楽しむための一杯なのです。
金魚を飼ったことはありませんか?
子供の頃、一度くらいは金魚を飼ったことがありませんか。
縁日ですくった金魚。

ホームセンターで買ってもらった金魚。
玄関先や居間に置かれた小さな金魚鉢。
水草の間をゆっくり泳ぐ赤い金魚。
金魚酎を見ていると、そんな昔の記憶がよみがえります。
だから外国人のお客様だけでなく、日本人のお客様にも親しまれたのかもしれません。
どこか懐かしさを感じる一杯でした。
サイダーで作るともっと面白い
金魚酎を提供しているうちに、あることに気づきました。
別に焼酎である必要はないのです。
お酒を飲めない方や子供たちでも、サイダーや炭酸飲料を使えば同じように楽しめます。
丸いグラスの中に大葉を入れ、赤唐辛子を浮かべる。
そこへサイダーを注ぐだけ。

すると細かな気泡が次々と上がってきます。
それがまるで水槽のブクブクのように見えるのです。
自分で試してみて、
「こっちの方が本当に金魚鉢みたいだな」
と思いました。
炭酸の泡が水槽の空気のように見え、情景がより豊かになります。
小さな金魚鉢を作る楽しさ
ホームページを作ったり、ECサイトを運営したりするのが私の仕事です。
まさか自分が提案した焼酎がお店のメニューになるとは思っていませんでした。
でも今振り返ると、金魚酎が採用された理由はよく分かる気がします。
見た目にインパクトがある。
材料費がほとんどかからない。
誰でも作れる。
そして何より、楽しい。
金魚酎は焼酎の飲み方のひとつですが、実際には「小さな金魚鉢を作って楽しむ遊び」に近いのかもしれません。
今でも大葉と赤唐辛子を見るたびに、屋久島で過ごした日々と、グラスの中を泳ぐ小さな金魚を思い出します。
涼や風情を楽しむ1杯そんなお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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