屋久島で再現した祖母のびっくり鉄火丼~カツオが隠れた思い出の丼~
祖母は6人兄妹の母親でした。
その末っ子が私の母です。
なぜか私は特に可愛がられていて、夏休みや冬休み、春休みになると祖母の家へ預けられていました。
従兄弟たちと遊ぶのも楽しみでしたが、もう一つの楽しみが祖母の作るご飯でした。
その中でも私が一番好きだったのが、「びっくり鉄火丼」です。
高知出身の祖母とカツオ
祖母は高知の出身でした。高知県最南西部の「沖ノ島」という離島です。
そのため、祖母が大阪に引っ越してからも時々親戚や知り合いからカツオが届くことがありました。
届いたカツオを前にすると、祖母は台所に立ちます。
カツオを捌いて、庭に一斗缶を置いて藁を入れ、網を置いて捌いたカツオを藁の炎で焙ります。そのあと準備したボウルに氷水を入れて、カツオを冷やします(身を締めると言っていました)
今思えば、カツオのたたきです。一般的なたたきの調理法ですが、本場高知では、氷水で冷やさずに、まな板の上で塩を振って、カツオの切り身をバンバン叩くことがあるそうです。諸説ありますが「たたき」という料理の語源の一つです。
子どもの頃の私は料理のことなど分かりませんでしたが、台所に広がるあの香ばしい匂いだけは今でも覚えています。
炙ったカツオは切り分けられ、醤油ベースのタレに漬け込まれました。
そして出来上がるのが、祖母特製のびっくり鉄火丼です。
「えっ、2切れだけ?」
食卓に運ばれてきた丼を見て、私は少しがっかりしました。
丼の上にのっているカツオはたった2切れ。

子どもだった私は、
「えっ、2切れだけ?」
と思ったのです。刺身大好きだったのでがっかりしました、、、
ところが食べ始めると様子が変わります。
ご飯の中から現れたカツオ
ご飯の中から、またカツオの漬けが出てくるのです。
さらにもう1切れ。
さらにもう1切れ。

結局、ご飯の中には4切れほどのカツオが隠されていました。
まるで宝探しでした。
次はどこから出てくるんだろう。
そんなことを考えながら夢中で食べていた記憶があります。
だから祖母は、この丼を「びっくり鉄火丼」と呼んでいたのかもしれません。
屋久島で思い出した味
屋久島で暮らしていた頃、時々祖母の料理を思い出すことがありました。
離島での暮らしは便利とは言えません。
それでも、自分で料理をしていると昔の記憶がよみがえります。
ある日、宿泊客に提供したカツオのたたきを見た時に思い出したのが、このびっくり鉄火丼でした。
上に見えるのは2切れだけ。
でも中にはもっと入っている。
子どもを驚かせようと考えた祖母の遊び心だったのかもしれません。
今では祖母に理由を聞くことはできませんが、あの時のワクワクした気持ちは今でもはっきり覚えています。
思い出も一緒に味わう丼
料理には味だけではなく、思い出も残ります。

祖母のびっくり鉄火丼は、私にとってまさにそんな料理です。
カツオのたたきの香り。
ご飯の中から現れるカツオ。
従兄弟たちと囲んだ食卓。
どれも大切な思い出です。
※藁で焼かないとたたきの味は半減しますが、、、家庭では大変なのでガスでもいいですし。スーパーに売ってる「たたき」を買っても作れます。
屋久島で再現してみて、改めて祖母の料理の温かさを感じました。

今でもカツオを見ると、あの「カツオのびっくり鉄火丼」を思い出します。


特に屋久島の名産ではないですが、会社でこの器で賄いを食べている時に外国の宿泊客の方に「そのボウルいいね」と言われました。
柄の名前や意味を聞かれました。
「錦牡丹」ですよと教えました。
英語での説明は難しいのでネット検索して記事を英訳して見せました。
屋久島でも売っているのか?と問われ。「見たことがない」と伝えました。
Amazonで注文できることを伝えると喜んでくれました。
錦牡丹(にしきぼたん)とは
錦牡丹は、豪華な「錦」の文様と、百花の王と呼ばれる「牡丹」を組み合わせた伝統的な和柄です。牡丹には「富貴」「繁栄」「幸福」といった意味があり、古くから縁起の良い花として親しまれてきました。
華やかな色彩と美しい絵柄から、お祝いの席や来客用の器にもよく使われます。祖母のびっくり鉄火丼を盛り付けたこの丼も、どこか特別なごちそうに見えたのは、錦牡丹の持つ華やかさのおかげだったのかもしれません。
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